85 追加登録
黒の海の水面を見ながらボンヤリ考えているうちに、ヘルマンド川を上り始める。
今日もコカトリスの群れが、Vの字編隊を造って飛んでゆく…
「この川があるので助かるな。」
「マーマナちゃんと会えたのも、この川のおかげです。」
ヘルマンド川にも用意した『柴漬け漁』の仕掛けを沈めておく。
ゆくゆくはもっと増やさないとな。
「塩湖につながる川は無いのかな。」
「エフタール王国から塩湖に繋がる川はありません。」
「それは残念…」
塩湖からの流出河川は有るハズがないし。水運で塩湖と結ぶ事はできないな。せっかく入手可能になったメガロドンのキャビアを、どうやって輸送したものか…エフタール王国と魔物が和解できれば、隊商を依頼もできるだろうけど。当面はグリフォンのマンディーに空輸してもらうしか無いか…
「イオリー、だいたい此処ぐらいでいいかなー?」
「ぁ、もうそんなに来ていたのか。有難う、マーマナ。」
上陸してマーマナに別れを告げる。
皆でマーマナが見えなくなるまで見送る。
「もう、夕方が近いが、転移者ギルドに寄る程度の時間は有るだろう。」
「主さま、それじゃギルドに行くよーー」
『虹の架け橋』の連中、居ると良いのだが。女3人だ、どうせお喋り7割、執筆3割程度でしか進まないだろう。最初に手を打っておきたい。
花札や株札は、紙が貴重品な世界なので、木札のほうが良さそうだな。
木札の株札で『手本引』流行らせたら、後続の転移者は卒倒するかもな。
サイコロはなにかの角で造るか。角ならヤスリで簡単に削れる。
贅沢品は物品ならジャラランバードのサールトかコルストンに掛け合うか。
食品はどうするかな。商人ギルドとか有りそうだな。
「テイルは面倒な話は退屈だろうから、近所で日向ぼっこしていていいよ。」
「解ったー。主さまが出てきたら匂いで分かるとこに居るねー。」
「ミドリとダナイデは、付いて来て。そのほうが話が早いから。」
久しぶりの転移者ギルドだ。
いつものお姉さんが暇そうにしている。夕方だしな…
「久方ぶりに戻りました、伊織ですよ…」
「あら、お久しぶり。ドコ行ってたんですか。」
「ちょっとノンビリ北の方に観光旅行してきたよ。」
「おう、伊織、久しぶりじゃねえか。」
「マスターは変わらないね。」
「で、今日はそこの美女を見せびらかしに来たのか?」
「ぁ? ああ、後ろの連れは、俺の嫁だから。」
(おい、聞いたか…嫁だとよ…)
(ありえねー…)
(しかし、あの金髪、見たこと無いな…)
(ああ、あの身のこなしは大貴族の係累っぽい…)
(しかし、あんな美女がなんで。たかがC級の伊織に…)
「ほう?で、パーテイー登録はどうする、追加しておくか?」
「旦那さま、私も入れてくださいね。」
(『 だ ん な さ ま 』 だとよ…)
(くぅ~、たまんねえな。)
「追加メンバーは『ダナイデ』だな。出身その他は…聞くだけ野暮か。何処かの貴族のお忍びでいいよな。伊織の正室で…」
「いえ、マスターさま。私は側室ですのよ。」
マスターが俺を見る。確認したいようだ。
「うむ。マスター。正室はこっちのミドリだ。」
「ぁ…ぁぁ…ミドリが正室で、以下、側室…で、いいんだな?」
「そうだ。ところで商人ギルド?とか有るのかな。マスター。」
「商人ギルドは大都市にある。一番近いのはジャラランバードだ。」
やはりギルドが有るのか。魚やキャビアの生物はジャラランバードで捌くのが良さそうだ。
「そうか、ジャラランバードな。
…ん? そう言えば今日は活気がないな。ココ。」
「伊織、オリーミ公が大軍かき集めて北東の前線に投入している。いまさら壊滅した綿花畑が復活出来るわけでもないのに、無駄な事を…と、オリーミ公とソリの会わない貴族達が揶揄しているけどな。そのためB以上は出払っているし、Cでも腕に覚えの有る連中が結構志願して出ている。」
なるほどな。Cまでかき集めたか。まあ、大差ない……あの連中は…来てないな。
「そうか。マスターは、『虹の架け橋』という連中知っているよな。」
「…?…ぁあー、思い出した。あの万年Dのな。忘れていたわ。」
「こんど連中が来たら、『残り福』の伊織が仕事を頼みたい…と伝言してくれ。
連中は俺の家を知っているので伝言だけしてもらえれば良い。」
「伝言は引き受けた…だが、伊織があの連中に頼む仕事などあるのか?」
「…それが有るんだな。まあ、何でも使いよう…ってことさ。」
「そうか。しかし18の小娘が何故ああも捻くれるのか…理解できんわ。」
なっ…18…マスター、それ嘘だぞ。最低でも23は越えているんだが…。
まあいい、またセクハラがどうたらウザい。聞かなかったことにしよう。
「じゃあ、マスター頼むわ。今度、なにか差し入れ持ってくるよ。」
「おう、宛にしないで待っているぜ。」
…
…
「ご主人様、彼女達が家に来るのなら、あまり遠方には出かけられませんね。」
「そうだな。だが、結構作業が有るので、どうせ暫くは家に居る事になる。」
「旦那さま、木札とサイコロ造りですね。」
「うん。それぞれモデルを俺が一個造る。
それを見て、ダナイデは木札、ミドリはサイコロを頼みたい。」
「テイルは何するのかなーー」
「テイルは出来上がった商品の販売ルートが定まれば、商品の運搬だな。
うちのメンバーで機動力が有るのはテイルだけだ。期待しているよ。」
尻尾が元気に振れている。テイルは素直で良い。
そう言えば、初対面のとき『虹の架け橋』の連中をこき下ろしていたな。
よほど臭かったのか。
今度会った時、風呂に入らせるか。




