第十二話 決着
「…………この作戦が上手くいけば、確実にヤツを葬り去ることができるわ」
セラはイルマに耳打ちでこれから行う作戦を伝える。
「なんかヤバそうだね、その魔術……」
「今の私が使用できる最も強力な魔術よ……でも、唱えるまでに時間がかかる」
「だからこそのあたしだね、任せて!その魔術の準備が終わるまではあたしがヤツを足止めするッ!」
「お願いね。予定通り私が合図をしたらヤツから離れてね」
「うん、分かったよ!」
「それじゃあ始めましょう!アイツの相手は任せたわ!」
そう言うとセラは魔術で風を身に纏い、洞窟内の天井……巨大な球状の穴が空いている箇所へと跳ぶ。
「(セラ、絶対勝とうね!)」
その直後ッ!その光景を見ていたドラゴンゾンビが翼を広げてセラに追撃しようとする……が、イルマがそれよりも速く動いてドラゴンゾンビに急接近し――
「行かせないッ!あんたの相手はあたしだっ!!」
両翼を根本から切り飛ばし、顔面に強力な蹴りを入れて地面に叩きつけた。
「(セラ……こっちは任せてよねッ!)」
イルマは剣を構えて地に横たわるドラゴンゾンビを警戒している。
「……無理しないでね、イルマ」
セラは洞窟内の天井に空いている巨大な穴から外に出て、その近辺に生えている高木の天辺に着地して魔力を高めていき……その場で瞑想をはじめる。
「……てな訳で、少しの間あたしが遊んであげる!」
ドラゴンゾンビは立ち上がるとイルマの方を向き、その身を噛みちぎらんと勢いよく飛び付いてきた。
「おっとッ!」
イルマは宙を舞って後方へ跳んだ。どうやら完全にヘイトがイルマに向いたようだ。
「そんなんじゃあたしを捕まえ――」
イルマが着地し軽口を飛ばし終えるのを待たず、ドラゴンゾンビは口を目一杯開けて火を吐いた。
「熱ちッ!?」
イルマは左方に高速移動して交わすも高温の熱気を肌で感じる。命中すればまる焦げ確定だ。
「ガアァァァァァァァーッ!!!!」
ドラゴンゾンビは激しい雄叫びをあげてイルマを追い、その鋭い鉤爪で華奢なイルマの身体を引き裂こうと左前足を叩きつける……が、イルマは軽い身のこなしで軽々と交わすとドラゴンゾンビの腹に超威力の蹴りをお見舞いする。
「ガバァッ!!」
ドラゴンゾンビは口から大量の血を吐いて体が傾く……
「とりゃァッ!!」
さらにイルマは顔面に蹴りを叩き込み、のけ反らせる……蹴りが命中した方の目玉が勢いよく吹き飛んで頭蓋が砕けて流血する。
「ゾンビだからかな……随分脆いね」
最後にイルマはドラゴンゾンビの首を剣で刎ねて後方へ下がり……次なる攻撃に備えて剣を構える――
「(速いッ!?)」
数瞬後ドラゴンゾンビは瞬間的に堕とされた首を生やし、イルマ目掛けて猛突進するッ!!
「ヤバッ!!」
しかし、イルマが一瞬速く斬撃を放って再度首を刎ね止める……が、瞬時にまた再生してイルマに迫る……
「しつこいんだってばッ!!!」
そうはさせまいとイルマは次いで斬撃を放ちまくり、ドラゴンゾンビの全身をバラバラにした。
「きりがないッ!こいつの再生能力って無尽蔵なのかな?だとしたらあたし一人じゃ倒せない……もしも一人でこいつに立ち向かわなきゃいけない状況だったら……かなりヤバかったね……」
バラバラに散らばったはずの体はすぐさま再生し、流れていた血もあっというまに止まって……ドラゴンゾンビは再度イルマに襲いかかるッ!
「くッ!?」
その巨躯で覆い被さらんと跳んで距離を詰め、両の前足で叩き潰そうとする。
「……ッ!!」
イルマは瞬時に回避してドラゴンゾンビの背後に回り、横薙ぎに一閃ッ!ドラゴンゾンビの体を上下真っ二つにした後その場で跳躍し、無数の斬撃を雨霰のように飛ばしまくる。
「…………ッ!!!!」
洞窟内が激しく揺れる……
「はぁ、はぁ、はぁ……少しは、効いた……?」
イルマは着地してドラゴンゾンビがいたであろう場所を見る……土埃が激しく立ち昇っている。
「…………」
イルマが用心し、警戒しながら見ていると……次の瞬間ッ!その中に巨大な影が突如浮かび上がり、物凄い速度で何かが土埃の中から飛び出してきたッ!!
