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第二十四話 声を追って……


「大丈夫かしら……あの人達……」


「ああ、もう日も完全に落ちてしもうとる……夜の海は危険じゃぞ」


「あのお嬢ちゃん達、Bランクの冒険者らしいけど……見るからにかなり若そうだったし……心配だわ〜、本当に大丈夫かしら……?」


イルマとセラの二人と、それに同行した船長と漁師の男の帰りを町の人達が待っている……皆かなり心配している様子だ。


「なぁ村長?あの子ら大丈夫かなぁ〜……もうすっかり日も落ちちまったぜ……いくら高位の冒険者でも相手はあの海竜だ。もしかしたら……もう……」


一人の若い男性がこの町の村長である年老いた男に声を掛ける。


「………………」


しかし、村長は声を掛けてきた若い男性に一切返事をせず……ただ、海の方をじっと見つめているのだった……


「…………村長?あ、あの……話聞いてます?…………村長……」


村長は、ただじっと海の方を見つめている……………………すると!?


「え、何……あれ……?何かがこっちに向かってきてるっ!」


一人の町の住人が声を発する。


「何だあれは!?氷……か」


「なんか凄い速さで氷のようなものがこっちに向かってきてるっ!」


「村長っ!あれは!?」


皆が海の方に個々が手に持っている光源を向け、突然の出来事に驚いた反応をしている。


「おぉっ!?」


「何だこれ!?……道……か?」


海の方から向かってきたその氷は、町の人達が集まる海岸沿いの港に直撃し……簡単には落ちないようにしっかりと固定されていく。見た感じそれは、氷で出来た道……と言ったところだ。


