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第十八話 港町エレイム


「お二人さん、見えてきましたよっ!」


「おぉーっ!!あれが、エレイムっ!」


「……ようやく着いたわね」


現在時刻は夜の八時を過ぎた頃、三人は目的地である港町エレイムに到着しようとしていた。


……………


………


「ん〜、疲れたぁ〜」


「あたしも〜、もうお腹ぺこぺこだよぉ〜」


一行は無事にエレイムに着いたので荷馬車から降りる。セラは伸びをしていて、どうやら疲れている様子だ。イルマは空腹なようで、腹に手を当てて少しうな垂れている。


「お二方、私をここまで護衛してくださって本当にありがとうございますっ!」


「ええ」


「はい。それよりっ!早くなんか食べに行こうよーっ!あたし今、すっごくお腹空いちゃっててっ!」


商人の女性のお礼の返事にセラは素っ気ない反応で答えて、イルマは余り耳に入っていない様子だ。


「…………(よかったぁ〜っ!!見た感じ、もう怒ってはいないみたいねっ!はぁー、後で殺されるかと思ったよー……ご機嫌直してくれてほんとによかったぁ〜)」


商人の女性は胸に手を当て安堵していて、どうやらセラがもう怒っていないようだったので安心しているようだ。


「では、これをどうぞ!今回の報酬金ですっ!」


「あれ?ギルドからじゃなくて、お姉さんからなの?」


「はい。今回は依頼達成時に私から渡す事になっています」


「護衛依頼は大抵こんな感じよ」


「はぇー、そうなんだぁ」


「ではッ!私はこれでっ!」


商人の女性はセラに今回の報酬金を渡し終えると、足早に町の方へと行ってしまった。


「じゃあ、報酬金をわけましょっか」


「うんうんっ!このお金で美味しい物食べよう!」


そう言ってセラは今回の報酬金二十万メルクのうちの半分、十万メルクをイルマに手渡した。


「おぉーっ!!これだけあれば……(当分は宿代の心配はなさそうだね!)」


イルマは一気に大金を手にしてかなりご機嫌な様子だ。


「じゃあ、私達も町に入りましょっか!」


「うんっ!早くご飯にしよう!」


商人の女性から依頼の報酬金を受け取った二人は、いよいよ町へと入るのだった……


……………


………


「ここがエレイム……港町」


「この時間でも結構賑わってるのね」


港町エレイム……交易と水産業で栄える町で、交易では主に商業都市メルトアやアルセデス王国からの物品が並んでおり、水産業ではこの町が海に面している事もあって新鮮な魚を鮮度が保たれた状態で入手することが出来るので、この街で振舞われる海鮮食材を使用した料理は周辺地域でもかなり有名なもので、金持ちや貴族が直接食べに来る程である。


「魔法の家があるけど……せっかくだから今日はこの町の宿に泊まりましょっか」


「だね!でもその前にどこかでご飯にしようっ!」


「そうねぇ、私もお腹すいちゃったわ」


二人は町の飲食店が立ち並ぶ通りに向けて歩き出す……


「セラってこの町に来たことあるの?」


「いいえ、初めてよ。でも、ここエレイムは海鮮料理が美味しいことで有名だから名前くらいは知ってたわ」


「へぇ〜やっぱり海の食材を使用した料理が多かったりするんだ」


「まあね。というより、海鮮料理を振る舞うお店しか多分無いわよ」


「なるほど……?」


町の通りを歩いているとイルマはある事に気がつく。先程から町の人達がなにやら私達の方を見ているのだ……


「どうしたの?イルマ」


「ねぇセラ、なんか私達……すっごく見られてない?」


「ん?そう?……いや、確かに見られてるわね」


セラが辺りを見渡すと、やはり町の人達が自分達を見ているのだ……


「なんなの?あいつら……人のことをジロジロ見てきて、気持ち悪い奴等ね」


「なんなんだろうねぇー」


二人が気になっていると、町の人達が何やらボソボソと喋っていた……


「どうしたんだあの娘は!?全身血塗れだぞ!」


「あれだけ血を流してるならかなりの重症だぞっ!早く医者を呼んだほうが……」


「隣の娘は見た感じ、貴族のご令嬢かなにかじゃないかな?」


町の人達はイルマを見ている……なぜなら全身が血で汚れているからだ。この町に来るまでの道中に盗賊達と戦闘になった時、イルマは盗賊達の返り血を大量に浴びていた。そのせいで町の中ではかなり目立っているのだ。


