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書けなくなったおれは、読専へと転向した。
ひたすら読んだ。読み漁った。
ベッドの上でも。食事中も。通勤電車の中も。昼休みも。仕事中……はさすがに我慢したものの、トイレの中でもタブレットを開いた。
そうして、およそ、半年が過ぎていった。
8月。
ふと気になって、『なったろうコン』をチェックする。
一次選考は8月上旬となっていた。
連絡がくるとか、そういうのがよくわからなかったので、上旬の最後となる10日に、問い合わせを送り、一次選考がいつなのかを聞いた。
13日ということだったので、「中旬じゃん」と思いながらも、楽しみに待った。
応募作品の中で、『ボイ伝』のポイントはトップ20に入っていた。
そして、13日。
「……おお、通過しとる」
喜びが湧いてくる。『ボイ伝』は一次選考を通過したのだ。
気持ちが上向きになってくる。現金なものだ。
応募総数14271作品の中から、1841作品、全体の約13%に入ったのだ。本当に嬉しかった。
しかし、9月15日。
あっさりと夢は破れる。
1841作品の中から、132作品に『ボイ伝』は残れなかった。二次選考は通過できなかったのだ。
「落ちたんだ~………………」
何度見直しても、『ボイ伝』はそこに載っていない。
「……ポイントに関係なく選考、か。確かに5万ポイント超えで、二次通過もできないんじゃ、ポイントとか関係ねーか」
ふぅ、とため息が出る。
「やっぱ、内容がナイんだろうな。ボインだけに……」
気分はマリアナ海溝の底まで沈んでいくような気がした。




