好きな人からの告白
俺はこの日のことを、きっと一生忘れない。
もしかしたら、人生最後の瞬間に今のことを思い出すかもしれない。
「俺、お兄さんのことが好きなんです」
そう言ってきたのは、俺の弟の友達だった。
冷やかしなんかする奴じゃない。それはよくわかっている。
からかっているわけではなく、本気なのだろう。
その証拠に、頬を赤らめてそっぽ向いてしまっている。
俺はこの日の、この瞬間を絶対に忘れないだろう。
なぜなら、今日は人生で初めて告白されたのだ。
それも、叶うことなんてないと思っていた、ずっと大好きだった人に告白されたのだから。
「えっと、俺でよければ、よろしくお願いします…?」
語尾が疑問形になってしまったのは、やっぱり男からの告白に男が答えるのは少し疑ってしまうからだ。
本当に男同士で付き合うことになって大丈夫なのだろうかとか、もしかしたら思いを伝えられたら満足と思っているのなら、堂々と付き合おうなんて言ってしまうとかえって気を使わせてしまうと申し訳ない。
と、ここまで考えて気づいた。
俺は、好きですと言われただけで、付き合ってくださいとは言われていない。
俺にだって年上としてのプライドがある。だから、言い直すことにした。
「ごめん、待った!えっとね、
気持ち、すごく嬉しいよ。だから、もし良かったら俺と付き合ってもらえますか?」
なんだこれは。年上らしさどころか、人として恥をかいた気分だ。
言い直した意味なかった。むしろ悪化させてしまった。
穴があったら入りたいとはまさにこのことだろう。
しかし、唯一救われた点があるとするのなら、彼も今、かなりテンパっていたことだろう。
「い、いいんですか!
お、俺なんかでよければよ、よろしく、お願いします!」
こうして、俺たちは晴れて付き合うことになったのだった。