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「な、なんで……なんで読んでもらえないんだ……」
再びおれは考え続けた。
今、書いている現実世界恋愛ジャンルの作品は、連載で長編だ。
以前、書いていた『ボイ伝』は異世界転生転移ファンタジージャンルだった。
……読者層が違うのか? いや、でも、おれはどっちでも読むんだが?
こういう時は、自分を基準にしてはならない。
「あ……そうか……」
自分を基準にして考えると、おれには、恋愛経験が……いや、恋愛における成功体験が、存在しない。それで現実世界の恋愛を書こうなどと、妄想が過ぎる。おれにあるのは失敗体験……つまり、失恋体験だけだ。
恋愛を描くにはリアリティがなさすぎたのだ。おれにとって甘い恋愛などもはやファンタジー。『ボイ伝』のような異世界でしかもファンタジーなゲーム世界なら、好きに書いてもいいだろうが、現実世界恋愛ではそうもいかないのではないか。
そこに思考が辿り着いた時、おれは閃いたのだ。
「失恋ものを……書く……」
そこには、おれの中のリアリティが存在していた。それでいて『なったろう』読者のニーズに答えつつ、読んでもらうためには……。
「失恋で……幼馴染なら、すれ違い、か……そして、長編連載じゃなくて、短編で……」
そうしておれは現実世界恋愛短編小説『千年も恋は続かない ~すれ違い幼馴染の不仕合せな結論~』を書いたのだった。




