71 孫子の競馬
「戦の話はこれぐらいにして、マンディーさん、勾玉造らせました。」
「ん?不思議な形をしておる…首に掛けるものであるかの?」
「お気に召せばよいのですが。私の故郷の出土品です。」
「我が貰って良いのか?出土品なら、イオリのご先祖様の宝であろう。」
「私のお仲間には、皆一品プレゼントしておりますので。」
ミドリが髪留めを、テイルが尻尾リボンをマンディーに見せる。
「左様か。ならば有り難く戴いておく。イオリ殿。…仲間か、我も…」
「マンディー…。早くしないと7番目になってしまいますよ。」
「7番目?…ダナイデ? 7番という事はないであろうが?」
7番…だと? おぃ、俺にも訳わからないが?
「まあよい、ではイオリ殿、早速皆に伝えておく。先手が打てて助かった。」
首に勾玉をぶら下げたグリフォンのマンディーも飛んでいく。
やれやれ、これで一段落ついたな…
「では、テイルちゃん、今夜は私がブラシしましょう。」
「ダナイデさまが?やったー、テイルにも良い匂いが染み込むかなぁ~~」
「染み込むように、たーーっぷり、時間掛けてブラシしましょうね。」
ダナイデ様がテイルを連れて風呂場の台に行ってしまう。
ミドリが話があるようで、何かいいたそうにしている。
「どうした、ミドリ。もう誰も居ないから何言っても大丈夫だぞ。」
「ご主人様、ミドリが正室では不足でしょうか。」
なっ!!
「いきなり、何を云う。むしろ逆だが。
頓に最近はミドリが正室で良かったと思っているが。」
「ご主人様。ミドリは正室の努めを全うしたく思います。」
ミドリが真っ直ぐに見つめてくる。こ、コレは!!
「…う、うむ、…是非に及ばず…」
………
……
…
小柄なミドリを上に抱いて、久々に頭が真っ白だ。
ミドリももう落ち着いて、静かな息遣いをしている。
夕方、ダナイデ様がミドリと話していたのはこういう事だったか。
流石3億5千万歳のやり手婆、段取りが良い。
「ダナイデ様に、感謝しないとな…」
「はい、ご主人様。後ろが支えていますよ…と言われて目が醒めました。」
うむ。テイル…マーマナ…
マーマナは何歳からOKなんだろうか?
「ご主人様、戦の事なのですが、魔物側はどうしても勝てないのですか?」
「ん?ミドリは魔物に勝ってほしいのかな?」
「いえ…絶対勝てない闘いをさせるなんて、ひどい創造主様だと。」
まあ、結果がお約束の設定だからな。逆からみれば理不尽の極みだ。
だが…ミドリには正室特権で、伝えておくか…
「ミドリ。実は魔物側が勝つ方法は有る。」
「有るのですか!!ご主人様!!」
「うん。正室だから教えておく。内緒だぞ…」
戦争だから、いくつかの部隊ができる。仮に、敵味方3部隊ずつとしよう。
人間側が S級 A級 B級 の3部隊
魔物側が S級 A級 B級 の3部隊 とする。
S級は絶対勝つが、わざわざS級を当てる義理はない。
S級にはB級を当てて、S級でA級を、A級でB級に勝てば良い。
この2勝1負を繰り返せば人間の支配地域はどんどん縮小する。
最後はS級の周囲以外の全てが魔物の支配地になって、人間側が負ける。
「大昔の軍略家『孫臏』って人が提案したと云われている作戦だ。」
「ご主人様、確かにこれなら勝てますね…」
「だけど、魔物側が圧勝すると別の問題がでてくるんだ…それは…」
俺のいた世界の小説で、極稀に魔物側が勝つものもある。
所謂バッドエンド物だ。
だけど、そういう場合、魔物だけが生き残った世界の描写を見たことがない。
人間側が負けました…チャンチャン…で終わっている。
つまり、
「魔物だけの世界が出来た瞬間、創造主が世界をリセットする可能性が高い…。」
「そんな、酷い…」
「酷いよな。だから白黒付けさせずにダラダラやらせておくのが一番いいのさ。」




