第十三話 太陽と月
「ケホ、ケホ……殺った……かしら……」
先の大魔術によって広範囲に立ち昇った土埃の中から、セラが咳をしながら姿を現す。
「……これ、後で喉が痛くなるやつだ……早くうがいしたい……」
セラは後ろを振り返る……当然の如く何も見えない、視界いっぱいに土埃が舞っているので当たり前だ。
「イルマ……巻き込まれたり、してないよね……」
辺りをキョロキョロと見渡しながら、イルマの姿を探す……すると!背後から足音が聞こえた。こちらに向かって誰かが走って近づいてきているようだ。
「セラーッ!!」
「イルマッ!?」
イルマは走る速度を緩めずにそのままの勢いでセラに抱きついた。
「おっとッ!?」
「やったねッ!!」
「心配したわよッ!でも……よかった」
二人はハグをしてお互いの無事を確かめ合っている……
「倒したんだよね?あたしたち……」
「ええ、あれでダメなら……神でも無理よ」
二人は少しの間抱き合うと離れ、大洞窟……先程まで敵と交戦していた場所を見る……土埃がだんだんと晴れてゆき、その全貌があらわになる。
「おぉ……」
「やり過ぎた……かしら……」
端的に言うと、向こう側の景色が見える……本来は大洞窟が断崖内にあるということもあって、逆方向の景色が見えるなんてことは絶対に無いのだ。見たままの光景を言葉で表現するならば、瓦礫の山だ。広大な洞窟なんてものは見る影も無い。
「困ったわねぇ……これじゃあ戦利品なんて残ってないじゃない。私たちがドラゴンゾンビを倒したっていう証明が何も無い……このままじゃ依頼達成できないわ」
「それもそうだけど、そんなことより……地形を変えちゃったよ。これ、後で絶対怒られるやつだよ」
「その問題に関しては大丈夫よ。メレス家の……お父様に言って上手くことの経緯を変えてもらうから……その件はどうにでもなるわ。それよりも……あっ!そうだわ!」
セラは何かを閃いた。
「今回の経緯を上手く変えてもらう時に、ヤツを倒した証明が無いのも上手く調整してもらうように私から言っておくわっ!これで完璧ね!」
「セラ……」
セラは満足したように頷き、イルマは呆気に取られながらも微笑している。
「それじゃあっ!帰りましょっか?」
「だね、何だかあたし……お腹すいちゃった」
「私もよ、でもそれより……早くシャワー浴びたいわ、服も汚れちゃったし汗もかいたし」
「それにもう朝だしね……夜通し起きてたからもう限界……眠い」
「帰る前にひとまず魔法の家で十分に休息をしましょう」
「賛成」
こうして二人は魔法の家で休息し、メルトアへと帰還するのであった。
……………………
……………
「何だか不思議……数日都市を離れただけなのに、すごく久しぶりに帰ってきたって感じがするよ」
「分かるわ、その感覚……中でも冒険者は特にそう感じると思うわ」
イルマとセラの二人は目的のドラゴンゾンビを無事に討伐してメルトアへと帰還し、依頼達成を告げるべく冒険者ギルドを目指して都市内を歩いていた。
「でも、本当に大丈夫かなぁ〜……目的の魔物は討伐したけど、戦利品……何にもないから。それに、洞窟も消滅させちゃったし……」
「その件は前にも言ったけど、心配いらないわ。お父様の方から上手くギルドに口出しをしてもらうよう言っといたから」
セラは都市に帰還した後に一旦イルマと離れて屋敷に戻り、父親ことエデン伯爵に今回受けた依頼のことの顛末を全て話し、ギルドに二人が行く前に伯爵本人が直々にギルドに出向いて上手く話を進めてくれたようなのだ。
「そう……だよね、大丈夫……よし!後でセラのお父さんにお礼言わなきゃ!」
「お父様に任せておけば大抵のことは何とかしてくれるから、イルマも何か困ったことがあったらじゃんじゃん言っていいのよ!」
「ははは……(さすがにじゃんじゃんは恐れ多いけど……でも、本当に何か困ったことがあったら頼らせてもらおうかな)」
「……おっ!色々話してるうちに着いたよ、冒険者ギルド!」
「じゃあ、中に入ろっか!」
二人は冒険者ギルド内へと入っていく……
……………
………
「依頼達成、おめでとうございます!!」
「よしっ!まずは一つ!」
「……よかったぁ」
セラは満面の笑みで喜び、イルマはホッと胸を撫で下ろし安堵していた。
「今回の依頼達成に伴い、お二方のランクを上昇させていただきます。冒険者専用のライセンスカードをこちらへ」
ギルドの受付嬢がそう言うと二人は、ライセンスカードを受付嬢に手渡した。
「では、お二方のランクを現在のFランクから一つ上のEランクに上げさせていただきます」
そう言って受付嬢は、二人のライセンスカードを特殊な魔道具で改変していき……
「…………更新が完了しました。……どうぞ」
二人は更新の終わったライセンスカードを受け取る。現在の冒険者ランクを指す箇所にはEと書いてある。
「やったねッ!!私の予想通り一回でランクアップできた!この調子で上げてこう!」
「だね!」
二人が手をタッチして喜びあっていると受付嬢が……
「そういえばお二方……パーティーを組んでおられるのなら、パーティー名を決めてはどうですか?」
「「パーティー名?」」
「はい。冒険者でパーティーを組んでおられる方々は皆、そのパーティーに名をつけておられます」
「そっかぁー、まだ決めてなかったね」
「そんなこと考えもしなかったよ、あたし」
「ん〜……イルマ、何かいい感じのやつある?」
「んー……」
イルマは考えている……しかし、特に何も思い浮かばない……急な話で当たり前といえば当たり前だが、それでも何かないかと考えている。
「…………(何か……ない……か)」
イルマは辺りを見渡しながら考えて……ふと、セラの方を見る。特に何か理由があるわけでもないが、じーっとセラの方を見ている。
「……ん?」
セラは何かと首を傾げている。その後、セラから視線を外しまた辺りを見渡してギルド内においてある鏡を何となく見る……当たり前のように自分の姿が写し出される。
「何か……」
鏡を覗き込み、じーっと今度は映し出された自分の姿を見ている……と、その時ッ!イルマの脳裏に何かがよぎる……
「赤……銀……いやッ!太陽と……月!」
「イルマ?」
「セラ、いいの思いついたかも!」
「え!?……なになに?」
セラは興味深々にイルマの言葉を待っている。
「太陽と月!なんてどうかな?」
「太陽と、月?」
「うん!なんかさぁ〜自分で言うのも変だけど、あたしが太陽でセラが月……みたいな!髪の色とか性格とかその他諸々で」
「……んー、何となく言いたいことは分かる……かな。……うん!いいかも、それ!」
「じゃあ、太陽と月。これでいいかな……セラ?」
「ええ、それでいきましょう!私たちは、太陽と月よ!」
二人は受付嬢に今決めたパーティー名を伝えた。
「では、お二方のパーティー名は太陽と月……こちらでそう登録させていただいてよろしいですね?」
再度、受付嬢が確認をしてきて二人は……
「「はいっ!」」
元気よく返事をするのだった……
……………
………
「太陽と月か……なんだかしっくりくるわね。さっすがイルマ!名案だわ」
「えへへ〜!」
イルマは褒められて気持ちよさそうに笑っている。
「明日も依頼頑張りましょうね、イルマ!」
「うん!これからもよろしくね、セラ!」
こうして二人はギルドを後にし、楽しそうに談笑しながらどこかへと歩いて行くのだった。




