67 ヌーリスの街
「ご主人様、川は北東から南西に街を掠めて流れています。」
「よく知っているな、ミドリ。」
「はい、以前に本で読みました。王国の街なら、だいたい判ります。」
なるほど、ミドリの知識が多いのは本好きの影響か。
「では、川の様子も念のため見ておこうか。」
「お城はもう良いのですか?ご主人様。」
「ああ。城と言っても形だけで、事実上ただの大きな家だからな。」
「そうなのですか?立派なお城なのに…」
ヌーリス北西を流れる川はナール川と云うらしい。
街の北西に船着き場が設けられており、そこから川 縁まで出る。
「結構大きな川だな。水量も豊富で水運で発展した街なのかな。」
「ご主人様、ヌーリスは古い街でこの船着き場の名前もヌーリスです。」
洛陽みたいな感じか。すると黄河同様に…
「ミドリ、この川はよく氾濫とかも有ったのではないのかな。」
「はい、十数年ごとに氾濫があり、被害も出ています。」
「やはりか。この高い堤防は、その都度堤防を嵩上げしてきた訳だな。」
川幅も広くて浚渫は無理なのだろう。
流路を街の南東に付け替えるとかは誰も考えなかったのか。
「だが、この手は最後の手段で使いたくないな…」
「旦那さま…。」
ダナイデ様に独り言を聞かれたか。
まあいい。彼女に隠し事は無理な感じだし、恐らく彼女も誰にも言うまい。
「ミドリ、ナール川も最後は黒の海に流れ着くのかな?」
「はい、最後はそうですが、結構蛇行しているので海までは遠いです。」
舟艇機動で予想外の兵力展開や大量補給の恐れは小さいか。
「よし、だいたい判った。ミドリ、テイル、そろそろ帰ろうか。
帰りにジャラランバードに寄って行こう。欲しい物があれば買うぞ。」
「主さま~、じゃあ、ダナイデさまにもカチューシャ造ってーーー。」
ミドリも頷いている。なんだ、皆同じ事考えて居たのか。
「3人とも同じ事を考えていたんだな。
ダナイデさんは冠があるので腕輪がいいかもな。」
「旦那さま。そのようなお気遣いは…」
「ダナイデ様、『残り福』の仲間は皆が一つ戴いています。
ダナイデ様も一つ戴かれるのが合理的です。」
「そういう事です、ダナイデさん。」
ダナイデ様の膝枕でジャラランバードへ向かう。
コカトリスの一群が綺麗なV字型に並んで東の空に飛んで行く。
ーお姉さん、ご意見は?ー
《 大軍相手なら丁度いいじゃない。深く誘い込んで一網打尽よ。 》
やっぱりそう来るか。引っ張り込んで焦土作戦で補給を絶ち殲滅と。
いままでの人間側の戦い方からしても、たぶん成功するだろう。だが…
ーお姉さん、それは出来れば避けたいんだがー
《 どうして?攻撃して良いのは反撃される覚悟のある人だけ。全滅しても自業自得でしょ。この際、徹底的に叩いて悪い匂いを元から絶つのが正着でしょ。 》
ーご尤も。でもヴァーミトラ達まで巻き込むのはなあ。ー
《 イオリはホント、甘いわね。まあ、好きにしなさいな。 》
あ…言うだけ言ってきえちゃった…
「い、旦那さま。いまの方は……まさか、戦神さま?」
「あぁ…ダナイデ様には隠せないですね。あれは職業軍人の偽物です。」
「職業軍人…?」
「ええっと、そう、兵棋演習の専門家の偽物で、自分がこの世界に来た時に付いてきた指導霊みたいなものですね。」
「旦那さまには、そのようなお方が。」
「あのように過激なので、取扱注意ですが、頼りにはなります。」
ホント、あの性格がなぁ…




