第018話 おっさんは勤しむ
聖剣の貯蔵庫の件をロイドに謝罪したあと、工場に戻った。
そこには手をつないだシーラとミリアが待っていた。
シーラはおっさんに語り掛けるように微笑む。
「才蔵さん、ドワーフの長老様から伝言です」
「うん、なんだって?」
「大人しくしていろと言った傍から独断専行するお前は死刑に値する。って」
「笑顔で言わないでくれない?」
シーラの隣で聞いていたミリアがわっるい顔で笑っている。
背後にいた二号と六号の会話が聞こえた。
「ミリア様は今日も悪魔的に麗しい」
「え? 六号がこの前言っていた意中の人って、ミリア様だったの?」
「えぇ、ミリア様の全てが好き」
ろ、六号……早まるなよ?
気を取り直して、シーラの伝言の続きを聞いた。
「当初より計画していたノーム様への謁見は、エグゼ様が引き受けてくれました」
「まぁエグゼ様ぐらいしか妥当な人いないからな」
「千年祭の時にお会いしてくるらしいです、それで才蔵さんと会いたいと所望している方がおりまして」
ふむふむ、誰だろう。
おっさんと会いたいだなんて、奇特な人だ。
「長老のご息女の、ローズ様という方なのですが、どうしますか?」
例の金髪縦ロールのドワーフか。
居丈高な感じで、なんとなく金満家で傲慢なイメージ。
「はい、大体あってます」
「おっさんの心を読むんじゃない」
しかも大体あってるって、昨日一晩で何があったんだ。
「…………」
いつも温厚なシーラの目が凍てついている。
あのゴミ女、この世の道理をわきまえさせてやろうか? と物語っている。
「恐縮ですね」
怖い怖い。
「えっと、あ、ああ! おっさん急に悪寒がして来た!」
「え? 大丈夫ですか?」
「ウイルス性の病気かもしれない、ローズ様に移すのも悪いし、今はまだ無理かな」
「わかりました、その様にお伝えしておきますね」
あ、あの、あまり無茶しないでね?
長老から独断専行を注意されたおっさんが言えることじゃないけどさ。
隣にいたミリアは「面白くなって来たな」と笑いが絶えない様子だった。
伝言を聞き終えた後、ロイドから呼ばれた。
「おっさん、自動洗浄機と掃除機、洗濯機をクラフトしてくれないか」
「オッケーだロイドくん、その代わりおっさんには」
「鉱石を提供すればいいんだよな?」
「他にも色付けてくれてもいいんだぞ?」
「それは今後次第かな」
ふっふっふ、何をおっしゃいますうさぎさん。
とおっさんが言えばロイドも釣られて笑う。
これはお互いに、銭の花の匂いがしますなぁ、ふっふっふ。
シーラはおっさんの上機嫌を気取ったようで。
「才蔵さん、無理せず頑張ってくださいね」
といい、ミリアを連れて金髪縦ロールのお嬢様の所に帰ったようだ。
ミリアは去り際、おっさんに手を振っていた。
「おっさんじゃあねー」
……頑張りますよ、おっさんは。
それが他のためでもない、彼女たちのためならば!
その日、噂を聞きつけたドワーフ達がロイドの工場を訪れて色々と相談に乗った。
ロイドが次々と商談を成立させると、おっさんは気合を入れてクラフトに勤しんだ。