「(だよね……)」
ドラゴンゾンビはその巨躯でイルマをねじ伏せんと突っ込んでくるッ!
「……ッ!!」
イルマは力強く地を蹴って跳び、洞窟内の天井に剣を差し込む……まるで蜘蛛のようにその場に張り付く。
「やっぱノーダメかぁー……」
イルマは洞窟内の天井に剣を差し込んで、目下にいるドラゴンゾンビを観察している……全身には先程放った斬撃による切り傷がまだ多少はあったが、みるみるうちに再生していき……やがて、完全に元通りになる。
「ちッ!(やっぱ今のあたしじゃ殺しきるのは無理か……)」
あまりの再生能力の速さにイルマは苛立って舌打ちする。
「さて、次はどうするか……」
次なる一手を考える……しかし、そんな猶予を与えんとドラゴンゾンビがイルマに対して火球を吐いた。
「とッ!?」
イルマはすかさず天井に差していた剣を引きぬき、天井の壁を蹴って移動し回避する……
「さて……」
地面に着地するとイルマは剣を構え、ドラゴンゾンビの次なる攻撃に備えて警戒する。
「…………」
イルマが攻撃に備えていると……突然!セラが魔術で生み出した光源が全て同時に消える――
「!?」
イルマはこの現象をずっと待っていたのだ……何故ならッ!これがセラと決めた合図だからだ!
「ふふふ、じゃあっ!さよならだね!!」
イルマはそう言い放つと、目にも止まらぬ速度でドラゴンゾンビに急接近……ドラゴンゾンビの両手両足、首、翼、尻尾っと順に剣で切断していき……最後に胴体を十字に切り裂いてドラゴンゾンビの全身を瞬時にバラバラにして解体した。
「……ッ!!」
その直後!イルマは全力で地を蹴る、洞窟内の壁にひびが入り崩れて空いた空洞の一つに脱兎の如く飛び込んで行き……洞窟内を後にした。
「セラ、後は任せたよ……」
洞窟から出るとイルマは、できる限り今いる場所から離れようと全力で森林が生い茂っている場所に向かって走っていく……
「ありがとう、イルマ……」
そう口にするのはセラだ。洞窟の近くにある高木の天辺で何らかの準備を完全に終えたようだ。
「さぁーてッ!これで終わりよ!!耐えれるものなら耐えてみなさいっ!今の私の全てよッ!!」
セラがとある魔術を唱えはじめた……
「この世を赤く照らす火の神よ……天上の怒りたる雷神よ……命を震わす氷の神よ……世界を繋ぐ風の神よ……大地を支えし地母神よ……」
セラが詠唱を唱えるにつれて、洞窟内のドラゴンゾンビがいる空間の真上に巨大な魔法陣が縦に積み重なるように次々と出現していく。
「我の名に従い統合せよッ!!」
合計で五つの魔法陣が縦一列に浮かび上がり、その五つの魔法陣が上から順に光で繋がっていく……
「さぁッ!我の名の下に発動せよっ!!偉大なるこの世の摂理よッ!!五属性複合魔術!!ノア・メルシャリクゥゥゥゥゥーッ!!!!」
セラの言葉とともにドラゴンゾンビの頭上に展開された五つの魔法陣が急激に光だし……瞬間ッ!魔法陣から一筋の極光が、バラバラになり未だ身動きが取れないドラゴンゾンビ目掛けて降り注ぐ……
直後ッ!辺り一帯を物凄い光が包み込む、森林地帯……いや、それを遥かに超える範囲に目を開けることもできないほどの強力な光が辺り全体を照らす。その数瞬後ッ!!絶大なる破壊が大洞窟を襲う……巨大な洞窟は光とともに白き世界に消えていき、そのほとんどが絶対なる破壊とともに霧散していく……
そして……その極光を直に受けたドラゴンゾンビは、眩い光とともにその細胞の一つ一つに至るまで完全に消滅していき……やがて、その存在は無に帰した。
その直後ッ!!時間差を置いて、想像を絶するほどの恐ろしい衝撃音が辺り全体に響き渡る。
大地は激しく揺れ、辺り一体に生える木々は全て吹き飛び、大洞窟は完全に消滅した……
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