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92 天井川

イスカンダル・クーク湖の『かすみあみ』の現場に到着する。

結構、長期間放置していたので、いろいろかっている。


「な!!なんじゃこりゃあ!!!!」

「だいぶ放置していたからな。コカトリス以外も結構捕まっているな。」


逃したほうが良い鳥は逃し、とりあえず20羽を厳選して処理させる。

流石に手慣れたもので目を小さな吹き矢で射抜いて仕留めていく。


「なるほど、吹き矢を使うのか。素人では無理だな。」


「いや、イオリのだんな、こんな生け捕り状態のコカトリスなら誰でも処理出来るって。直接触らなきゃいいだけだから。」


「それが結構、難しいものさ。素人にはな。」


「しかし驚いたな。こんなので生け捕りし放題とは…イオリのだんなが考えたのか?こんな罠、見たことねえぞ。こんなに隙間だらけなのに何故逃げられない??」


「俺の元いた世界の昔の誰かが考えた罠だ。覚えている範囲で再現しただけで、本物はもっと凄い。品種によっては絶滅に瀕するので国から使用禁止になったしろものだ。隙間だらけなのに逃げられないのは鳥の習性を利用している。鳥は離陸する時に蹴る反動で飛び立つのだが、ユルユルに張った糸なので、蹴っても蹴っても反動がなくて飛び立てないのだ。」


「…そんな仕組みになっているのか。わざとユルユルのスコスコにする…頭の良い奴は居るもんだな…」


「で、どうだ、引き受けてくれるか。引き受けてくれるならこの林周辺に罠を増設してしっかり稼げるようにしておくが。今貼ってあるのは自分達の食料にするためで、小規模だからな。」


「…ああ。コレ見たら引き受けねえ手はねえよ。イオリのだんなはコカトリスを普通に食っているのか?」


「うむ。食っているが。他にもナーガも普通に食っているぞ。魚は自宅の池に放し飼いにして、その都度必要なだけ捕れたてを焼いている。そうだ、一度家に遊びに来ると良い、子供も連れて風呂に入りに来い。」


「…噂以上のぶっ飛び方だな。風呂なんて高級貴族しか持ってねえぞ。捕れたての魚は浜でしか食えねえし…」


「そうだ、魚といえば魚も代理人に任せたんだが、すぐ近くだから顔合わせしておこう。ミルセリクという漁師の顔役だがミエリキと同等の条件で引き受けてもらっている。…あそこに竿さおが沢山打ち込んであるだろ。あれが魚用の罠でエリと云うのだが、あれがあれば魚も生け捕りし放題なのだ。」


呆気にとられているミエリキを浜に連れていく。

タライで魚を運んでいる漁師にミルセリクを呼んできてもらう。


「此方は狩人のミエリキで林の『かすみあみ』を任せることになった。で此方が漁師の顔役のミルセリクだ。エリを任せている。お互い助け合って仲良くしてくれ。」


顔合わせをすませて帰路につく。

これでかなり贅沢が普及するだろう。現世の満足度が上がれば宗教に救いを求める人間も減る。過激な宗派が伸びる余地は激減するはずだ。

ナーガ罠はまだ任せられない。ヘルマンド川はマーマナとのランデブー地点だからな。代理人を完全に味方に取り込んで、奴隷契約でもしてからでないと…。


「…イオリのだんな。その……3人とも嫁なんだよな。」

「ん?ああ、そうだが。」


「前のお2人は奴隷でもあるんだよな。」

「ああ、そのとおりだ。…ダナイデは外国のお姫様だがな。」


「外国…そうか、外国のお姫様。だが、正室では無い…」

ダナイデは押しかけですの。」


「おしかけ?」

「はい、ダナイデが勝手にお邪魔して居座っちゃいましたの(笑)」

「ダナイデ様、問題ありません。合理的です。」


前のミドリがかさず割り込んでくる。うむ。偉いぞ。

ミエリキもそれ以上は何も言わない。なにか考えているようだが…


程なくジャラランバードに戻ってくる。

コカトリスを子供にも食わせるように言い含めてミエリキと分かれる。

ミエリキも大分慣れたのか何も言わずに納得したようだ。

なかなか実直で良い奴だなミエリキ。

ダナイデ様も歓迎していたので、間違いないだろう。


さて、次は戦況が動いているかどうかだが…


旦那イオリさま、エフソスは今日の夕方、陽が落ちる直前にヌーリスの城を奇襲するようです。」


「陽が落ちる直前…ははあ、急な撤退命令を日没直後に出させると深夜に伝令が着く。オリーミ公主力に深夜の撤退を強いて大混乱するように仕組むつもりだな…」


「なるほど、エフソス様は合理的で容赦ないですね、ご主人様。」


ミドリよ、変な部分で意気投合しないでくれ…ミドリも一応亜人なんだから…


「主さま、良かったねー、夕方ならエフソス様の晴れ姿がみれるね~~」

「そうだな、それは俺もちょっと楽しみにしている。」


いくさ神の血を引くニケの闘いぶりは、やはり興味が湧くよな…


「あら、あら。旦那イオリさまも、珍しく好戦的ですこと。」


好戦的というより、楽しみにしていた演劇を見に行く観客の気分だけど。

どうせぶっ壊れるのは壊しても惜しくない施設だし。



他人ひとごとのような会話をしているうちにヌーリスの街が見えてくる。

無意味に高い尖塔ベルクフリートが天に突き出しているのが見える。


「ヌーリスの城までゆっくり行こうか。まだ時間が有るしな。ナール川の堤防の上から観戦するのが良いかな。ナール川も見てみたいし。」


「解ったー。じゃあ、ナール川だから街の北西の角の船着き場から堤防に上がるねーー」


ナール川の堤防に上がっていく。結構な高さまで嵩増しされている。


「…うわぁ…コレはヤバいな。完全に天井川状態だ。」

「ご主人様、天井川??」


「堤防で無理に氾濫抑え込んでいるので川底に土砂が積み上がっている。周辺の地面より、川底のほうがかなり上だろうな。早めに流路を付け替えて、かわぞこしゅんせつしないと、そのうち決壊して大災害になるぞ。」


旦那イオリさまが以前に視察された時、曇ったお顔でした。この堤防を切る攻め方も気が付かれていたからなのですね。」


やっぱ、ダナイデ様には気づかれていたんだな。

…もう黙っている意味が無くなったから言った訳だ。


「ご主人様、それは…実行しないほうが合理的では…」


「ああ。俺はやる気はないけどな。でも、いずれ決壊するぞ。」


…領主の首をえて、さらに土木工事させる…なーんて、いくらなんでも俺の手に余るわ。お姉さんなら…考えるまでもないな。城に向けて決壊させて貴族もろとも城ごと綺麗サッパリ…

でも、決壊を完全にコントロールするのは無理だし。何かの理由つけて、住民まるごと避難とか…無いな。この時代、土地への土着具合は強固だから動くわけがない。……ヌーリス自体を衰退させて自然と他の街が中心都市になるように持っていくとか?…これなら時間かかるけど誘導できなくもないか。オリーミ公は元々没落してもらうコースだった。過去例もある。中国の戦国時代の趙の都『かんたん』は時代とともに中心都市から外れて、元は地方都市だった『ぎょう』が中心都市に格上げになった。


…『ぎょう』といえば西せいもん ひょうの川の神の故事があったっけな。人身御供の儀式なあ。オリーミ公の没落利用してヌーリスに呪われた地に成ってもらうか?


「あー、主さま、またなにか悪い事考えてる顔してる~~」


え、いや、テイルよ…コレは結構良いことだと思うんだが、ダメか?




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