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第十話 大洞窟


現在時刻は夕刻前……二人は探索を再開していた。


「結構歩いたと思うけど……なかなか見つからないね、大洞窟」


「もうそろそろ見つかるはずよ、私には分かるのよ」


二人は密林地帯の深層に足を踏み入れようとしていた……


「なんだか暗いね、まだ日が昇ってるのに」


「だいぶ奥の方まで来たからね……この地帯の木々はかなり高いし、木々同士が密集してるってのもあるんだけど……とにかくっ!さっきみたいな魔物の奇襲には十分に気を付けないと」


「そうだね……ん?」


「どうしたの、イルマ?」


「何か来るッ!」


二人の左方……茂みの奥から何かが物凄い速度で接近してくる……イルマとセラは身構えて臨戦体制に入る……そして二人の目前まで近づくとその何者かは勢いよく飛び出てその姿を現した……


「ガァァァォォォ〜ンッ!!!」


「「魔獣ッ!?」」


二人の前に現れたのは、黒色の毛を生やしたオオカミ型の魔獣だった……大型の個体で、二人の数倍以上の図体をしている。魔獣が自身の生やす恐ろしいほど鋭利な牙で二人を噛み砕こうとする……が、それよりも速く――


「……ッ!!」


イルマが持ち前の剣撃で、魔獣の胴体を真っ二つに切り分けた……魔獣は断末魔のような声をあげながら地に落ちて……動かなくなった。


「ナイスッ!!さっすがイルマ!」


セラは気前よくイルマを鼓舞した。


「まだだ……たくさん来るッ!」


さらに茂みの奥から複数の魔獣が、二人目掛けて全速力で突っ込んで来た……


「死になさいッ!」


セラが魔術を唱えたッ!こちらに向かって接近してくる魔獣達に対して、数十本の光の槍を放つ。槍は正確に魔獣達を貫き串刺しにしていく……魔獣達は口から血を吐きながら絶命していく。


「終わりかしら……」


「……後ろだッ!」


イルマの掛け声と同時に数体の魔獣が二人の後方の茂みから飛び出してくる……


「……ッ!!」


飛び出てきた魔獣をイルマが制圧せんと行動する……魔獣の喉元目掛けて剣を突き刺し即死させ、次いで突き刺した剣の柄を離し……別の個体の顔面に強力な拳打を放つッ!魔獣の顔面をグチャグチャに崩壊させ、頭蓋を粉砕する。そして最後に残った個体には強力な蹴りを頬に放ち、頭蓋を半壊させ首の骨を砕き、目先にあった木に叩きつけた。


「ふぅ……」


イルマは魔獣の喉元に突き刺した剣を抜き、辺りを警戒している……


「一旦落ち着いたかな……」


そんなイルマに対してセラが……


「どうして魔獣が来るってわかったの?」


なんとも不思議そうな表情をしながら聞いてきた。


「ん〜……あっ!あれだよ、あれ……たぶん、野生の勘ってやつだと思う」


「何それ……」


セラは言葉の意味がよく分からず首を傾げる。


「まあ、なんとなく分かるって事だよ」


「そう……なんだ」


多分納得してくれたようだ……イルマは、魔物の追撃が今の所もうない……と、分かったようで安堵している。


「どうやら大洞窟があるっていう深層に入ったって事みたいね。この魔獣……確か、深層にしか生息してない種類よ。さっき倒したゴブリンとは比べ物にならないくらい強力な種だわ。この調子で先へ進みましょう……目的地は近いわ」


セラは持ち前の知識でそう判断し、二人はさらに奥へと進んでいく……


……………


………


「もう完全に夜の時間になっちゃったね」


「そうね……でも、もう少しだけ続けましょ……後少しで、目的の大洞窟に辿り着けそうな気がするのよ」


二人は深層を進み続けていて、辺りはすっかり暗くなり夜の時間になっていた……本来なら夜の探索は危険なので中断するのが常識だが、今宵の空は雲がほとんどなく月明かりと星の光で夜ながら、松明などの光源がなくとも問題なく移動することができたので、二人は探索を続けていた。


「ねぇセラ、今更なんだけど……ドラゴンゾンビってどんなことしてくるの?」


「ん?……知らないわよ……まあ、ゾンビなんだから汚いし、多分……臭いんじゃない」


「そ、そうなんだ……(大丈夫かな……本当に倒せるのかな……)」


イルマが少し不安な表情をしているとセラが……


「ねぇ、この地帯って……日の出てる時間でも暗くて、深層に入ってからはさらに暗くなって……いくら空が開けてて、夜の時間でも問題なく探索できるくらいには明るいにしても明るすぎない?さっきまでは、日の出てる時間でもあれだけ暗かったのにさ」


セラがそう言うと、イルマは辺りを見渡す……確かに明るい、いくら今宵の夜が明るかろうと日の出ている時間よりも明るいなんてことは、ありえない!


「(何か理由があるはず……)」


イルマはそう思って辺りを確認すると……木々がさっきよりも少ないことに気づく。後ろを振り返り、先程まで自分たちが歩いてきた道筋を目を凝らして確認する……すると、今いる場所よりも木々が生い茂っている……どうやら深層に入って幾分かしてくらいから、奥へ進めば進むほど辺りに生えている木々が少なくなっているようだった。


「これって……」


「イルマ、何か分かったの?」


「途中から奥へ進めば進むほど辺りに生えている木々が少なくなってる……あたし、こんなふうになってる地形を見たことがある」


「何か理由があるの?」


「うん、それなね……多分なんだけどこの辺りで昔、何か大きな出来事があって本来生えていたはずの木々が無くなったんだろうね」


「大きな出来事?」


セラは神妙そうに尋ねた。


「うん、何があったのか真相までは分かんないけど……」


「大きな出来事か……私もこの辺りのことは文献で幾らか読んだことあるけど、地形が変わるほどの出来事があっただなんて……初耳だわ」


二人は少し気になりながらも先へ進む……


……………


………


現在時刻は真夜中……もうじき日付が変わろうとしていた……


「セラ!あれって……」


「ええ、やっと見つけたわ!」


二人の目先には、視界に収まりきらないほどの広大な岩山が聳え立っていた。


「イルマ!あそこを見て……」


セラが岩山のある部分を指差す……そこには、巨大な洞穴があった……大型の魔獣が難なく通り抜けられるほどの巨大な穴だ。二人はその洞穴に向かう……


「真っ暗だ、何も見えない……」


「…………」


洞穴の目前までくると中を覗いてみる……案の定、中は真っ暗だった。何も見えない、松明やランプなどの光源を利用しても恐らく不十分だろう。


「……セラ?」


「私に任せて……」


セラが数歩ほど前に出てある魔術を唱えた……すると!セラを囲うように球型の光る光源が数十個ほど出現する。


「これを使えば洞窟内でも、移動するのに支障はないはずよ」


セラが前方の洞窟に向かって軽く手を振ると、今し方生み出した球型の光る光源達が洞窟内へ移動を始めた。


「魔術でこんな事もできるんだ……」


「光属性の魔術のちょっとした応用よ……治癒魔術は扱えないけど、これくらいならできるわ!よし、そうとなれば先へ進みましょう……」


「うん!行こう」


そうして二人は、洞窟内へと足を踏み入れるのだった。




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