表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/32

第017話 工場見学名目の破壊活動

本日は野暮用がありまして一日中家を不在しておりまして、予約投稿で失礼しますm(_ _)m


 翌日、大衆居酒屋での活躍を聞きつけたのか。


「ロイド、ロイドさんはどちらに?」


 ある一人のドワーフの婦人がロイドの工場にやって来た。


「はい、ロイドは俺ですが? え? 自動洗浄機と掃除機、洗濯機?」

「ここで取り扱ってるって聞いたのだけど……?」


 なるほど、昨日おっさんが贈呈した旦那の奥方が広めたのだな?


 まぁ一式ぐらいなら残された材料で作れそうかな。


 おっさんがその婦人に対応しようとすると、ロイドは目を輝かせた。


「毎度、運搬、取り付け作業代込みで勉強させてもらいますよ」

「いくらで譲ってくださるの?」


 おっさんはロイドにクラフトに用いた材料を見せる。

 ロイドは材料経費を試打し、ドワーフの婦人との交渉に入った。


 三号はその光景に何を思ったのか。


「才蔵様、交渉というのはいやらしい内容でしょうか?」

「バーカ、いい加減目を覚ませ三号」

「も、申し訳ありません」


 四号もロイドと婦人に熱視線を送っている。


「四号も」

「私は、ロイド様の交渉とやらを参考にしたくて」

「いやらしい意味で?」

「いいえ、私が担当している店の営業について、見本が欲しかったのです」


 四号には街で唯一の商店を任せていた。


 商店を利用しに行ったシーラが、困った顔をして言ってたな。


 四号さんは計算が苦手みたい、だと。


 だとすれば、四号がロイドの商売を参考にしたい気持ちは理解する。


 おっさんは四号の手を取ってロイドのもとへ向かった。


 工場内に設けられた小さなオフィスの扉を開くと、ロイドが眉を開く。


「おう、どうした?」

「この子に商売のなんたるかを勉強させてやってくれないか」


 四号は眼鏡の縁を手でつまみながら、ちょっと焦っている様子だ。


「よ、よろしくお願いします」

「おう、いいぞ。ならお茶でも汲んで来てくれないか?」

「了解しました」


 後はロイドにお任せして、ふぅ……いいよな、こういうの。


 青年少女が自分の苦手とぶつかって、乗り越えて成長していく姿は見ていて気持ちがいい。


 元居た場所に戻ると、一号の姿が消えていた。


「一号は?」


 二号と六号の仲良し二人組に尋ねると、二号が口早に答えた。


「一号は先ほどゼルエル様と共に外出なされました」


 六号が次いでそれと、と伝言する。


「シーラ様とミリア様のお二人が才蔵様をお待ちです」

「え? 二人はどこに?」

「工場を見学すると言っておられました」


 ほーん、なら探すか。


 勝手知ったるドワーフの工場。

 おっさんはシーラとミリアであれば、あそこに行くだろうと思った。


 それは工場を抜けた先の裏庭部分にある、聖剣の貯蔵庫。


 かつて英雄マルコが振るっていた剣の一つが、ロイドの工場に残されていた。


 工場の裏口を抜けて庭に向かうと、貯蔵庫の扉が破壊されていた。


 おっさんはその光景に血の気が引いたね。


「おぉおおおおおおおおおい! 誰が扉壊したんだ!?」

「「っ!?」」


 室内に怒鳴り込むと、飾られた聖剣を前にした二人が肩をはねさせる。


 ミリアは暗がりの先にいたおっさんを見て。


「なんだおっさんか」


 そうです、私がおっさんです。


 シーラは事を理解したのか、すぐさま謝った。


「す、すみません、ちょっと異様な雰囲気を感じたので、それを確かめようとして」

「しょうがないなぁ、破壊された扉はおっさんが謝罪しておくよ」

「ごめんなさい才蔵さん」


 素直に謝るシーラとは対照的に、ミリアは周囲をきょろきょろと眺めている。


「凄い所だな、前時代的な品々とはいえ、業物がいっぱいある」

「ミリアはお目が高いな、おっさんにはわからないぞ」

「おっさんの目は節穴だからな」


 シーラはミリアの失礼な言葉に笑っていた。


「すみません、ですがミリアの言う通り凄い代物ばかりですね」

「なんでもこの工場は聖戦時に兵士達の武器を卸していた場所らしいな」

「ひょっとして工場主はバッカス様ですか?」


 えっと、ごめん、誰それ?


 シーラが口にした名前に首を傾げていると、後ろから怒鳴り声がした。


「おい!! 何してるんだ!」

「ふぁ! ってなんだロイドか」

「……ここは許可なく入って欲しくない所なんだけどな?」

「ごめん! 二人はおっさんの妻子で、ちょっと変わった趣味してるんだ」


 ロイドはじろりとシーラとミリアのことを観察する。


「エルフと、魔法使いの娘か?」

「私は魔法使いの娘などではないよ、ちょっと訳ありのおっさんの娘だ」


 そうです、私が訳ありのおっさんです。


「ここには何の用だ?」


 ロイドの問いに、ミリアはシーラの手を引っ張って外に向かった。

 ロイドは無言で立ち去る二人をよく思わなかったようだ。


「おっさんの家庭も複雑そうだな」

「まぁね」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