「こ、これはいったい……」


「…………!?……おいっ!見ろよあれ、何かこっちに向かってくるぞ!」


氷で出来た道の先を町の人達が見ていると、暗くてよくは見えないが何かがこちらに向かって来ている。


「…………あれは、何だ?赤い……何かが」


こちらに向かって近づいてくるその何かは、見た感じ人のようだが……全身を真っ赤に染めている。体中を濃い赤色で包んでいて、まるで血のようだ。


「何だあの赤いのはっ!?」


「あれは魔物か?人……ではないよな……」


「おーいっ!!みんなぁぁぁぁぁぁーっ!!!」


「「!?」」


こちらに向かって近づいて来ている赤い何かが声を発した……そして。


「あ、あれは!?一緒に着いてった漁師のっ!!」


「か、帰ってきたんだっ!!」


「皆っ!!帰ってきたぞぉぉぉぉぉぉぉーっ!!!!」


海竜退治に向かった四人が無事に帰ってくるのを待っていた町の人達が歓声を上げる。


「み、皆ぁ〜……はぁ、はぁ、はぁ…………」


氷の道を走ってこちら向かって来ていた漁師の男は、無事に町の人達が集まっている海岸沿いの港に着くと、その場に倒れこけてしまった。


「お、おいっ!大丈夫か?」


「無事で良かった……いや、無事なのか……それ、血……だよな、多分」


「い、医者だっ!すぐに医者を……」


「だ、大丈夫だ……皆、俺は大丈夫……これは俺の血じゃない……ただの返り血だから」


「……返り血?……そ、そうか……だ、大丈夫ならいんだ……大丈夫なら」


町の人達が無事に帰って来た漁師の男を気にかけ、心配している。


「…………そ、そういえば……他の人達は、冒険者の方々と一緒に同行した船長は?」


「冒険者のお二方は無事だ、船長は……」


漁師の男は船長の事を何か言おうとして、急に俯き黙ってしまう。


「おいっ!?まだ誰か来るぞっ!」


町の住人が氷で出来た道の先を指差す……


「やっと……着いた、わね……」


「さすがのあたしもちょっと疲れちゃったよ……」


氷の道の先から二人の人物が歩いてくる……赤髪の少女と銀髪の少女、イルマとセラの二人である。


「おぉっ!!冒険者殿、よくぞご無事でっ!」


「ええ」


「あぁ……疲れたぁ……」


イルマとセラの二人は、無事に氷の道を通って町の海岸沿いにある港に着いた。


「して冒険者殿、例の海竜は?」


町の住人の一人が少し緊張混じりにセラに尋ねた……すると。


「イルマ」


「うん」


セラとイルマは何やら自身のマジックバックを漁り出して……


「海竜ならこの通り……無事にやっつけたわっ!」


「これが戦利品の角です!」


イルマとセラはマジックバックから取り出した海竜の角を見せながら、討伐報告をする。


「おぉぉぉーッ!!さすがは高位の冒険者殿、あの海竜を倒すとわっ!」


「ありがとうございますっ!冒険者殿!」


「お嬢ちゃん達、ありがとう!」


「これでまた漁を無事に再開できるわねっ!」


町の住人達が二人に海竜討伐への感謝を伝えている……


「冒険者殿、今回の海竜討伐へのご助力……この町の代表者として感謝する、町の危機を救っていただきありがとうございます!」


この町の村長も頭を少し下げながら、二人に感謝を述べる。


「そんなに畏まって頂かなくてもいいですよ、私達は冒険者として当たり前の事をしただけですから」


「そうですか……では、微力ながら今回の騒動解決の感謝として御礼金を支払わせて頂きます。後日、準備ができ次第お渡しします」


「分かりました」


「…………冒険者殿、一つお尋ねしたい事があるのですが……」


「何でしょう?」


「一緒に同行したもう一人は?」


村長は何かを察しながらもセラに尋ねる。


「死んだわ」


「…………そうですか、教えて頂きありがとうございます」


「いえ」


村長は少し表情に影を落としながらも、セラに頭を下げる。


「冒険者殿、本来ならばこのような大恩を受けた身……村を上げて相応のもてなしをしたいところなのですが、今回の一件被害が被害です……」


村長はそう言い辺りを見渡す……海竜が討伐された事への喜びはあるが、それ以上に今回の騒動で犠牲となった者達への思いが溢れて、その場は悲嘆と喪失感に包まれていた。


「(まあ、そうよね……私達があの竜をやっつけても殺された人達は帰ってこないものね)」


セラは辺りを流し見ている……


「私達の事はお気になさらず……先程も言ったように当たり前の事をやっただけですので」


「そうですか…………では、私はこれにて……これからやるべき事が山積みですので」


そう言って一礼し、村長はその場を後にする……


「ひとまずこれで、一件落着って感じかしら……ねっ?イルマ…………イルマ?」


セラがイルマに声を掛ける……だが、聞こえていないのかイルマはぼーっと海の方を見ている。


「ねぇイルマ、聞いてる?」


「え!?あぁ、何の話?」


「もうっ!……まあいいわ、早く宿に帰りましょうよ。私、疲れちゃった……」


「…………」


「…………ん?どうかしたの、さっきから海の方ばかり見てるけど……」


「何か……ずっと見られてる感じがする……」


「見られてる?それって海の方から?」


「うん。でも、何だろ……この感じ、すごく懐かしいような……嫌な感じじゃない、でも……何だか不思議な感じ、海から目が離せないの……」


イルマは海を見ている……その表情はまるで、遠い日に別れた自身にとってかけがえのない人の姿をぼんやりと思い浮かべ、かつてあった暖かさをふと思い返すような……


「イルマ……」


セラはそんなイルマを不思議そうな顔をして見ている。


「あっ!?ごめんね……じゃ、じゃあ宿に帰ろっか?」


「え、えぇ……そうね。帰りましょう」


こうして二人は、無事に海竜討伐を終えて宿へと帰宅するのであった。


…………………


……………


「つ、冷たいっ!」


「そう?あたしは丁度いいくらいだと思うけど」


現在時刻は午前十時を過ぎた頃……二人は一夜明け、町の端……白い砂が辺り一帯に広がっている砂浜のある海岸に来ていた。


「ねぇセラ、早く海に入ろうよっ!」


「そ、そうね」


「あたし、海に来た事なかったから泳ぐの楽しみだったんだよねっ!」


二人は海水浴をするためにここへ来る前に買っていた水着に着替えていた。イルマは白色の水着を着ていて、胸元にはひらひらとしたフリルが付いている……俗に言うフレアビキニというやつだ。これを着れば胸元にボリュームが出てバストを大きく見せることができるといった効果があるので、かなり人気の高い水着だ。


「ね、ねぇイルマ……ちょっとエロ過ぎじゃない?それ……」


「そうかな〜」


「ナンパでもされたら……(まあ、その時は私が処理すればいいか……もちろん物理的な意味で)」


セラは黒色のホルタータイプの水着に、綺麗な花柄のロングスカートを履いている……水着の胸元は開いていて、セラを見た人は恐らく無意識にそこへ視線が行くのだろう。シンプルにエロいッ!というやつだ。


