表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/191

70 作戦(4)

《 伊織、なんだか面白い展開になったわね(笑) 》

ーお姉さん、他人事だと思って面白がってるでしょう。ー


《 ドリュアスやニケは美人よね。マーマナちゃんも可愛いわ。 》

ーはい、はい、…だから?ー


《 グリフォンのマンディーさん(笑) ぐぁんばってネー(笑) 》

ーお姉さん、笑うのはご自由ですけど、ダナイデ様には筒抜けですよ。ー


《 ぁ…さよならー 》

何しに出てきたんだよ…ったく。


………

……


家に帰りつき、夜までの時間を各々過ごす。

ミドリは何やらダナイデ様と話し込んでいる。エフソス様は屋上に。

池の縁で寝転び、沈む夕日を眺めているとテイルが膝枕をしてくれる。


「テイルにしてもらうのは初めてだな。」…固めの膝枕が新鮮だ。


神権・聖ハスモーン唯一神帝国…直接見ておきたい処だが無理だな。

聞くまでもなく、かなり遠方のようだ。代わりになる物は…


人間イオリ、マンディーがもうすぐ来ますよ。」


屋上のエフソス様から声が掛かる。

皆でいつもの足湯へ移動してマンディーを待つ。


「待たせたのう、イオリ殿。夜しか来れぬのがもどかしいわい。」

「お呼び立てしてすみません、マンディーさん。」

「ぬっ、ニケのエフソスではないか、何故 伊織家ココに…」

いおりがお願いしました。最近お近づきになりまして。」


このクラスの大御所は皆顔 馴染なじみなんだな。長生きだもんな。


「…いや、遅かれ早かれ、エフソスの目には止まったであろうな…」

「当然です。むしろマンディーが人間イオリと繋がりがあるほうが意外ですよ。」


マンディーさん、まだエフソス様を戦力化できてない感じか。

愚直なマンディーさんでは、尖った個性のエフソス様は扱いにくい…と。


「マンディーさん、オリーミ公爵が倍近い大動員を掛けました。」

「なに?イオリ殿、そんなことをして来るのか、あ奴は…」

「おそらく最先頭はセイコ・サオリでしょうが、これだけ厚い兵力ですのでキッチリ前線を構築して容易には後方を攪乱させてくれないと思います。」


「そうなると斜め前からしか足止めできぬが、それでは…」

「ジワジワ、押されますね、マンディーさん。」


人間イオリ、そのセイコ・サオリとやらをニケが叩くのですか?」

いえ、それは最悪です。そもそも、勇者と云うのは…」


この機会に勇者について説明しておく。

勇者も当初はさほど強くない。が、強敵と戦う度に加速度的に強くなる。そして最終的に勇者が敗北することは絶対に無い。幾度も危険な目に会いながら、からくもギリギリで感動的な勝利を得て、ついには魔王を打ち倒す。そういう『設定をされた者』…それが勇者なのだ。この設定はこの世界を造った者の意思であるのでニケどころか、ヒュドラやドラゴンでも、ただ々セイコ・サオリを鍛え上げる事にしかならない…と。


「………」


重い沈黙が場を支配する。魔物側にすれば死刑宣告に等しい。

だが、これは皆に徹底して周知してもらわないと闘いようがない。


「それに例外は無いのですか、旦那イオリさま。」

「有りません。ダナイデさん。幾多の小説しんわが皆そうなっているのです。」


「………」


「ですが、この世界に魔王は居ません。そこに付け入る隙があります。」

「どういう意味なのです?人間イオリ

「それは…」


魔王が居るということは絶対倒されてはいけない総大将が居るという事になる。なのに絶対負けない勇者が存在する。ひたすら魔王を勇者が付け狙えば早晩魔王が倒されて人間側が圧勝し世界は人間に蹂躙されてしまうのが避けられない。しかし、魔王が居なければ総大将が曖昧で誰を倒せば最終的勝利になるのか誰にもわからない。勇者が攻めて来ても守るべき大将がいないので、蜘蛛の子を散らすように逃げれば良いだけだ。


「なるほど。人間イオリは永久に引き分けに持ち込むが良い…と。」

「はいエフソス様。元居た世界の用語ですが、『千日手せんにちて』狙いと申します。」


「勇者の事は理解した。だが、倍の大軍をどう対処するかのう、イオリ殿。」

「こうすれば如何でしょう…」


作戦を説明する。

前線はグリフォンのマンディーさんの案のとおり、遅延しつつジワジワ押させておく。前回の事があるので、突出しての包囲などはしてこないだろうから被害を最小に抑えて、ある程度自陣に引き込む。数日引き込んで人間側の物資をそこそこ食い潰させた頃合いに、オリーミ公の居城を奇襲する。攻め落とす必要はない。辻斬りのように1航過だけで離脱する。目標はやたら高い尖塔ベルクフリートと2番目に高い居館だ。今日実際に見てきたが張りぼてのような、薄い造りなので尖塔ベルクフリートは一撃で傾くだろう。居館は一撃して脅かせば十分だ。


「居城を奇襲されたオリーミ公爵が、大慌てでセイコ・サオリなり子飼いの精鋭部隊なりを、根こそぎ引き上げさせて自らの護衛を命じるでしょうね。」


「ほほーぅ、その辻斬り役をニケにと云うのですね。」


「はい。

この役は高速機動と遠距離攻撃を兼ね備えたニケのエフソス様しかかないません。」

「気に入りました、人間イオリ。任せておきなさい。」


「…なっ。…エフソス、良いのか。グリフォンが幾度頼んでも動かぬ、うぬが…」


「ふ。ただの力任せの乱闘など不味くて食べれませんわ。

エフソス人間イオリの策のような、美味ないくさを待ち望んでいたのです。

エフソスが出る頃合いの繋ぎは、マンディー任せましたよ。」


言い捨ててニケのエフソス様は飛んで行ってしまった。


「お見事ですわ、旦那イオリ様。」

「…全くだわい。いつもながらの奇策じゃな、イオリ殿。」

「あら、マンディー。そうではなくて…はぁ…まだまだですね。マンディー。」

「?はて、なにか間違いが有ったか…?」


ダナイデ様は、この作戦の肝がニケのエフソスをその気にさせる事だと正確に見抜いているようだ。やはりダナイデ様は只者ではない。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