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必死で書き上げ、そして、燃え尽き、さらにはコンテストも落選。
素人作家は、所詮は素人。
筆力不足で当たり前。
趣味なら……てきとーに書けばいいのに、まだおれは指が動かない。
「はは、おれ、書くのって、趣味じゃなかったんかな……」
少年の頃。
小説家になりたいと思った。
でも、成長するにつれて、なれるのだろうか、なれるのはごく一部の人だけなんじゃないかと言い訳して、いつしかあきらめた、夢、だった。
野球選手になりたいとか、サッカー選手になりたいとかと同じで、はるかな、夢。
大人になって。
普通に仕事で収入を得ていて、生活ができて。
だから、趣味なんだって思って。
それが予想外に高いポイントをもらえたもんだから、調子に乗ってしまって。
おれも、なれるんじゃないか。本当に小説家になれるのかもしれない、と。
自分に期待してしまって。
……今、どこか、せつなく、苦しい気持ちがある。
「あれだけ必死になって書いても、ダメなものはダメ、か……」
ただ、ただ、空しかった。心の中が空っぽで、何も入ってこない。もちろん、涙も出ない。
ノパソの前に座ったまま、全身の力が抜けていくのを感じた。
9月21日。
今日も、いつものように『小説家になったろう』にログインして、ホームを開く。
「あれ……?」
左上に、『感想がありますよー』の通知が。
「感想……?」
ほんの少し、手が震えながら、クリックする。
それは『ボイ伝』への感想だった。
『面白かった』
短い、感想。
でも、その短い感想に。
なぜか本気で泣けた。
「……ははは。もう完結して、半年以上、経ってんじゃん。今頃感想とか、マジ、ウケるわー」
口から出るのは強がりだと自分でもわかっていた。強がりだと自分でも思いながら、誰も聞いてないのに口にしていた。でも、どうしても涙が止まらない。ノパソの画面が少し見にくい。
マウスをゆっくり動かし、感想をくれた人の名前をクリックする。
その人の自分ページが開き、すぐにブックマークが見えた。
そこには『ボイ伝』があった。
「ブクマしてくれてんじゃん……」
さらにクリックする。評価のところだ。
その人は『ボイ伝』に星を5つ、入れてくれていた。
「ブクマと星5で最高評価ポイントくれてるって、ブルジョワか。マジで、今さら、なんなんだろうなぁ……」
その、なんとも言えない、星の輝きに。
気が済むまで泣いて。
それからおれは。
すっかりほこりをかぶってしまった、アイデアノートを引っ張り出す。
「これ、残して死んだら、間違いなく黒歴史ノートに確定だよな……」
ぽきり、ぽきり、と右手で左手を、左手で右手を潰すようにして、指の音を鳴らしてみる。
……どうやら、この指は、再び動き出そうとしているようだった。
「おれの戦いはこれからだ! なったろう、で最強になってやる!」
新たな決意とともに、新作への挑戦が今、始まろうとしていた。
どこかの、誰かの、ポイントに支えられて……。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。




