49 発注
ギルドを早々に出てアクセサリー店へ向かう。
あの店は仕事は確かだしセンスも良い。マーマナ用のプレゼントも、良い提案が有るだろう。
「あのアクセサリー店に行くぞ。マーマナに貰った真珠を3人お揃いのペンダントにしよう。」
「ご主人様、それは実に合理的な選択です。」
「テイル、4人お揃いがいいなーーー」
「マーマナ用の真珠がないからなあ。その代わり、マーマナにもアクセサリーを見繕う。」
………
……
…
「これは伊織さま、いつもありがとうございます。店主のサールトでございます。」
「おや?ここで名乗ったこと有ったかな?」
「商人仲間では、結構有名ですので。今 傾きの伊織様は日の出の勢い…と。」
「身内の商人相手なら良いが、貴族には内密にな…」
「勿論でございますとも。…で本日は?」
店主に3つの真珠をみせて、ペンダントの金具を依頼する。
「こ、これは驚きの逸品ですな。王侯貴族でもこのような真珠は見たこともありますまい。」
「遠い国の大切な友人からの戴き物なのだ。極秘案件だぞ…」
「わかりました。極秘…極秘…ですね。はい。
では、一個造りの実物合わせでガッチリホールドするプラチナ金具を特注しましょう。
鎖もプラチナがよろしいでしょう。華美な装飾は不要ですな。シンプルなほうが真珠が引き立ちます。」
「うむ。まかせる。それとは別にだが…魚人用のアクセサリーだが…」
サールトが云うには
魚人の国は遠い南国で、このエフタール王国に魚人はほとんど居ない。
だが使者の往来は有るし、魚人相手の贈答品の経験もある。
「魚人の場合は下半身のアクセサリーは邪魔になります。ブレスレットかカチューシャが良いでしょう。」
「なるほど、カチューシャなら体格が成長しても問題ないな。」
「海に潜っても錆びないように、ベースは金かプラチナが良いでしょう。
要所には陸でしか得られないブルーサファイアは如何でしょう。」
「…プラチナベースにブルーサファイア…うむ。見事だ。完成形が目に浮かぶようだ。
海の青に逆らわず自己主張しすぎない配慮も好ましいぞ。」
ペンダントの加工とカチューシャを発注して店を出る。
ミドリとテイルも満足の様子だ。
コレはお姉さんの功績も認めざるを得ないな。俺だけではココまでの配慮は出来なかっただろう。
「これで一件落着だな。帰って資材積んでイスカンダル・クーク湖に行こうか。」
「ご主人様、あの謎の罠を造るのですね。」
「桶も積んで、水も運ばないとな。」
「お魚もおいしいよねーーー」
…
…
「一つ考えがあるので、衣料品屋にも寄って、糸を買っていこう。」
「ご主人様、また何かなさるのですか?」
「ああ。ミドリは本どころではないな。俺と行動していると理解が追いつかないだろう、はは。」
「ご主人様…」
そうそう、その困惑の表情が、何気にそそるんだよな。
ミドリの色気に気が付いた俺だった。
………
……
…
「この店にある糸を一通り見せてもらえるかな…色はちょっと明色気味が良い。」
「一番細いのがコレで…次がコレ…」
「その、3番目のベージュ色が目立たなくて良さそうだな。それを250m頼む。」
「250m?そんなに沢山かえ?…ほいよ。」
…
…
「ご主人様、いったい何を…」
「今回は作り置きすると縺れやすいので、現場で造るから、現場でのお楽しみだ。」
棒を70本と桶も積んでイスカンダル・クーク湖へ向かう。
荷車はテイルに引いてもらい荷台で俺は膝枕だ。
道中、軍人やら動員されたA級B級のパーテイー、幾多の荷馬車とすれ違う。
オリーミ公爵の管理地なので騒然としている。
「オリーミ公はハスモーン唯一神教の教会を領内で認めるとの、ヴァーミトラ情報だ。」
「ご主人様、そうなのですか…可哀そうに…」
「ん?どういうことだ?」
「ハスモーン唯一神教は…」
ミドリの説明によると、
唯一神帝国では信者で無かろうが、有無を言わさず一軒一軒虱潰しに徴税していく。
帝国には異教徒など存在してはならぬ、よって異教徒など居ないという強引さだ。
だが実際には異教徒も多く、5割以上の民には毛嫌いされている。
オリーミ公領に教会が出来るなら、唯一神帝国のやり方をオリーミ公も認めているはず。
オリーミ公領でもすぐに強引な1割課税が教会によって始まるだろう…
「写らないTVでも取り立てに来る、どこぞの協会みたいな話だな。」
「TV??」
「ああ。俺の元居た世界でも、宗教ではないが、電波というものの押し売りが有ってな。
オリーミ公同様に国が認めているので、庶民は大迷惑していたんだよ。」
「これもですか。ご主人様の居た世界は怖い世界だったのですね。」
「なんの。ほかにも幾多の課税があってな。実質5公5民の状態だったな。」
「ご主人様、それで沢山の人が転移して、こちらに逃げてこられるのですね。」
なっ!…なるほど。…そういう解釈も成り立つのか。
この転移は神様の救済??…まさかな。




