第三話 冒険者認定試験 その1
現在時刻は朝方……イルマは冒険者ギルド内にある試験会場の指定された席にて、試験開始の時刻を待っていた……
「ちょっと緊張してきたな……まずは筆記試験か」
イルマは会場内の部屋を軽く見渡す……そこには十数人の試験希望者達がいた……
「(あたし以外にも結構受ける人いるんだぁ……)」
イルマがそんなことを考えていると、また一人……今回の試験希望者が入ってきた……その人物はイルマぐらいの年で、長い銀髪に黄金色の瞳をした美しい少女だった……
「あっ!?」
イルマは想像もしなかった人物の登場に驚いている――
「えっ!?」
それはむこう側もだった――驚いた顔をしてイルマの方を見ている……
「(何で、あの子が――)」
そう、セラだ!この都市に来てニ日目……東地区で出会った銀髪の少女セラだ。
「「…………」」
思いもよらぬ再会に、二人は……お互いの顔を見つめ合いながら硬直していた……だが、そんな時!一人の人物が会場内に入ってきた――
「皆さん、おはようございます!」
今回の試験官のようだ……その登場と同時にセラは、そそくさと自身の席に座った。
「私は今回、皆さんがこれから受ける冒険者認定試験の試験官を務める――ニーナ・ツェルゲンと申します」
そう話し始めたのは四十代くらいの女性だ……
「今回の試験は午前が筆記試験……午後からが実技の試験となります。……では、これから筆記試験の用紙を配ります」
試験官が試験の用紙を順に配っていく……
「試験開始時刻となるまでは、用紙に手を触れないでください」
試験官がそう言い…………そして、試験開始の時刻が来る――
「では――始めてください!!」
ついに試験が始まった……イルマは手元にある裏側にされた用紙を表側にして問題を見る……予想通り、内容はそこまで難易度の高いものではなかった……イルマは次々と問題を解いていく……
……………
………
それから、しばらくして……
「――そこまでッ!!これにて、筆記試験を終了します!」
試験官がそう言って、試験の問題用紙を次々と回収していく……
中には時間内に終わらず落ち込む者や……時間内に全て終わって次の実技試験のことについて考える者、さまざまだ。
ちなみにイルマは後者だった……
「(余裕だったね。思った以上に簡単だった……)」
イルマは余裕の表情で次の実技試験のことを考えていた……
「では皆さん……お疲れ様でした。次は休憩を挟んで午後からが実技の試験となります――」
そう言って試験官は部屋を後にした……
「……しょっと――」
イルマも立ち上がろうとする――だが、その前に銀髪の少女セラが声を掛けてきた――
「あなたも冒険者志望だったんだね……ここに入ったらいたから、驚いたよ……」
「あっ!……あたしも、だよ!」
「ねぇ、次の実技試験まで時間あるし……ちょっと話さない?」
「う、うん……」
イルマは応じると、セラと二人で部屋を出た……
……………
………
二人は冒険者ギルドの建物周辺を歩いている……
「へぇ〜そんな遠くから……」
「うん、大変だったよ」
イルマはセラに、ここメルトアまでの旅路について話していた……
「カレド地方か……そりゃ遠いね、でも……メラド村なんて聞いたことないや」
「まぁ……ど田舎だからね」
笑みを浮かべてイルマはそう言い、セラに質問をした。
「セラってやっぱり……貴族かなんかなの?」
「ん?……そうよ。私は伯爵家の令嬢……メレス伯爵家っていって……ここより南に位置するアルセデス王国に属する貴族よ」
イルマの予想通りセラは貴族令嬢だった……
「(伯爵家のご令嬢か……すごいなぁ〜でも、なんでそんな人が冒険者に?)」
イルマは不思議に思っていた……初めて会った時もそうだけど、セラは何者かと戦っていた……セラは誰と戦っていたんだろ?あの人達はなんだったんだろう?
「ねぇセラ……セラはどうして冒険者になろうと思ったの?それに……初めて会った時に戦っていた人達は、一体誰だったの?」
イルマはセラに問う。
「それは――」
セラが何か言おうとした――その時ッ!
