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完結直前の2月15日の段階で。
累計PV8,125,438アクセス、総合評価 39,832 pt、ブックマーク登録 8,397 件となっていた『ボインの伝説』だった。
いつもの読専の知人から『おい! この高ポイントからの新作投下しとかんと! 今なら次の作品に読者つながってくるんだぞ?』というメッセージが入ったが、おれの指はもう動かなかった。そのアドバイスは間違いなく正しいのだろう。だが、動かなかった。動けなかった。
燃え尽きていた。
そう、燃え尽きていたのだ。
それは『ボイ伝ロス』とも呼べる現象だった。
予想外に5ケタポイントを超えてしまった、趣味で書いていた小説に、およそ2か月間ののめり込むような創作という頭脳労働。いや、金銭は発生していないので労働とは言えないかもしれない。
だが、1月中はそのほとんどが毎日複数話更新を続けるなど、ランキングチャレンジでのめり込み過ぎたのだろう。
本当に、燃え尽きてしまったのだ。
合計で100万文字を超える作品。
詰め込んだエネルギーはいったいエナドリ何本分か、想像もつかない。何度、背中に翼が生えたことだろう。
趣味、というにはあまりにものめり込み過ぎてしまった。
まさに燃え尽き症候群。
そして、何も書けないまま、忙しい仕事に追われ……。
3月。『小説家になったろう』のトップページで、ある募集を見つける。
通称『なったろうコン』の募集だった。
タグを追加してコンテストに応募する。
運がいいことに、どなたか読者様による推しがあったらしく、作品がピックアップもされ、コンテストのウェブサイトで紹介された。
「まさか、趣味が、趣味じゃなくなる日が、来るのか……」
そんな夢を見る。それも、割と本気で。
なぜなら5ケタに届くポイントをもらうことができたのだから。
それが自信につながっていた。それと同時に、燃え尽きた原因でもあった。
4月。
年度末の忙しさを乗り越え、久しぶりに思いついた新作を投下。
いつもの読専の知人から『だから言ったじゃねぇーか。もう遅いんだって』と。
新作のポイントは全く伸びなかった。
そして、買い集めていた名作『本ラブの大出世』の新刊が発売され、じっくり味わうために、改めて1巻から、全て読み直していく。
そうすると、おれは自分の書いた『ボイ伝』がいかに浅く、軽いものだったのかと思い知る。『本ラブの大出世』はラノベの最高峰であり、コミカライズやアニメ化はもちろん達成している。描かれている世界はどこまでも深く、遠い。まさに日本のポリー・ハッターだ。
3回、全巻読み直しをしたところで。
ふと気がつけば、おれは自分では1文字も書くことができなくなっていた。
わかってはいたのだ。
所詮は、自分が素人でしかないんだってことくらいは。




