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番外編、しあわせを
「はい、お世話になりました。ありがとうな」
「そうだな、人間が人間らしくいるのはありがたいことだ」
手紙を置いて、三ヵ月暮らした家を出る。シガンはまだ眠っていた。
「ユエンさんもありがとね」
「かまわない。私はいつだって人に望まれたようにいたのだから」
「そっか。コウくんがいて欲しいって望んだからか」
カギをかけて、そのカギをポストに放り込んだ。カチャンと小さな音が鳴る。
「……シガンさんには申し訳ないことしたけど」
「だが、それは私の邪視によるものだ。おまえが気にかけなくともよい」
「そういうわけには。……でも、うん、シガンさんは、いい人だった」
「そうだな。私は報復をする機会があってよいと思っていた。シガンが神に祈るなら、私はその望みにも応えただろう。でも、あの男はそうしなかった。だから、シガンを助けられたのはシガンだけだ。それは、とてもすごいことだ」
「そうかもなあ。俺は、コウくんにもシガンさんにもしあわせでいて欲しいよ」
「なるほど」
朝の住宅街を歩く。鳥の声が聞こえる。人が動き出す気配がする。
「アオ、おまえはどうだ? しあわせか?」
「わからんけど、こうして生きてるのが俺のしあわせなら嬉しい。いいことだけじゃないけど、いいことがあるといいなって思うから」
「そうか、それならいい」




