59 進退
海藻も受け取りマーマナと別れ、イスカンダル・クーク湖へ向かう。
荷車には回収したナーガ罠も載っている。やはり、時々鈍く光っている。
これ、夜間照明に利用できないかな…家のインテリアとか…
オリーミ公領にはいると、動員された人々が目につくようになる。
「ご主人様、今日も沢山の人が…」
「ああ、まさか俺たちが足引っ張っているとは思わないよなあ…」
「でもご主人様の方法は、双方に被害少ないですし良いのでは?」
………
「ご主人様?」
「いや。そうでもないんだな。墨家のようなやり方だから根本的解決には遠い。」
「墨家 ?」
「決戦先送りで双方不完全燃焼だから、殴り合いたい連中の捌け口がない。」
「…」
「膨れ上がった戦力が維持できるうちに何処かにぶつけたいっ…て思うだろ。」
「それは…そうかもしれません。」
「このまま戦が萎んだら、ムロータ将軍は無能者と言い出す奴も出てくる。」
…本当は成算が見込めないから打ち切るのは立派な判断なんだけどな。
「まあ、結局はムロータ将軍次第かな。
闘い利あらず…として勇気をもって作戦中止をオリーミ公に進言できるか。
それとも、オリーミ公領の経済が崩壊するまで闘い続けるか。」
「でもご主人様、オリーミ公が戦果に飢えていたら、ムロータ将軍も戦うしか…」
「お、ミドリも解ってきたじゃないか。だが本当はそうでもない。
戦っている振りだけして実際には何もせず、一進一退です…と言っときゃ良い。」
「ご主人様、それはちょっと…」
「愚かな上司に抵抗するには、部下は面従腹背有るのみだよ。」
「…なにか、悲しいです。ご主人様…」
「まあ、ムロータ将軍がどういう人か、もうすぐわかるだろう。」
………
……
…
「主さま~~、クーク湖にもうすぐ着くよ~~テイルは水とお魚捕ればいいかな?。」
「うんテイル、頼む。ミドリは俺と『霞網』の具合を見に行こう。」
…
…
『霞網』に6羽のコカトリスがかかって藻掻いている。
さらに、もう1羽、見慣れない魔物が…
「おい、ミドリ…あれは何だ…??」
「あ…ご主人様…あれは『ニケ』…です…ありえない。」
「ニケ?」
「グリフォンさんと同格の、A級上位です。魔物というより精霊に近いお方です。」
「何?そんな強力な奴ならあんな罠余裕で壊せるじゃないか…」
「必殺の光の剣を放つとの言い伝えです。すでに我々は…」
「死地…にいるわけか。」
…
…
「それにしては、何もしてこないし、ぼんやりコッチ見てるだけだ…あ!」
これ、俺達がマーマナに接近した時の逆か。
ニケが俺達に接触しようとしているみたいだな。
しかし、こう、まるで神様か天使じゃないか。
大きな美しい羽。人型の美女。これは、是非、お近ずきにならねばなるまい…
「ミドリ、だまって一歩後ろからついてこい。」
…
…
「あのー ニケさん?」
…
…
5m程度まで寄って行って、穏やかに話しかける。脇の下は汗びっしょりだ…
…
…
「待って☆ ★ 」
「☆ ★ 戦☆ ★ 」
もうすこしだ…
「私はニケのエフソス。」
「エフソスさん。自分はイオリ、木村伊織です。」
「戦の匂いがしたので、来てみたら面白い物が有ったので待っていました。」
「ご主人様、ニケは戦いの気を食べると云われています…」
「ほほ、そこなドワーフ、良く知っていますね。
貴方が、イオリでしたか。最近ちょっと話題になっていますよ。此方でも。」
「噂…ですか…」
「そう。グリフォンのマンディーが変な人間に入れ込んでいる…って。」
そろっと寄って行って目の前で美しい姿を見る。
「あらあら、私の体に興味がお有り? ふふ。」
「いや、その、あまりの美しさに…つい…」
「噂どおり、変わった人間のようね。私も興味がわいたかも。」
「それは、光栄です…」
「では、また会うこともあるでしょう。じゃあ、お土産…」
ニケが左手を上げた瞬間、閃光が走り6羽のコカトリスの頭を貫く。
「これで直接コカトリスを捕れるわ。では、元気でね…」
…
…
…
飛び去って行く『ニケ』を呆然を見送る、俺とミドリ。
『ニケ』…のエフソス…かぁ…
「ご主人さま~~、お魚 荷車に積んだよ~~」
「テイル。つい先ほどまで、『ニケ』のエフソスさん…と話していた。」
「えー、いいなー。」
「ミドリ、『ニケ』って俺は初耳なんだが、結構居るのか?」
「ご主人様。『ニケ』を見たという人は、ここ100年は居ないはずです。」
「激レア種…か。」
「主さま~~、今度はテイルもエフソスさんに会いたいな~~」
エフソス…マーマナも綺麗だが、少女って感じだ。
エフソスはまさに絶世の美女だな。なのに戦の気を食うのか。
「あれが、光の剣か?」
「そうみたい…ですね。ご主人様。」
ミドリもまだ震えが止まらないようだ。
今日は、しっかりミドリを抱きしめて寝よう…




