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51 差し入れ

「早速魚も捕れたし、家に行こうか。」

「テイルは、子供の魚は食べたくないなーーー」

「子供の魚は、池に泳がせるだけな。見るだけにしておこうな。」

「ご主人様、それが合理的ですね。」


ミドリが少し立ち直ったようだ。あの衝撃からもう立ち直るとは。

意外と打たれ強いようだ…つまらん。


………

……


帰りの道中でも、沢山の軍人、物資、が我々の荷車リヤカーを追い越していく。

稀に、桶の魚を見て驚く騎乗の兵士が居る。


「なあ、この世界では魚を料理するギリギリ直前まで活かしておく事はしないのか?」

「ご主人様。そんな事、したくても出来ません。…ご主人様しか…」

「主さまー。漁師さんは銛で突いて、岸ですぐに焼いて市場に持って行くんだよー。

だから、市場の魚はあまり美味しくないのーー。

テイルはいつも湖岸まで走って行って、焼きたての魚を食べてたのーーー。」


ほーう…するとギルドに桶ごと持ち込むと意外に高額かもな。

ま、それはまたの機会でいいか。今日は皆食べたいだろうし。


「貴公…ちょっとよいか…」

「はい?」


この高級士官はたしか、ムロータ将軍…だったか。

部隊の動員にまで直接指揮に出ているのか。案外、こまめに働く人なんだな…


「その、桶の大きな魚はいちかギルドで売るのだろうか。

売るのであれば、ココで我に買わせてくれぬか?新鮮な魚があれば士気も上がるのでな。」


「すみません、ご覧のとおり、今はほんの5匹ほどしか持ち合わせがありません。

ご入用でしたら、後日大量に捕獲しておきますので、補給部隊を派遣いただければ。

あ…桶は自前でご用意くださいね。」


「む…うむ、それもそうであったな。流石さすがにそこまでの予算もない。

要らぬ事をお尋ねした。忘れてくれ…」

「ご主人様??」

「はは。どうやら、自分も食べてみたくなった…それだけだったようだな。」

「捕れたては美味しいからねーーー。テイルも絶対食べたいーーー」

「おう、食え、食え。今日の魚は全部自家用だからな。」

「ご主人様、私達どんどん贅沢に…貴族でもこのような食事は無理です。」


そういえば、清少納言だったかも鮭が旨い…とか、書き残しているぐらいだ。

貴族と言っても案外貧困な食生活なんだな。


「なんの、まだまだだぞ。俺の元の世界では、卵も生で食べることができたのだ。」

「ご主人様、それはダメです。病気になります。」

「ああ、普通ならダメだけどな。生でも食べられる方法があるんだよ。

ただ、この世界では俺でも生卵再現はむずかしいけどな…」


「主さま~~、家が見えてきたよ~~」


………

……


家に着いたので、直ぐに池に水を足す。ついでに小さい魚だけ池に放流する。

大きい魚をミドリとテイルがさばいて串を通し、早速火に掛けていく。


「この旨そうな匂いは…イオリさんか。その魚の匂い…(ごくっ)」

「親方、大きいのを5匹持って帰ってきたから、親方や職人さんも一緒に食べましょう。」

「いいのか?すまねえな。…おいてめえら、イオリさんから差し入れだ!」


やっぱ人間、旨い食い物には目がないからな。

獲れたての魚の次は鶏肉だな。やっぱ『から揚げ』かな。

でも、俺が一番好きなのはエビなんだよなあ…あ!エビも捕れるじゃないか。


「主さま~~もう焼けるよ~~」

「おう、まずは親方やお弟子さんに渡してくれ…」

「ご主人様も、コレを…」

「おう、…旨い!美味いなコレは。…ミドリ・テイル、二人も食べろ。」

「イオリさん、こりゃ旨めえなあー。こんなに魚が旨かったとは…」


………

……


家ももう出来るとのことで、宴のあとは宿に直行する。明日は引っ越しだ。

テイルは勿論ミドリも新鮮な魚を食べて、すっかり普通に戻ってしまった。


しまった…お父さんが抱きしめて慰める計画が…

仕方ない。せめて今夜は、魚になった気分で強めにツンツンしよう。






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