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自分が書きたいものを書いていない。それに気づいたタイミングで『なったろう小説コンテスト』の一次通過が発表になった。
ほとんどの応募作は落選し、ひとつだけ、一次選考を通過していた。
それは、初の短編作品の『千年も恋は続かない ~すれ違い幼馴染の不仕合せな結論~』だったのだ。
正直なところ、書いた本人としては、短編の3作品のうち、もっとも力が入っていないもの、という認識だった。それが一次通過で、他のふたつはもちろん、長編連載も全て落選だ。
このサイト『小説家になったろう』でもっとも評価された短編は『NTR幼馴染フォールインヘル ~あんなに好きだったあの子が気持ち悪い~』である。これは構成を一生懸命考えたし、アイデアも振り絞った自信作だった。
もうひとつは、『気の弱い元カレの未練旅断ち ~オレが前を向くには、あいつにぶちまけるしかない~』で、小説を書く、という技術面では、この作品が一番よくできたと自分では考えていた。
ところが、実際の賞レースでは、一番ダメだろうと思っていたものが一次通過なのだ。
おれは、自分の力量と自分の見る目を疑うだけでなく、それよりも、他者からの評価は受け止めるが、それをあまり気にしないことも大切なんじゃないかと思い始めていた。
ネット小説は山ほど存在していて、おれが書いたものが読んでもらえるかどうかは、わからない。多くの人に読んでもらえるようになるには、ランキングも重要なのだろう。
しかし、そこにこだわりすぎて、自分が書きたいものを書かないのは本末転倒なのだ。
書きたいものを書く。その基本を大切にする。
その上で、書き上がったものを応募したり、公開したりして、そこで受けた評価をただありのまま受け止める。
それで、いいんじゃないか?
そう考えたおれは、今、自分が書きたいものを書き、それをまた、「評価シート」がもらえる小説賞に応募しようと、そう、考えたのだった。