「まあ、敵意があるわけじゃなさそうだし……放置でいいでしょ」


「そう……だね。見た感じただの民間人みたいだし」


少し気になりながらも二人は進む……


……………


………


「おぉーっ!!いっぱいあるねぇ〜っ!」


「どの店も結構人が多そうね……(はぁ〜、イルマと二人で静かに食べたかったんだけど……)」


「ねぇセラっ!どこにする?」


「私はどこでもいいわよ、イルマに任せるわ」


二人は飲食店が立ち並ぶ通りを歩き、どの店舗に入るか悩んでいる。


「ん〜(どっかいいとこないかな〜)」


イルマが道行く先にある店舗を眺めながらどこに入るか迷っている。


「なんかいいとこ……おっ!ねぇセラ!こことかどう?」


「んー?」


イルマはとある飲食店の前で足を止め、セラに尋ねた。


「えーっと、ここは……海の守り神……?何か、ここ……変わった店舗名ね。それに何だか……店もだいぶ古臭い感じね。(かなり年期の入った老店舗だわ、ここ)」


セラは店を流し見ている。


「ここにしようよっ!ちょっと古臭いって感じが良くない?」


「まあ、私はどこでもいいけど……」


「よしっ!じゃあ入ろっか」


二人は店の入り口を開けて中に入る。


「おおっ!中の感じも結構いいねっ!」


「確かに。この感じ、お父様が好きそうだわ」


二人は店の中をキョロキョロと見ている……すると!


「おぉっ!いらっしゃいっ!お客さん、じゃあこちらに……!?」


店の奥から中年の男性店員が出てきて挨拶をし、二人を席に案内しようと喋り出すが、何故か急に黙って驚いた顔をする。


「お、おいっ!ちょっと……その怪我、お嬢ちゃん大丈夫なのかい?」


中年の店員が盗賊達の返り血で体中が汚れているイルマに尋ねた。


「あたし怪我なんかしてないですよ。これ全部返り血です!」


「そうそう、だから何も問題は無いわ」


「いやぁ〜しかし……なあ、お嬢ちゃん達……悪いんだけど店の中で食べてもらうのはちょっと難しいね」


「え!?何でですか?」


「いやぁ〜隣のお嬢ちゃんは問題ないんだけど、お嬢ちゃんはちょっと……今の身なりのままここで食事をされるのは、おじさんちょっと困っちゃうなぁ〜」


今のイルマの身なりは誰から見ても結構くるものがある……顔と手に付いた血はここにくるまでの間に拭いていたが、服などは着替えてないので普通の人が見れば赤い髪も相まってかなりの恐怖心に駆られる外見をしている。


「えぇ〜っ!そんなぁ〜(あたしとしたことが……着替えればよかった……)」


「どうしても入れてくれないの?」


「悪いなぁーお嬢ちゃん達、こればっかりは他のお客さんの目もあるからよぉ」


「そう……(はぁー、しょうがないわね。この手はあまり使いたくはなかったんだけど……)」


セラは服に付いているポケットの中から何かを取り出し、それを中年の男性店員に見せつける。


「私は栄誉あるアルセデス王国に属する貴族、メレス伯爵家の一人娘にして次期メレス伯爵家が当主っ!セラ・メレスであるッ!!」


「…………ッ!?」


セラはポケットから出したメレス家の徽章を中年の男性店員に見せつけている……


「あ、あんた……いえ、貴方はっ!あのアルセデス貴族の方なのですか!?」


「あのさぁ……あんた、私に二度も同じ事を言わせるつもりかしら?」


「い、いえっ!そんな事は……」


「速く席に案内してちょうだい、私は優しいからいいけど……隣にいる我が騎士イルマは気が短いわ……早くしないと、イルマが行動を開始するわっ!その意味、分かるわよね?」


セラがそう諭すと男性店員はイルマの方を恐る恐る見る……


「はぇっ!?え、えと……あの……」


「ひぃっ!?こ、こちらですぅぅぅぅぅーッ!!!」


「あ…………」


男性店員はイルマと目が合うや否や瞬時に後方へと走り去って行ってしまった。


「よしっ!これで何とかここで食事ができそうね」


「セ、セラ……」


「ふふふっ!今のは私のとっておきの手の一つよ!まさかここで使う事になるとはね」


「…………(セラって何かあったらいつもこんな事してるのかなぁ)」


イルマは少し難しい顔をしながらセラの方を見ている。


「それに、さっきの護衛騎士って……」


「あれは単なる脅しよ。ああ言えばビビると思ってねっ!」


「いやぁ……でも……」


「そんなことより、早く行くわよっ!あの店員が席を案内してくれてるんだから」


「う、うん……!?」


「ふふっ!」


セラは楽しそうに笑いながらイルマの手を引いて、案内された店の席へと向かうのだった。


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