2話 異世界転生ボーナスは······ってウソ!?
「もしもーし。生きてる? いや、死んでるかな? ねぇどっちだと思う? ラクさん」
「なんで私に行くんですか。キョウト様が一番分かってるじゃないですか」
「もー、つれないなぁ。そんなんだと、この子と一緒に外界へなんて、行かせないよ?」
「スミマセンデシタ」
車にはねられる衝撃のかわりに、落ちついた女の人と、イケショタ風の人の声が聞こえた。
聞こえた、といっても、脳内に直接響いている感じだ。
何ここ? あの世?
あの世ってことは、三途の川があったり?
そもそも、天獄どっちなんだろ。
閉じたままの目を開けようとしても、命令が届いていないみたいに、ピクリとも動かない。
「あ、ここは世界の狭間だから、君は動けないよ。仮死状態だからね。さて、長居すると君が危険だから、簡潔にいくよ。私はキョウト。世界の狭間の管理人で、それぞれの世界のバランスを調整してる神様だよ。今回は、君を別の世界に送ることになったんだけど⋯⋯」
え、僕が別の世界に?
それっていわゆる、異世界転生⋯⋯!?
「そう。ときどきね、私の暇つぶし⋯⋯ゴホンゴホン! 停滞した世界に、別の世界の人を送るの。君はラクさんが頑張ったおかげで⋯⋯」
「キョウト様。時間ないです」
「あれ本当だ⋯⋯って、照れてる? 初心だねー」
「っ!? 急ぎめでお願いします⋯⋯!」
「分かった分かった。⋯⋯私が君に聞かないといけないことは一つ。君は、次の人生で何を望む?」
次の、人生⋯⋯。
ってそういえば、僕が脳内で思い浮かべた言葉で、会話が成立してる⋯⋯!
神様あるあるだ!
「はやくしたほうがいいよー。時間切れになったら、テキトーに放っちゃうからねー」
え? どこに!?
とりあえず、考えるのも怖いから、頭の隅においておく。
⋯⋯望むこと、か。
そんなの、決まってる。
これ一択しかない!
僕が僕らしくあれ⋯⋯。
「あ、時間だ。じゃ、セカンドライフ、楽しんでー」
「なっ⋯⋯! キョウ、ト、さ⋯⋯」
え⋯⋯!?
聞いてもらえなかった⋯⋯!?
そんな、異世界転生って、転生者が絶対にボーナスを選べたりするんじゃないの⋯⋯!?
万能能力とか、最強魔力とか、何か特別なものをほしいとは言わないから(あったら嬉しいけど)。
僕は⋯⋯自由に生きたい。
そんな願いもむなしく、僕の意識は沼底へと沈んでいった。