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第007話 おっさん、世界再生に向かい始める


 祭りは終わり、翌朝からホムンクルス達と一緒に会場の撤収作業をしている。


 賢者エグゼは一人で老体を癒すようにじっと様子見に徹していた。


「……おっさん殿」

「なんですかエグゼさん」

「時におっさん殿は、賢者の石と言う奴は作れたりするのだろうか?」


 賢者の石? うーん、一応想起してみてはいるが、レシピは開放されない。


「現状だと無理そうですね、賢者の石ってなんです?」

「賢者の石があれば、空を覆っている暗雲を払うことができそうなのじゃよ」


 それは、世界再生のために必須なことだ。


 賢者の石がなんなのか理解し、レシピが出来上がり次第、エグゼさんに伝えよう。


「それと今日の昼ごはんはさっぱりとした物がいいのだが」

「なら蕎麦ですね、りょーかいりょーかい」

「何から何まですまんのう」

「いいってことよ、何せ、エグゼさんにだって俺みたいな時代はあったはずなんで」

「ふぉふぉ、そうだったかな? もう昔のことは曖昧じゃがの」


 それでも、この人は賢者と呼ばれる高貴な人だもの。


 苦労をしてないわけがない。


 執事服に身をまとった一号が作業を終えたと伝えてきた。


「おっけー、お疲れ。これホムンクルスのみんなに配ってな、ご褒美だよ」

「ありがとうございます、それで次は何をすれば」

「ちょっと休憩しよう、だからホムンクルスのみんなも待機ってことで」

「了解しました」


 一気に大所帯になって、中間管理職にでもなった気分だ。

 休憩を取っていると、狂戦士のゼルエルと女剣士のアネッタがやって来る。


 ゼルエルは膨れたお腹を叩きつつ、口を開いた。


「おっさん、昨日はありがとうな。戦争以来にお腹一杯に美味しいものが食えた」

「そいつはどーも、まぁ、これからはギブアンドテイクで美味しいもの提供するよ」

「ああ、どうやらお前のクラフトに必要な材料はモンスターの素材がいるみたいだしな」


 横で話を聞いていた女剣士のアネッタは、ずずいと身を乗り出して。


「ありがとうおっさん、私のおっぱい揉んでみる?」

「い、いやいやいやいやいやいやいや!」

「そこまで猛烈に否定しなくてもいーだろ、昨日はありがとうね」


 で、賢者エグゼもそうなんだが。


「君達はこれからどうするんだ?」


 と聞くと、エルゼルは斧を担ぎ。


「俺はしばらくオーガ山に住むぜ、ってことであんたに家を要求してぇ」

「オーガ山に家を建てるの? 危険じゃないか?」

「オーガ山のオーガは一掃したと思うが、あそこは俺の支配地にする」


 そうか、頑張れ。

 で、アネッタは?


「私はおっさんについて行って、出来そうなことがあればやるわよ?」


 アネッタの申し出をゼルエルが笑いながら口を挟んだ。


「アネッタに出来そうなことなんて、体を売る以外にあるのかよ」

「ゼルエルキーモーイー、まぁそういうことだからよろしく。おっぱい揉みたかったら揉んでもいいし」


 揉まねぇーし!

 それじゃ、各人の方針が決まったところで、街に帰りますか。


 オーガ山のオーガは殲滅したらしいので、四駆の自動車に皆を乗せる。


 おっさんが運転している車にはゼルエルとアネッタとシーラが乗り合わせていた。

 後方をホムンクルス一号が運転している車がついてきている。


 アネッタは初めて乗った車に。


「これ、どういう原理で走ってるのかしら」

「電気ですね、電気が元となってモーターを回します」

「ふーん、色々と勉強したくなっちゃうわね」


 ゼルエルも無言だったが、車に感嘆しているようだった。


 オーガ山の中腹でゼルエルを下ろし、アイテムボックスを渡した。


「これからおっさんがちょくちょく通うけど、その時は出来るだけ居て欲しい」

「おう、でねーとおっさんがモンスターに殺されちまうしな」

「不吉なこと言うなよ、それじゃ、またねー」


 オーガ山を抜けておっさんたちは拠点としている街に帰った。


「一号から六号、ちょっと来てくれカモン」


 おっさんは颯爽とホムンクルス全員を招集し。

 中央広場に立てた一軒家の派生レシピを彼らに公開した。


「ここに乗っている材料を持ってきて欲しい。そしたら君達の家を作ろう」

「了解しました」


 ホムンクルスは誠実で優秀だけど、メリハリがないのが玉に瑕だな。


 でも、彼らみたいな労働力があれば、この街の復活はすんなりと終わるかもな。


 中央広場に建っているマイハウスの二階からアネッタが声を掛けた。


「ねぇ才蔵、私ここ気に入った!」

「おー、それはよかったねー」


 誰よりも元気溌剌な顔でおっさんの家を気に入ったと言ってくれた。


「ならその家はアネッタにあげるよ、おっさんはシーラ達と一緒に新しい家に移り住むから」

「それまじ? やった! ねぇエグゼ、この家くれるって」


 アネッタを見ていると、ここが滅んでしまった世界とは思いづらかった。


 するとアネッタは再度窓からやや身を乗り出して。


「おっさん、私にも似合いそうな服頂戴よ」


 おっさん、思わずため息ついて家にあがった。

 二階にいるアネッタを見つけて、彼女を視界にぱっと映す。


『ダメージTシャツのレシピを獲得しました』

『ダメージジーンズのレシピを獲得しました』


 彼女に似合いそうな服のレシピを開き、材料があったので作成する。

 そしてアネッタにそれを手渡しつつ。


「もっとゆっくりやろうよアネッタ、おっさん疲れちゃうから」


 立て続けにあれ欲しいこれ欲しいなどと要求されてばかりだと、辟易としてしまう。


「聞いてるのかアネッタ……!?」

「聞いてるわよ」


 聞いてるわよって、アネッタさん?

 なんでおっさんの目の前で堂々と着替え始めるの?


 貴方にー、恥じらいというものはー、ないのでしょうかー。


「……これいいわね! 他の服ってないの?」

「聞いてないやないか!! おっさんの話に耳を傾けて」


 そこに、冷静なエルフ嫁のシーラが仲裁に入る。


「アネッタ、彼はこう見えてご多忙だから、あまり振り回さないでね」

「それもそうね、何せこのおっさんがこれからの支えですものね」

「そういうことです、無理強いなんてもってのほかです」


 おっさんの言葉は伝わらないのに、シーラの言葉は伝わるのか。


 おっさんの発言力のなさが知れちゃった。


 アネッタは若干苛立っていたおっさんに肉薄すると、自慢のおっぱいでおっさんの顔をはさんだ。


 シーラが彼女の行動に嫉妬していたのは言うまでもないことだった。



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