55 作戦(2)
とりあえず、手振りで グリフォン にも温泉を勧めて見る…。
理解したようで グリフォン も入ってきたが足湯状態だ。
「先ずは言葉を学習しないとな…」
…
…
1時間ほど身振り手振りで意思疎通を試み、やっと言葉がわかるようになる。
「イオリ殿、深夜にすまぬ。待ちきれなくてな…」
「いえいえ、『グリフォン』さんとも言葉が通じてホッとしました。」
「魔物同士だと、強目に思念送れば意思疎通できるのだが。
我も声で話すのは何時以来であろうか…」
グリフォン が遠くを見るような仕草をしている。そこそこ御高齢なのかな?
「して、イオリ殿、先ほどの儀式は如何なる目的の…?」
「アレは私の故郷の特別なマッサージで、お互いの親睦も深められるのです。」
「テイル、とっても楽しかった~~」
「はい、ご主人様、とても良いマッサージです。」
お? コレ、毎晩行けるんでね?
「テイルはグリフォンさんとも、一緒にマッサージしてみたいな~~」
「是非、我もと言いたいが、この大きな体なのでな…残念だ…」
本気で言っている…みたいだな…意外とフレンドリーなのか?
「イオリ殿の群れは朗らかであるな。マーマナもよい巡り合わせを得たものだ。」
「マーマナはもう、大切な仲間ですからね。」
「ふむ…仲間…のう…」
ん? なんか微妙な間だな…
「して、メガロドンの事だが、どうであろうか?」
「そうですね、塩湖の水位を回復させるだけなら、簡単かと…」
「ほー、それは如何に?」
グリフォンに説明する。
要は塩湖に流れ込む河川の水を復元すれば良いのだ。
ならば塩湖に注ぎ込む河川の水を利用している綿花畑を壊しちゃえばいい。
だが綿花畑を直接攻撃すると戦闘になり、双方に被害が出る。それは良くない。
そこで塩湖の湖岸に有るカチンコチンに固まった塩を利用する。
塩湖に流れ込む川の遥か上流で塩の塊をばらまくのだ。
塩水の川にすれば水を大量に使用する綿花畑は壊滅する。
綿花畑を人間が放棄すれば、元通り全部の水が塩湖に注がれる…
いずれ時間とともに塩湖は元のサイズまで復活できるだろう…と。
「ふむう。確かにそのとおりだ。
成程、それで水位は回復するだろう…が、それだけでは…」
ん??
「まだ、何か問題があるのですか?グリフォンさん。」
「実は…」
ココ数年人間側からの攻勢が強く、魔物の領域がじわじわ押されている。
とくに最近は塩湖方面が激しく攻撃されている。
いまや塩湖そのものが人間の完全支配下に入りかねない状況という。
「我もワイバーンを動員して敵戦闘部隊の撃退を試みたのだ…。
だが逆に大きな損害を出して撤退させられてしまった。」
人間側の攻勢を挫く目途が立たない状況である。
このままでは結局塩湖ごとメガロドンも捕らえられてしまう…と云う。
「グリフォンさん、その戦闘部隊ってセイコ・サオリ率いるゴダン・オーディンでは?」
「イオリ、その通りだ。
セイコ・サオリが近接戦闘タイプなので、飛ぶワイバーンを当てたのだが。」
「それでも勝てない?」
「セイコ・サオリがとにかく強い。
ワイバーンに次々飛び移っては首を…我の失敗で大被害が。」
セイコ・サオリすげえ。壇ノ浦の義経かよ…
「グリフォンさん、基本的にセイコ・サオリとはマトモに闘わないほうが良いでしょう。」
「イオリよ、そうは言ってもセイコ・サオリが常に最前線に出てくるのだ。」
「こうしたら如何ですか?」
グリフォンに提案する。
セイコ・サオリがいくら強くとも人間だから、寝もするし食事も食べる。
それにセイコ・サオリは一人しか居ない。
昼間はセイコ・サオリの後方の広範囲をあちこちから遠距離攻撃する。
ダメージは与えられなくて良い。補給部隊に嫌がらせをするのが目的だ。
補給部隊が狙われれば、セイコ・サオリも補給部隊のカバーに入るしかない。
それで戦線は膠着するだろう。
膠着させて、夜に間欠的にセイコ・サオリの駐屯地へ遠距離攻撃を交代で行う。
毎晩つづければ、1週間を待たずして睡眠不足でセイコ・サオリと云えども撤退するはずだ…。
「ま、言うなれば、持将棋点数勝ち作戦…ですかね。」
って、俺こんなことやってて良いのかな?バレたら大事になりそうだ。
「そうか。そんな方法が有ったか。それなら双方に被害もほとんど出ないな。」
「そうですね。安全第一ですよ。」
実は、人間側の経済的損害は莫大なんだけど黙っとこ…。
資金が尽きれば戦争なんてやってられないんだしさ。
「イオリ殿、今夜は実に得る物が多かった。この礼はいずれ後日に。」
「いえいえ、それより私の事はご内密に。外れ者ですが、一応人間ですので。」
「委細承知…ではこれにて…」
…
…
…
「ご主人様、すばらしいです。論理的で合理的です。」
「主さま~~、これでメガロドンさんも助かるのね~~」
「たぶん、だけどなーーー…」
心でムロータ将軍に手をあわせる俺であった…




