47 真珠
「では、ミドリ来なさい。」
朝、髪留めを付ける前にミドリをブラシングする。
誰でもそうなのだが、若い娘はナチュラルに男を誘惑する匂い?が出ている。
逆に中高年になると男の意欲を著しく削ぐ ナニか? が出ている。
種の存続を維持するためのシステムなのだろう。
ミドリからも発散されている小娘ホルモンが俺の鼻をくすぐっている。
これから毎朝ブラシングも良いかもしれないな。
「よし、次はテイル来なさい。」
裸になったテイルを、まず頭から毛並みに沿ってブラシを当てていく。
順に背中まで当てる頃には、テイルはもう、トロトロに溶けている。
尻尾の手前まで当てると自らゴロンと転がって脇腹、さらに腹側まで…
最後は尻尾だ。
「ひっ…ぁっ…にゃ…」
尻尾の根本からブラシしていくついでに、尻尾を摘む。この反応がたまらん…
「今日は依頼もあった事だし、ナーガー罠10個回収してスライム狩るかな。」
「ご主人さま、では行きは空荷ですね。」
当然のように、自分だけさっさと荷車に乗る。
気分は立花道雪か大谷吉継と言いたいところだが、俺、最前線に出ないんだよなあ。
「んー、ミドリ、あの4~5匹 纏まって飛んで行くのは何かな??」
「ご主人様、あれはコカトリスですね。C級の魔物です。
C級ですが直接攻撃すると、触れた部分から毒を送り込んでくる面倒な相手です。」
「どうやって討伐するんだ、普通は。」
「腕のいいエルフがコカトリス用の特殊な細い矢で射抜くか、ライトニングの魔法を当てて麻痺させて捕獲しますが、そんな事ができるのは高位のパーテイーなのでコカトリスは大抵放置されています。」
この世界は鳥系の魔物相手でも、直接攻撃なんだな。
魚業でも網使ってなかったしな。
それなら、俺たちでコカトリスを狩るのもありかもな…
………
……
…
「どうだ?今日はマーマナは?」
「主さま!!居る、来てるよ来てる~~」
「ご主人様あそこ、草でみにくいですが、前に治療した同じ場所です。」
おお、居た居た。手を振っている。
テイルが俺を背に乗せて4本足でぶっ飛ばす。
「イオリーっ…」
「マーマナ、傷はどうだ、もう良くなったのか?」
「もう、大丈夫。ほら…」
「おお、もう全然傷跡もない。」
ミドリも追いついてきた。テイルと共にマーマナの話に聞き入っている。
セイレーン語を覚えようとしているのだろう。
「イオリにコレを。」
直径 2cmはある、大きな真珠だ。こんな綺麗な白銀色は見たことがない。
「二人にもコレとコレを。」
直径 1cmほどの真珠が1個づつ。
ミドリには白銀色に、淡い緑色の縞目入り、
テイルには白銀色に、淡い黄色の縞目入りだ。
「これは凄い。ありがとうな。絶対大切にするよ。」
ミドリとテイルも両手で大事そうに持って目を輝かせている。
マーマナはミドリとテイルのアクセサリーをぼんやり見ている。
《 「マーマナにも用意しようと思っている。」…よ!!早くっ!! 》
すかさずお姉さまの叱責が飛ぶ。
「こんど、マーマナにも用意しようと思っている。」
「ホント?嬉しい。」
「この付近に人が来ないように手を打っておいた。前よりは安全と思う。」
「良かった。」
「いつもは何処にいるの?」
「普段は…」
マーマナの棲家は黒の海に有るらしい。
だが幼生のうちは、淡水系の餌も捕る必要があるので川を上ってくるようだ。
「でも、海には大型の魔物が多くて危険なことはないのかな。」
「大丈夫。セイレーンはアスピドケローネと助け合っているから。
アスピドケローネは、大きな魚の魔物。」
なんでも、アスピドケローネの成体はクラーケンを食べるほどの大型らしい。
が、稚魚が小さく弱いのでセイレーンが小型の捕食者から稚魚を守ってやるとの事。
共生をしている訳だ。
こうして1時間ちかく雑談する。
ミドリもテイルもセイレーン語を、あらかた理解できたようだ。
「そうだ、マーマナ。お願いがあるんだが。
こんど会える時に、この袋に海藻をいっぱい詰め込んで採ってきてくれないかな。」
「海藻?わかった。いくらでも採れる。じゃあ、そろそろ帰る。」
「うん、気をつけてな…」
………
……
…
「凄いの貰っちゃったなあ…」
「ご主人さま、こんな大粒…」
「テイルもお話、解るように成れた~~」
「また合う事も約束したからな。」
「こんどはテイルもお話するーーー」
…
…
ナーガー罠10個を回収して、アミール湖へ向かう。
皆の足取りが軽い。気分はもう仲間なんだよな。
マーマナで盛り上がっているとすぐにアミール湖に到着する。
「さて、スライムも手早く狩り取ろうか。」
もう、二人に任せておけば退路の心配もない。荷台に寝転んでボンヤリ空を見上げる。
ココでもコカトリスが飛んでいる。その気で探せばそこら中に居るようだ。
放置され気味なので餌が許す限り繁殖しているのだろう。
そうだ、このでっかい真珠をお揃いのペンダントにして『残り福』のお守りにしよう。
傾き度がいや増して一石二鳥だしな。
海藻の目処も付いたし、マーマナを助けたのは大正解だった。