チャイムが鳴った――冒険者ギルドの方からだ。
「あっ!午後からの実技試験、開始前の合図だ!早く行かなきゃっ――」
「そう、ね……」
二人は駆け足で実技試験のある会場に向かうのだった。
……………
………
時刻は昼過ぎ、実技の試験が始まろうとしていた……
「では皆さん、これから実技の試験を始めます!」
そう話すのは、先程の筆記試験で試験官を務めた、ニーナという女性だ。
「試験の内容はシンプルです。冒険者になれば魔物の討伐や要人の護衛など様々な依頼を受けることになります……故に、今回の試験は貴方達一人一人の力を見せてもらいます!」
ニーナがそう言うと、ぞろぞろと会場内に人が入ってきた――
「貴方達にはこれから、こちらの現冒険者の方々と模擬戦をしてもらいます。模擬戦の順番は、午前の筆記試験で座った席の番号順とします――」
「――ではっ!これより実技試験を開始します!皆さんの実力、しかと拝見させていただきます!」
こうして、実技の試験が始まるのだった……
……………
………
試験希望者達が次々と現冒険者と模擬戦をしていく……
だが、結果は予想通り……皆一様に現冒険者に尽く打ち負かされていった……模擬戦が始まるが否や試験希望者達は現冒険者の力に圧倒されてゆく……しかし、そんな状況が変わった。
とある模擬戦で今までとは全く逆のことがおきたのだ……見れば今まで圧倒的だった現冒険者の一人が氷漬けになって身動きが取れなくなっている。
「私の勝ちね」
そう言葉を溢すのは銀髪の少女セラだ。セラは模擬戦が始まるや否や、相手を瞬時に魔術で氷漬けにしたのだ。
「「!?」」
目の前で起きた出来事にその場にいる者達が皆、唖然としている……
「今のは……」
「詠唱してなかったぞ!」
「無詠唱魔術か?」
だが、それだけでは終わらなかった……今度は別の模擬戦で、目を疑うような出来事が起こったのだ……
対戦する両者はお互いに剣士だ、一人は二十代後半ほどの男で、もう一人はまだ十代半ばの赤髪の少女だ……
試合開始の合図が始まるが否や、赤髪の少女が物凄い脚力で地を蹴って前方にいる男めがけて急加速し――男の握っている剣を目にも止まらぬ速さの剣撃で、会場内の後方の壁に叩きつけたのだッ!
男は今しがた起きた出来事に対して理解が及ばず、その場で硬直している……そんな男に対して――
「まだやるの?」
男の目前に立つ赤髪の少女が自身の握っている剣を男に突きつけ、そう問う。
少女がそう言うと男は即座に首を振り、自身の敗北を認めた。
「なんだ……今のは?」
「何も見えなかったぞ!」
「何者なんだ……あの子は……」
模擬戦を見ていた者達は皆、驚いた反応をしている……だが、そんな時!会場内の壁際から一人の女性が声を発する――
「やるな、お嬢ちゃん!」
そう言うと女性は、赤髪の少女の方に向かって歩いてくる……
「貴方は?」
「私は、ミラ――ミラ・エイツベルクだ!」
そう名乗るのは、冒険者風の装いに茶色の髪を後ろで束ねた茶色の瞳の二十代半ばほどの凛々しい女性だ……
「お嬢ちゃんのお名前は?」
ミラと名乗る女性が赤髪の少女に名を尋ねる……
「あたしは、イルマ――イルマ・ツアーと申します!」
「そうか、イルマか……先の剣撃だが実に良かったよ……その年であの域に至っているなんてね」
ミラはイルマの目前まで歩いて来るとそこで止まり、何かを思いついたように軽い笑みを浮かべながらイルマにある提案をする……
「で、なんだが……お嬢ちゃん!いや、イルマ!あたしと模擬戦をしないか?」
「!?」
「先の模擬戦での君の動きを見て私も、一人の剣士としてぜひ君と一度手合わせをしてみたくなった」
ミラがイルマに対してそう提案する……が、その直後に今回の模擬戦を担当する試験官が――
「ミラさん困りますっ!これは試験です……急にそんな勝手は――」
「いいじゃない、後で私からギルマスには言っとくからさ」
「し、しかし……」
「いいから、いいから」
ミラが試験官を上手く追いやると、イルマに再度尋ねる……
「どうだ……イルマ、私と模擬戦をしないか?」
「ミラさんと、あたしが……(でも、この人多分……物凄く強いよ、あたしの勘だけど……)」
イルマは感じていた……目前に立つミラと名乗る女性が相当なレベルの剣の使い手なんだろうと。
「……よしっ!」
イルマはほっと胸を撫で下ろし……意を決して、ミラに告げた。
「是非、あたしと手合わせをお願いします!」
「了解した……では、始めようか――」
こうして……イルマにとって、本日二度目の模擬戦が幕を開けるのであった。