「(セラも結構エッチなの着てると思うけど……)」


イルマはセラを流し見ながら、そんな事を考えているのだった。


「(海かぁ〜、海水ってちょっと汚いイメージがあるのよね……プールならまだいいんだけど)」


セラは海に入るため、花柄のロングスカートを脱ぐ……


「セラ、早く早くーっ!」


「あっ!?ちょ、ちょっとぉ!?」


イルマはセラの手を引いて海の中へと駆けて行く……


「海って凄いよねぇ〜っ!だってこれ全部水なんだよ!」


「まあ、水は水でも塩水だけどね……」


二人はある程度の深さがある地点まで行くと、ゴーグルを着けて軽く泳ぎ始めた。


「ねぇセラ、どっちが泳ぐの早いか競走しようよっ!」


「え、競走?」


「じゃ、よーい……ドンッ!だよっ!」


「ちょ、ちょい待てぃっ!?」


イルマが急に泳ぎだしたので、セラは後を追う……


「はぁ、はぁ……(ちょっと速過ぎでしょっ!?もお見えないんだよけどっ!?)」


イルマは勢いよく沖の方に泳いで行って、セラの視界から姿を消してしまう。


「イルマ、どこまで行ったのかしら……」


セラは追いつくのは現実的ではないと思い、泳ぐのをやめて辺りを見渡しイルマの姿を探す……


「…………イルマ、どこいったのかしら…………!?」


直後ッ!誰かが背後から突然現れ、セラに抱きついた。


「きゃっ!?」


「つっかまーえたぁーっ!」


イルマだ、潜水してセラに近づき背後から現れ抱きついたのだ。


「ちょっとぉ〜!ビックリしたじゃないっ!」


「へへへっ!」


イルマはセラに抱きつき、楽しそうに笑っている。


「もぉ〜っ!(ふふ、海も悪くないわね)」


セラもくすりと笑っていて、楽しそうだ。


「ねぇセラ、良いもの取ってきたげる」


「良いもの?」


そう言うとイルマは潜水し、海の中に潜って行く。


「何取ってくるのかしら……?」


セラが海面をぼんやりと見ていると……


「取ってきたよっ!はい、これあげる!」


イルマはセラにある物を渡す……


「これって……」


貝殻だ。それも綺麗な部類の物で装飾品などにも扱われるような物だ。


「綺麗ね、ありがと」


セラは貝殻を見ながら微笑んでいる……


「大事にするわね」


「うんっ!」


……………


………


時刻は少し経って昼を過ぎた頃……イルマとセラの二人は、砂浜のある海岸に設置されているベンチに腰掛けくつろいでいた。


「いい汗かいたねぇー」


「ええ。私、汗かくの嫌いだけど……これは悪くないわね」


二人は昨日も行ったカフェでアイスティーをまた買い、海を眺めながら飲んでいた。


「冷たくて美味しぃ〜やっぱりこれはいつ食べても……」


イルマは他の店で冷えた生のトマトも買っていて、美味しそうにもぐもぐと食べている。


「それ……美味しいの?」


「めっちゃ美味いよぉー」


「ふーん。生の野菜とか丸齧りした事ないからちょっと興味あるかも」


「食べる?」


「……そうね、頂こうかしら」


イルマはセラに買っていた冷やしたトマトの一つを渡す。


「…………あらっ!美味しいわ、案外いけるわね」


「でしょーっ!生野菜って結構美味しいよ、トマトは採れたて冷やして丸齧りっ!これ一択だよ!」


イルマは嬉しそうにそんな事を言っている。


「ふふ(イルマといると楽しいわ。これが友達ってやつなのね)」


セラも美味しそうに冷やしたトマトを食べている。


「ねぇイルマ、私……」


セラが何か言おとしたその時っ!


「え!?」


イルマが急に立ち上がって、辺りをキョロキョロと見回しはじめた……


「どうしたの?」


セラも突然のイルマの行動に驚いている様子だ。


「…………聞こえた」


「え?」


「今のは……」


「…………私はここにいるよ」


「!?」


やはり声が聞こえるッ!イルマは辺り一帯を見渡しながら声の出所を探している。


「何が聞こえたの?」


「え?セラ、今の声聞こえなかったの?」


「声?いえ、何も」


「あたし、耳は良い方だから幻聴ってことはないと思うんだけど……」


「……こっち……来て、こっちへ来て……」


「やっぱり聞こえる!?幻聴なんかじゃないよっ!?」


「え?私は何も聞こえないけど……どうゆうこと?」


「(セラには何故か聞こえてないみたい……何であたしだけに……)」


イルマは難しい顔をして考え込んでいる……すると!


「早く来て、私は貴方達がここへ来るのをずっと待っていたの……だから、早く……私はここにいるから」


「あっちだっ!あっちにいるんだね、行かないと!」


そう言うとイルマは突然走りだした……


「え!?ちょ、ちょっと!?何が起きてるの……」


セラも慌てて立ち上がり、イルマの後を追う。


「(声の主が誰かは分からない……けど、どこにいるかは分かったよっ!)」


イルマは走る……辺り一面に広がっている砂浜を走り続ける。人の賑わう町とは逆、砂浜と左右に海と森林しかない道をただ進む。


「ここって……」


不意にその道の終わりが見え、イルマは立ち止まった。そこには……洞窟らしき洞穴があった。かなり寂れていて、誰も行き来していないのが分かる。


「この先だ、声の主がいるのは……」


イルマはまた走りだして、その洞窟の中へと入って行く。


「はぁ、はぁ、はぁ……イルマ、足速すぎ……」


セラが遅れて洞窟の前まで来る。


「多分ここよね、他に行けるような場所なんてないし……」


セラもイルマの後を追って、その洞窟へと入って行く。


「誰だか分からないけど……待ってて、今行くから」


こうしてイルマは謎の声の主を追って洞窟へと入って行き、セラもその後を追って洞窟内に入る……だが、この時の二人はまだ知らない……この声の主との出会いが二人のこれからの人生を大きく左右するということを。


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