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第011話 おっさん、ドワーフと出会う


 ミリアはタケノコ堀りの試練を、チートで突破していた。


 おっさんはミリアが造ったゴーレムの肌をぺちぺちと叩く。


「こいつ、動くぞ」

「ゴーレムだしな」

「いいなー、おっさんもミリアみたいな芸当できるようになりたいなー」


 と言うと、ミリアは片眉を吊り上げる。


「皮肉? 私はおっさんのスキルの方が万能だと思ってる」


 と、お互いにないものねだりの応酬をしていた時だった。

 おっさんの背後で竹林の音があがった。


 サァァァ……風に揺られて笹の葉で自然のBGMを鳴らす。


 するとミリアはおっさんの背後をじっと凝視していた。


「おっさん、後ろにドワーフがいるぞ」


 へ? あ、本当だ。

 先ほどの小人のおっさんが、思ったよりも至近距離でたたずんでいる。


「……タケノコ、要ります?」


 と聞くと、ドワーフは頷いた。

 だからおっさん、慎重にドワーフの目の前にタケノコを一つ放って。


 ドワーフが拾おうとした隙を狙って、上から覆いかぶさるように羽交い締めにした。


「離せ! 離せぇ!」

「破ぁ! 暴れるな! お前にはちょっと用がある! はっはぁー!」


 ここでおっさんの一句。


 竹林で、おっさんと小人の、大乱闘。


 おっさんに捕らえられたドワーフは仲間を呼んだらしく。


「何してるんだ!」

「これだから人間は!」


 小人はおっさんのすねを蹴り、太ももを蹴り、足を崩させると。


「おー! ら!」


 小さな体躯で器用にジャンプし、ドロップキックを顔面にヒットさせる。


 こうしておっさんはドワーフに敗北した。


 しかし、世の中こういうことわざもある。

 昨日の敵は明日の友。


 鼻血を出しながら倒れているおっさんに、捕らえられていたドワーフは手を差し伸べた。


「長老、人間にあわれを掛けたっていいことないぞ」


 長老?


「お前はドワーフの長老なのか?」

「ああ、質問し返すようでなんだが」

「なんだ?」


 おっさんに慈悲を掛けたドワーフは、おっさんとミリアを交互に見る。


「どうして、あんたらは一緒にいるんだ?」

「ん?」


 今一要領を得れない。


「家族、だから?」

「あんたとあの娘が家族? 冗談だろ?」

「冗談じゃないが?」


 そこに、ドワーフに用事があると言っていたゼルエルが駆け付け。

 上からすたっとアネッタも姿を見せる。


 ゼルエルはドワーフの長老を睨みつけるよう見詰めていた。


「久しぶりだな」


 ドワーフ達はゼルエルの姿を見て。


「ゼルエルだ! 狂乱武技士のゼルエルだ!」

「と言うことはこっちにいる女は剣王のアネッタか?」


 アネッタはドワーフに魅惑の挨拶をすると、ゼルエルは笑った。


「お前ら、ちょっと格好が違うだけでそれかよ。相変わらずだな」


 ゼルエルの不敵な笑みに、集ったドワーフの一人が叫んだ。


「喜ぶな! こいつらは約束を違えた、言うなれば裏切り者だ!」


 その言葉にゼルエルとアネッタの二人は無表情になる。

 しかし、ドワーフの長老はその言葉を手で押し黙らせる。


「何しに戻って来た、貴様らは魔王を倒し、平和を手にするまで戻ってくることはなかったはずじゃ?」


 長老の台詞に、他のドワーフは感応する。

 ゼルエルは皮肉な感じで片頬笑んで。


「ちょっと、忘れ物を取りに戻ったんだよ。魔王は倒したには倒したが」


 隣にいたアネッタがゼルエルの言葉に続けて言う。


「長老、もう一度ノーム様に会わせてくれない?」

「何故だ」

「賢者エグゼからの依頼よ」


 ノーム? 土の精霊と呼ばれるノームかな?

 おっさんは一人で場違いな空気を覚えている。


 長老は黙って思案していると、どこからともなくエグゼ様が現れた。


「期待に応えられず、おめおめと出戻って、わしらとしてもくじくたる思いだが……長老よ、今一度わしらに力を貸して欲しい。お主らだとて空に掛かっているあの暗雲をどうにかしたいであろう?」


 土の精霊ノームに会えば、あの暗雲はどうにかできるのか。


 ならば、今一要領を得てないおっさんも全力で頼もう。


 土下座――日本人ならこの格好での嘆願は、無下にできない!


「お願いします! どうかあなた達の力をお貸しください! 俺にできることがあればなんだってしますから!」


 だからどうか、どうかお慈悲を!

 長老は数秒黙ったあと、静かに告げた。


「……いいだろう」


 そしたら当然のように彼に反対するドワーフがいたので、おっさんはそのドワーフの後ろに回ってきゅ。っと首を絞めた。


「長老の言うことは絶対だ! 卑しい下僕共は黙って長老に従えばいいんだよしゃおら!」


 ここでおっさんの一句。


 宿敵よ、さっきのお返しだ、しゃーおらー。


 おっさんが反対派のドワーフとボコり合う中、長老はじっとミリアを見ていた気がする。


 娘に卑しい視線を送る長老に、おっさんついカッとなって。


 その場にあった手ごろな石をブン! と長老に投げつけた。


 そしたら思いのほかクリーンヒットしちゃって、長老は血しぶきをあげて倒れた


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