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第二十二話 海竜退治 その1


「結構人が集まってるね……」


「ええ、事態は深刻なようね」


イルマとセラの二人は、漁師の男の案内で港にたどり着くとそこには……大勢の人が集まっており、おそらく家族を失ったのだろう。泣き崩れる者や突然の事態に理解が及ばず慌てふためく者……その場は重苦しい雰囲気に包まれていた。


「こっちだ、着いてきてくれ」


漁師の男は二人をある場所に案内する……そこには、何人か人が集まっていてなにやら険しい表情で話をしている。


「船長っ!ちょっといいか?」


漁師の男はその集まっている者の一人、歳はかなりいっているが筋肉質でそれなりの貫禄のある一人の老人に話かける。


「何じゃ?わしは今……」


「冒険者の方々を連れてきた」


「「!?」」


船長と呼ばれる老人を含めたその場にいる者達の目がイルマとセラの二人に向く。


「話し合いの途中で悪いんだが、このお二方に今回起こった出来事を詳しく話してほしいんだ」


「冒険者?……おぉっ!これはこれは、ありがたいっ!実は今、わしらが普段漁を行っておる場所に海竜が出てな……ヤツは急に現れてはわしらを片っ端から襲い出して……なんとかわしや一部の者達は逃げ仰たが、今日漁に出ておったほとんどの者達は船をヤツに沈められた後に恐らく……」


船長と呼ばれる老人が話している……


「それで今わしらは、ヤツに襲われた者達の救出などについて話し合っておったところじゃったんじゃ」


「なるほど(救出ねぇ、全員もう死んでるでしょうけど)」


セラは頷き、現在の状況を理解する。


「それでなんじゃが、お嬢ちゃん……いや、お嬢さん方っ!随分と若そうに見えるが今の冒険者ランクはいくつなのかの?こんな事を会ってそうそう聞くのは失礼かもしれんが何しろ相手はあの海竜じゃ。ヤツはかなり強力な魔物で危険なのじゃよ」


