0000 プロローグ
なんてことない冬の日。
とてもとても偉い神様と名乗る声が、ある日みんなに言いました。
『こちらは神様です。お隣の世界はもうすぐ死にます』
『こちらは神様です。お隣の世界はもうすぐ死にます』
『こちらは神様です。お隣の世界はもうすぐ死にます』
なんということでしょう。
世界中が驚きました。
三度繰り返された言葉は同じ時刻に、世界中の全人類が聞かされていたからです。
神様が本当にいらっしゃる、というのも初めて知りましたが、お隣の世界があるということも私たち人類は初めて知りました。
さらに、お隣さんは死にかけの世界だというではありませんか。
もちろん初めはこの【ご神託】自体、信じている人は少数派でした。
マスコミやYouTuberや評論家の皆様などは、何かの陰謀だ、テロだ、宇宙人だなんだとここぞとばかりに騒いでいたのですが、ある日を境に彼らは考えを改めることになります。
それが、後々人類史で【ホワイトアウト】と言われる、集団行方不明事件です。
2024年12月某日。
世界各地から白髪の人間が突然、姿を消しました。
あるものは家族とディナーを囲む最中に。
あるものは通学中にバスの中で。
あるものは仕事を始めた直後。
あるものは愛する人の腕のなかで。
まるで初めから居なかったかのように、一瞬で消え失せてしまいました。
恐怖と、焦燥と、絶望のなかで神様は二度目の【ご神託】をなさいました。
『こちらは神様です。ありがとう。大事に使わせていただきます。』
『こちらは神様です。ありがとう。大事に使わせていただきます。』
『こちらは神様です。ありがとう。大事に使わせていただきます。』
こうして、私たちの世界からは30万人以上の人間が突如姿を消しました。人だけでなく、動物も、昆虫も、魚も。その身に白を纏う者達は居なくなってしまったのです。
消えた彼らの消息は、十年という歳月が流れた今でも1人たりとも分かっていません。
ご覧いただきありがとうございました。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
あくまで創作上のものとして楽しんでいただければ幸いです。