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第十七話 地雷


「なんだか汚れちゃったよーっ!」


「そうね、早くシャワーしたほうがいいわ。私もちょっと汗かいちゃったし……」


イルマとセラは無事に盗賊集団、獣の牙を壊滅させ……桃色髪の商人の女性のいる荷馬車へと歩いて向かおうとしていた……


「とっ!その前に――」


セラは歩き出そうとして何かを思い出し、後ろを振り返る――


「コイツらも片付けとこ、報復されんの面倒いし」


セラはイルマが手足を切り飛ばして地に這わせている盗賊達に手を向け――魔術を唱えた。


「「…………ッ!?」」


セラは風の魔術で小規模のトルネードを発生させた――地を這う盗賊達は一箇所に集まっていき――手や足を落とされて身動きが取れず抵抗できない盗賊達は、突然の出来事に慌てふためき喚いていた。


「ふふ、これでまとめて始末できるわッ!」


盗賊達は一箇所にどんどん集まっていく――まだ息があるものと既に逝ったもの……そして、体から切り離された夥しい数の手足が……


「さよなら――まとめて綺麗に焼却したげるッ!!」


セラは魔術で一箇所に集めた盗賊達に向けて大型の火球を放つッ!!


「「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッ!!!!!」」


爆炎が盗賊達を焼き焦がすッ!手足を切られた痛みも忘れるほどの熱で焼かれて絶叫を上げ――もがき苦しんでいる……


「あぁ……いいわねぇ〜悪人って……彼らに対して何をやっても正当化できる、最っ高だわっ!!ストレス発散に効果的ッ!」


セラは耳を澄まし――喉を焼かれて声にもならない声を上げ続けている盗賊達の断末魔の叫びを聞いて笑みを浮かべ……リラックスしている……とても心地よさそうだ。


「(セラ、少し不機嫌そうだったけど……もう大丈夫そうだねっ!)」


セラの行動に少しだけ驚きつつもイルマは、セラがご機嫌なので別に気にしない――といった感じだ。


……………


………


少しして二人は、焼いた盗賊達が全員死んだことを確認して……商人の女性の待つ荷馬車へと歩きはじめていた……


「…………ん?」


イルマは前方に謎の物体を見つける――


「何……これ?」


「あら……生焼けじゃない、綺麗に焼けなかったのね」


二人の目前には、先程セラが下半身を凍らせて上半身だけを魔術で焼いた盗賊達の見るも無惨な亡骸があった。


「何だか、ちょっとグロいね……」


「そうね。それに、生焼けだからかしら……?何だかちょっと臭うわ」


火で焼かれた盗賊達の上半身は、セラが弱火で炙ったせいか丸焦げにはならず、生焼けでかなり気持ち悪い感じだ。


「ねぇ、気持ち悪いから早く行こうよ」


「そうね、ここは臭いから嫌だわ」


イルマは嫌そうな顔をしながら早足で去り、セラも手で扇いで悪臭を払いながら後を追う。


「焼死体ってやっぱグロいね、しかも生焼けだったし……」


「ほんっと!臭いし汚いしで最悪だったわ。アイツら、死んでまで迷惑をかけるなんて……生まれて来なければよかったのに……」


二人は荷馬車を目指して進む……すると!またイルマが何かを見つけたようで――


「何あれぇぇぇぇぇぇーッ!?」


「あーあれは……」


二人の目先には見るも不思議な建造物……?の様な物体が複数聳え立っていた。


「木……?なの?」


イルマは小走りで木の様な何かに近づき、観察している……


「…………ん?もしかして、人面樹?」


その木の様な何かに人の体の一部が見えてイルマは、なんとも不思議そうな顔をして眺めている。


「あら、こっちも中途半端ね……血液、養分が足らなかったからかしら」


セラが後から歩いてきて呟く。


「これ……何なの?セラ」


「これはね……」 


セラがイルマにこの木の様な何かの説明をしている……


「そうなんだ、でも何だか木にしては不思議な形をしてるね」


「失敗作だからね。本来はもっと形がいんだけど……養分が足らなかったみたい」


二人の目前にある木の様な何か……それは、セラが先ほど魔術で生成した土の槍で串刺した後、木の種子を体に植えつけた盗賊達の成れの果てだった。体の至る所から根や枝などが皮膚を突き破って肉体の内側から無数に飛び出ている。