船長が二人に質問する。


「私達は二人ともBランクです。海竜程度の魔物の討伐など容易ですよ」


「え?セラ……」


「おぉ〜っ!!なんと、Bランクっ!それほどの実力を持つ方々だったとは……」


「いえ、それほどでも」


船長は二人の予想外の冒険者ランクに驚き、セラは自身ありげに答えている。


「ちょ、ちょっとセラ……なに言って……」


「いいからいいから、私に任せて」


セラは上手くイルマを言いくるめた。


「ではお二方に海竜の討伐をお願いしたいのですが、よろしいですかな?」


「ええ、もちろん」


「では早速……」


「ちょっといいですかな」


船長が何か言おうとしたその時、その場にいた一人の人物が声を発する。


「先程Bランクの冒険者だと仰られましたが……私は別に疑っているわけではないのですが、一応念のため冒険者のライセンスカードを見せて頂いてもよろしいですかな?」


そう言うのは、船長同様に年老いてはいるが強い気迫と風貌がある一人の老人だ。


「貴方は……?」


「村長っ!お二方に失礼ですぞ!わしらを助けて下さろうとしている方々だというのに」


「村長?」


「これは失礼。私はこの町で村長をしている者です。今回の一件、事が事なのでね。我々もかなり張り詰めておるのですよ」


「そうですか」


「で、ライセンスカードを見せて頂けますか?冒険者の方なら持っておられると思うのですが」


「…………(まずい、どうしよ?)」


「セラ……」


イルマは動揺しながら小声でセラの名を呼ぶ。


「どうしたのですかな?早く見せて頂きたいのですが……」


「ちっ!(しょうがない!)」


瞬間っ!セラはなにやら意を決した表情で指先を自身の頭上、空の方に向けて……


「…………ッ!」


指先から一発の雷線を放った。


「「!?」」


セラの突然の行動に村長を含めたその場にいる全員が驚き唖然としている。


「い、今のは……無詠唱魔術!?」


「マジかいっ!」


「こりゃすごいっ!初めて見たわい!」


「次はイルマよっ!」


「えっ!」


セラはそう言うとイルマに耳打ちで……


「さっきの私みたく空に斬撃を飛ばして……」


「え……う、うん。分かった」


そう返事をしてイルマは自身の剣を鞘から引き抜き……


「…………ッ!」


空に向けて剣を振るって斬撃を放つ。


「い、今なにを飛ばした!?」


「今のは斬撃っ!」


「この娘も相当っ!」


その場にいる者達がセラの時と同様に驚き、斬撃が飛んでいった空を見ている。


「ライセンスカードだけど、忘れたのよ。宿にね……」


「あ、あたしも……あたしったらうっかりしてたよぉ〜」


「…………」


セラとイルマは力技でなんとか乗り切ろうとして……村長は二人の予想外の行動に驚いたのか、顔を歪めて……


「はぁー、分かりました。先ほどの無礼をお許しください。どうか我が町の危機をお救いください、冒険者どの」


「任せてください!」


「は、はい!」


二人は笑顔で返事をする。


「じゃあ、そうと決まれば船を出さんとなっ!わしのを出そう、もちろんわしも行くぞ!」


「せ、船長っ!じゃあ俺も……」


「お前は残れっ!わしがおれば十分じゃ!」


「いや、俺も行くぜっ!行かせてくれ、頼む!」


「し、しかし……」


漁師の男に懇願されて、船長は難しい顔をしているが……


「……分かった……言い出すと聞かんからな……」


「よしっ!そうと決まれば行こう!まだ生きてるやつがいるかもしれない、急ごうっ!」


「では、お嬢さん方……着いてきてくれ。わしの船はこっちじゃ……」


船長はそう言って自身の船のある方へ足早に向かい、その後を漁師の男が続く……


「なんとかなったわね」


「うん。それじゃあ、あたし達も行こう」


イルマとセラもその後を追う……


……………


………


「後もう少しで被害に遭った場所じゃっ!海竜の相手、頼みますぞ!お嬢さん方っ!」


「ええ」


「任せてくださいっ!」


少ししてイルマとセラの二人は、この船の船長と乗組員の一人である漁師の男と共に、海竜に襲われた場所を目指して船で進んでいた。


「それにしても速いねぇーっ!この船」


「恐らくだけど、船の原動力になんらかの魔法か錬金術の道具を使ってるんじゃないかしら?」


「ああ、その通りだぜ!この船の原動力にはとある錬金術で作った道具を使用してる。ほんと、錬金術師様々だぜっ!」


「錬金術って便利だねぇ〜」


「そうね、魔法とはまた別の凄さがあるわ」


「確か、魔法の家も錬金術で作ったんだよね?」


「ええ。まあ、あれはかなり特別な物だけどね」


「錬金術かぁ〜、メルトアにもあるのかな?錬金術で作った物を置いてるお店とか」


「私は行ったことないけど、多分あるんじゃない?メルトア……あの都市なら何でもあるわよ」


