69 雄とは
「私にも戦の一コマを実体験してみよ…と申されますか。」
「エフソス様の能力が必要です。勿論、戦の鍵を握る名場面です。」
ダナイデ様が下を向き笑いを堪えている。ニケの扱い方は間違っていないようだ。
「…名場面…ですか。話ぐらいなら、聞くことも吝ではないですよ。」
「では今夜、グリフォンのマンディーさんも来られるので、詳細はその時に。」
「ならば、私も束の間ですがご一緒させて戴きましょう。」
俺の正面にニケのエフソス様が座る。羽は背中に収納されて見えなくなる。
アスリートのような引き締まった細身の肉体の美女だ。
ピンと張り詰めた氷像を彷彿させる雰囲気は、かなり近寄り難いものがある。
「エフソス、お久しぶりですね。200年振りぐらいでしょうか。」
「そうね、ダナイデ。貴方もこの人間に興味があったのね。」
「興味ではなくて、恩義ですのよ。」
「恩義?ですか。にしても、ダナイデが森から出て人間と共に居るとは。」
「ふふ。エフソスも同じでは。魔物とも滅多な事で席を同じくしないのに。」
2人の話を、俺もミドリも黙って聞き入っている。やはり知り合いだったようだ。
「ダナイデ様~、エフソス様とお友達なのかなーー」
「お友達はどうでしょう?古くからのご近所さん…かしらね。テイルさん。」
ナイスだ、テイル。エフソス様の性格をもっと知りたい。
「しかし変わった組み合わせですね。人間の下に、ドワーフ、獣人、精霊。」
「エフソス様~、ここに居ないけどセイレーンも居るんだよー」
「エフソス。メガロドンの長も人間と会いたがっています。」
「…人間はただ一人のイオリだけ…ですか。でも皆雌だから問題ないですけど。」
? 雄が2人居ると不味いのか ?
「エフソス様、我家にはマンディーさんも頻繁に来られますが。」
「それが何か?マンディーも雌ではありませんか。」
「え、え!!マンディーさん、雌だったんですか!!」
ビックリしてダナイデ様を振り返る。
「あら、お伝えしていませんでしたか。マンディーも勿論雌ですよ、旦那さま。」
ダナイデ様が教えてくれる。
そもそも魔物にしろ精霊にしろ、殆どの個体は雌であると。
雄が発生するのは繁殖の目的か、群れの長が雌同士で争そって決まらない場合で滅多に生まれてこない。たとえ生まれてきても、労働や作業、狩猟をするのは雌の仕事である…と云う。
ミツバチやライオンの社会のような感じなのか…
人間社会に争いが絶えないのは雄の個体が多すぎるからなのかも…。
「で、ダナイデ。群れに同行しているという事は決めているのですね。」
「ええ。…たぶん、マンディーも。エフソスこそどうなのです?」
「私はまだ、見知って間がないから。私を満足させてくれますか?人間は。」
一部、いや、かなり理解し難い部分があるのだけど…
「あまり一時に事を運ぶのは旦那さまもお困りですわ。」
「ご主人様、何かお困りなのでしょうか?」
ミドリまでそう言っちゃうのね…。
彼女の論理的帰結は…何も困る事など無いではないか…な訳なんだ。
考えても仕方がない。
とにかく、エフソス様の能力を借りて今回の闘いを乗り切る事に専念しよう。