「何か……ミイラみたいだね。肌の血色が悪いっていうか……カラカラになってるよ、これ」


体全身に流れる血の全てを吸い取られた盗賊達は干からびていて、まさにミイラのようだった。


「失敗作には変わりないけど、顔の表情だけは合格ねっ!ふふふっ、見てるとつい笑っちゃうわっ!」


血を抜き取られてミイラの様になっているのも相まって、その顔を見たものは強烈な不安感を感じざる負えないだろう。


「……桃のお姉さん、大丈夫かなぁ〜」


「荷馬車の中にいると思うけど……」


二人は荷馬車まで来たので幌を開けて中を確認する……


「ひぃッ!?」


「「!?」」


中にいた商人の女性は荷馬車の幌を突然開けられたのでビックリしている――どうやら無事のようだ。


「桃のお姉さん、怪我とかしてない?回復ポーションならあるよ」


イルマが気遣って商人の女性に話しかけている。


「は、はぃ……私は大丈夫、です……」


「……ん?(なんだか、怖がってるみたい。どうしたんだろ……?)」


商人の女性は体をブルブルと小刻みに震わせながら下を向いて俯いている……そんな女性をイルマは不思議そうな顔をして見ている。


「(何なの、この人達……怖いッ!怖ぃ……)」


商人の女性は見ていたのだ、二人と盗賊達の戦闘を……


「(あんな恐ろしい事を……いくら敵だからって、彼らも同じ人間なのに……)」


戦闘が始まる前までは、二人が自分の身を守ってくれる事に感謝していたが……今は違った。二人の……特にセラの残忍極まるやり方に心の底から恐怖していた。


「どうしたのかしら……ひょっとして、急に体調が悪くなっちゃったとか?」


セラも心配して商人の女性を見ている。


「な、なんで……なんであそこまで……いくら敵だからって、あそこまでする必要はなかったんじゃ……」


商人の女性は震える声でセラに言った。


「……はぁッ!?」


セラは予想だにしなかった商人の女性の発言に思わず声が出て、イルマは少し驚いた顔をして商人の女性を見ている。


「……あのねぇ、ヤツらは私達を襲ったのよッ!!ちゃんと仕留めないと私たちが危険じゃないっ!一人でも逃したりなんてしたら……いつか報復されるかもしれなくて、安心して夜も寝れないじゃないっ!!それに、アイツらは私を嬲り殺すッ!なんて言ったのよっ!!あれぐらいやらないと私の気が収まらないわ!!」


「で、でもっ……」


「はぁー、忘れてるようだから言うけど……アイツらは盗賊よッ!人の物を奪ったり、殺したり、そんな事をして生きてるようなヤツらなのっ!だから、死んで当然ッ!殺されて当たり前なヤツらなのっ!!」


「……それ、でも――」


商人の女性が何か言おうとしたが、セラが遮り話を続ける――


「――それにあんたっ!!ちょっと図々しいんじゃないっ?守られている立場のくせにッ!私たちのやり方にケチをつけるだなんて……そんなことを言ったら相手がどう思うかとか分からないわけ?他人の気持ちが分からないのっ?ハッキリ言うけど貴方、相当無神経よっ!!貴方とこうして話しているだけで私、いま物凄く不快な気分になっているものっ!盗賊連中を皆殺しにしてせっかく良い気分だったのに……どうしてくれるわけっ?アンタッ!!」


セラはかなり怒って商人の女性に、自身の心情を吐き捨てたッ!するとっ!商人の女性は慌てて身を震わせながら謝ろうとして――


「――まっ、待ってください!!私が、私が間違ってましたっ!申し訳ありま――」


「――黙れッ!!!アンタが悪いのは私もイルマも分かってるわよっ!!」


「……ッ!?」


イルマはセラが突然自分の名を出したので、少し目を見開いて驚いている。


「すみませんッ!本当にすみませんッ!!私――」


「もういいっ!!アンタと話したくない、イライラするからあっち行けッ!!」


「は、はいぃ〜ッ!!」


セラがかなり不機嫌そうに言って――商人の女性は慌てて、鳥獣を操作する時に腰掛けている座席へと向かった。


「全くっ!恩知らずもいいとこだわ、邪悪で危険なヤツらから守ってやったってのに!」


「ははは……(セラって怒らせたら結構……まあ、今のはあの商人の女の人が悪いんだけどねぇー)」


イルマもセラほどではないが商人の女性にムカついていた。


「あ、あの……じゃあ、出発しますね……」


商人の女性は軽く後ろを向き、目だけ動かしてセラの方を見ている……


「…………」


「ぁ……」


無視だ。恐らく聞こえてはいるはずだが、目も合わせずに不機嫌そうにしてガン無視している。


「はは……わ、分かりました。それじゃあ、お願いしますね……?」


イルマはセラの態度を見て苦笑いをしつつも商人の女性の声掛けに答える。


「で、では……出発します……揺れにはお気をつけて……」


商人の女性が小声でそう言って、手綱を引くと鳥獣が動き出し……一行は目的地へと向けて進み出すのだった。




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