「そっかぁー」


「気になるなら今度一緒に行ってみる?」


「うん!行ってみたい!(色んなのがあるんだろうなぁー)」


イルマは期待を胸に膨らませながら、これから自身が体験するであろう事を考えて笑みを浮かべ、楽しそうにしている。


「お嬢さん方!もう着くぜっ!」


漁師の男がそう言うと、二人は船が向かう先を見る……そこには、幾つもの船の残骸らしき物が散らばり、海に漂っていた。


「皆……」


「やはり、遅かったかのう……」


船長と漁師の男は暗い顔をして、その光景を眺めている。


「…………(生存者はいないみたいね)」


セラもその光景を眺めていると……


「セラッ!」


イルマが急にセラを勢いよく横抱きにして船の床を蹴り、空高くに跳んだ。


「え!?イルマ、どうしたの!?」


その直後ッ!二人が乗っていた船が真っ二つに割れた。


「嘘!?」


セラは破壊された船を見ている……すると微かに巨大な鉤爪のようなものが見えて……


「セラ、お願いッ!」


「ええ、分かってるわっ!」


セラは瞬時に氷の魔法を海に向けて放って足場を作り、二人はそこに着地した。


「まだ浅いッ!」


着地と同時にセラが魔法で作った足場に手を置き、さらに魔法を発動させる。


「だいぶ厚くしたわっ!これで足元は安全よ!」


「うん。これだけ広かったら十分戦える!」


セラは魔法で戦闘が問題なく行える程度の広さの氷の足場を海に作り、さらに底を厚くして下からの攻撃を無力化した。


「あの二人は無事かな?」


「さぁ?どうでもいいわ」


イルマは破壊された船の残骸を見ながら、一緒に船でここまで来た船長と漁師の男を気にかける。


「(どこからくるか分からない、イルマは分かるのかしら?)」


「セラ、中央に行こう」


「そうね」


二人は魔法で作った氷の足場の中央に行き、セラは手を掲げてイルマは剣を構え、二人は背中を合わせて臨戦体制に入っている。


「助け……」


氷の足場の端に音がし、二人が攻撃体制に入るっ!だがそこには……


「助けてくれっ!」


「はぁ、はぁ、はぁ……」


「よかった!生きてた……」


「あら、生きてたの」


船長と漁師の男だ。二人とも目立った怪我はなく、どうやら直撃は避けたようだ。


「ちっ!(船が破壊されたから帰りが大変ね!いや、今はそんなこと考えている場合じゃないか)」


「どこから……!?」


瞬間ッ!イルマはセラを瞬時に抱き上げて地を蹴って、左方に跳ぶ。


「イルマ!?」


その直後ッ!何かが物凄い速度で海から飛び出て、二人目掛けて突っ込んでくる。二人はなんとか回避して態勢を立て直し、氷の足場の端でこちらを凝視してくるその何かを見る。


「あれが……海竜」


イルマの目先には、全身を青い鱗で包んだ四本足の巨大な竜がいた……体の至る所に背鰭が付いていて足の爪はかなり鋭く尾は長く、両の目はギロギロとしていて今にもこちらに向かって、飛びかかってきそうな緊迫感を与えるような様だ。


「なんか……カッコいいね……あの竜」


「なに言ってるのよ!アイツ今、私達を殺して食ってやるっ!そんな感じよ」


二人は構えて海竜の次の行動に備えている……だが、海竜は追撃して来ずに海の中へと消えていった。


「あれ?」


「なるほどね……(アイツ、かなり頭のいいやつかもしれないわね)」


「あれっ?逃げてったのか?」


「違うと思うがの」


船長と漁師の男が水面を眺めていると……


「あぐぅっ!」


船長が水面から突然現れた尾のような何かに勢いよく弾かれて、海に落ちた。


「船長っ!」


漁師の男が助けようと海に入ろうとして……


「船ーー」


直後ッ!船長は水面から現れた海竜に噛み砕かれて、大量の血を体中から吹き出しながら海竜と共に海の中へと消えていった。


「あ、あぁ…………船長ォォォォォォォォォォォォォォーッ!!!!」


漁師の男が叫ぶ……船長が落ちた場所には赤い血が漂い、手の一部が浮いていた……恐らく噛み砕かれた時にちぎれたのだろう。


「船長さん……」


「あらら、死んじゃった」


イルマは少しだけ表情を暗くし、セラはどうでもいいといった感じだ。


「それにしてもあの竜、なんだか厄介そうね」


「うん。海の中だからかな、かなり近づいて来ないとあたしでもどこにいるかよく分かんないよ」


「そう……(面倒ね、どうしようかしら?)」


「セラ、来るっ!でも、どこからかまだよく……」


「分かったわ」


二人は構えて海竜の次なる攻撃に備える……


「全く、疲れるわね」


「次は斬るよっ!」


こうして、イルマとセラの二人と海竜の死闘が今始まる……


……………


………


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