第010話 ミリアのゴーレム
タケノコ掘りが出来るスポットに到着っと。
おっさんは背負ったカゴにいれたクワをシーラとミリアの二人に渡す。
シーラは素直に受け取るのだが、ミリアはぼけっとしている。
「ミリアは心ここに在らずって感じだけど、熱でもあるのか?」
「ちょっと珍しいものを見つけた」
ミリアはそう言い、竹林の中を指で差す。
指し示された方向を見ると、小さなおっさんがいる。
あいや、誤解がないよう言い直せば、髭を生やした小人がいたんだ。
「あれ何?」
「ドワーフ族。土の妖精、大地の語り手なんて言われてる」
小人はおっさん達に見つかったのを察したのか、すぐさま姿を消した。
その様子を見守っていたゼルエルは、後頭部を手でかいては。
「チ、また逃したか」
「物騒なものいいだなぁ、ドワーフに何か用でもあるのか?」
「説明すると長いんだが、ドワーフ族に話があるんだよ」
ふむふむ。
しかしあの様子を見る限り、ドワーフ族はおっさん達を歓迎してないみたいだ。
敵なのかどうなのかさえ判らず、未確認生物を見るような目をしていた。
ゼルエルはため息を吐く。
「まぁいいや、いずれ接触できる……気がする」
せやな。
それはそうとタケノコタケノコ。
タケノコ掘りを経験したことがあるおっさんはクワをジャキーンと装備。
両手には白い軍手、上半身は白い長そでのスポーツインナーの上にポロシャツ。
下半身は厚手のジーパンと、誰よりやる気まんまんだ。
竹林のおかげで柔らかくなった山肌に覆い隠されたタケノコを鷹の目で見つけ。
「いいかミリア」
「うん」
愛娘のミリアに父親の威厳をみせつけちゃる。
「とりあえず、これがタケノコだ」
「うん」
手にしたクワで見つけたタケノコの周囲の土を少し掘る。
サク、サク、サク。
「おおー、立派だな、でな? ここからがポイントで」
「うん」
タケノコには背と腹があって、そっている方が背で。
その逆が腹、掘るときは腹の方にクワを当てる感じで。
「こう! こう! こーう!」
という訳。
「うん」
「じゃあ、ミリアもタケノコ探してやってみろ」
「え?」
え?
「何も私の手を汚す必要はないんじゃない?」
「いやいや、ミリア、ミリアちゃん、さん」
おっさんはミリアを諭すため、土に片膝つけて視線の高さを合わせる。
「おっさんは家族の中で一番早く死んじゃうしさ」
「不吉なこと言うな」
「ばっきゃろー、これは逃れられない現実だ」
「だとして、おっさんは何が言いたいの?」
「タケノコの一つ掘れないで、この先どうやって生きていくつもりだ」
おっさんは立ち上がり、ミリアがタケノコ獲る姿を見れば安心できるのになー。と口にした。
そしたらミリアはクソでかため息を吐いて、指をパチンと鳴らす。
オーガ山の大地が剥れあがって、土の下からモンスターが出てきた。
「おお……おぉおおおおおおおおおおおお!?」
「ゴーレムだよ、私の魔力を山に共鳴させて造った」
ゴーレム――岩の巨人がおっさんの隣に並ぶと、ミリアからクワを受け取っていた。
ゴーレムは物々しい感じでクワを振り上げ、ズドン! と周囲の土を隆起させる。
すると生えていた竹がメキメキィ! と倒れ、タケノコもいくつか転がっていた。
ミリアはそのタケノコを手に取って。
「私はこの力をつかって誰の指図を受けずとも生きていける。以上」
あ、はい。
さすがミリアパイセンっす、パネェっす。