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45 依頼

「…あ、…いや…ごほ。

伊織殿は部下の掌握もなかなかに個性的なようですな。結構なことだ。」

「将軍も配下を大切にされているとのお噂ですが?」

「そのつもりで居るのですが。近年は手柄争いを仕掛けてくる貴族の動きが激しく…

我が陣営も対抗上ある程度戦果を挙げる必要があり、部下に無理をさせてしまっています。」


ほう、噂どおり、意外とマトモな貴族なのかな。でも結局は犠牲もやむを得ないって感じだな。


「伊織さん、将軍は俺たちを酷使したりはしないんで警戒しなくて大丈夫だから。」


ヴァーミトラか。他のメンバーも頷いているし、まあ、そうなんだろう。


「伊織殿。我らは横の繋がりも重要と思っています。

たまたま協力する場面も意外とあるものですのでな。

うちのファルコンノートとも懇意にして頂ければお互い心強いかと。」


「ああ、そう言えば忘れてました。コレをお返ししときますね。」


先日拾っておいた、ナーガの核を詰め込んだ袋をヴァーミトラに差し出す。


「忘れ物ですよ。この前、ヘルマンド川の帰り道で拾っておきました。ナーガの核です。」

「え?伊織さん。あの時のを拾ってくれてたんですか。それをわざわざ…」

「ヴァーミトラさん、アレだけの数を凄いですね。さすがA級です。」

「グリフォンや、セイレーンはどうでした?」

「今はもう居ないみたいですね。

あ、遠くで強い魔物を感じたとテイルが言っていたのでグリフォンはまた来るかも。」


嘘は言ってないぞ…


グリフォンが不定期に来る事にしておけば、人払い出来るので利用しちゃおう。

マーマナとの逢い引き邪魔されたくないからな。


「そうかぁ~。ギルドにも警戒するように連絡しときます。伊織さん。」


そうそう、ヘルマンド川には当分来ないでね…


「伊織殿がすでにヴァーミトラと昵懇じっこんであったとは。これは話が早い。」

「ん??将軍…、話とは?…なにか具体的な案件でも?」

「実は伊織殿がスライムを大量に狩られたアミール湖は、我がドーストン家の管理地でしてな。

スライムを駆除したかったのですが、どうにも採算が合わず困っていたのです。」


ああ、スライムの報酬が安すぎて駆除に人が雇えなかったわけね。


「ところが、伊織殿が1日で数千匹を狩り取られたとヴァーミトラから聞きましてな。

お忙しいでしょうが、スライム狩りの頻度を上げて頂ければと、お願いしたかったのです。」


あー、そういうことね。やっと話が繋がったな。

ま、それくらいなら問題ない。どうせ時々スライムも狩る事だし。


「わかりました。それなら我々で出来るでしょう。目的は漁の再開ですね。」

「ええ。貴族は平民の生活を守る義務がありますでな。」


平民が居なきゃ徴税できないしな。ま、それは俺の元の世界でも同様だったが。

転移前ごろになると、上級国民とか呼ばれた現代版貴族が跋扈ばっこしていたしな。


「スライムは元々狩る予定でしたが、我々の狩り方が特殊でして。」


ファルコンノートの面々の目の色が真剣になる。

ふっ…そんな目をしたら、聞き出せるものでも聞き出せなくなるぞ。青いな。


「広範囲に一気に仕掛けるので、我々が狩りの時は危険なので近づかないでくださいね。」


「やはりそうですか。分かりました、ギルドにも告知しておきましょう。

まあ、スライムは採算が合わないので、他のパーテイーは来ないと思いますけど、一応は。」


確かに、他のパーテイーとは殆ど遭遇してないな。

『残り福』は隙間産業だからな。だが、だからこそ旨味もあるんだが。


「将軍、もう一つ提案ですが。

完全に狩り取らず奥の方に1/5ほど、スライム残しておきませんか?」

「ほう?それはまた何故に?」


「それは…」


将軍に説明する。

完全に狩り取ると生態系が変わってより強い魔物が住み着くなどの不測の事態も起こり得る。

また、スライムを餌にしていた魔物の餌がなくなって人を襲うようになるかもしれない。


「なるほどのう…いや、伊織殿、さすがですな。

そういう事であれば、奥の1/5は残しましょう。手前だけで十分漁ができますから。」


よしよし。

これで継続して適度な頻度でスライムで稼げるな。

獲物を狩り尽くすなど、愚か者のすることなんだよ。


「いや、今日は実に有意義でしたぞ、イオリ殿。これからもよしなに。」

「こちらこそ。今日はご馳走になりました。」


………

……


見張り台の上でアーミル将軍とファルコンノートの面々が手を振っている。

俺も軽く手を挙げて答礼しておく。

テイルは手も尻尾もブンブン振っている。テュロスとよほど気が合ったのだろう。

ミドリは…何か言いたそうだな…


「ミドリ、どうした?」

「ご主人様。スライム狩り取ってしまうのは、そんなに非合理的ですか?」

「はは、そんな事したら俺達の狩場が一つ減ってしまうだろ。それにだ…」


狡兎こうと死して走狗そうく煮らるー


侯爵家も確かにスライムが居るうちは『残り福』に無茶は言ってこないだろう。

だが、スライムを狩り尽くせばどうなるか怪しいものだ。

支配階級なんて、適当に屁理屈つけて下々に負担かけるのが仕事だ。


「元居た世界では、老人やら体の不自由な人やらをダシにして利権を量産していたぞ。

ほかにも環境保護やら教育やら貧困やらも、良く利権のダシにされていたな。

風俗 

ーこの世界で云えば売春宿だがー 

その風俗通いが教育の実態調査だとか公言する国の高官も居たな。」


「ご主人様のおられた世界は恐ろしい世界だったのですね…」

「ああ。魔物は居なかったが、一部の人間が魔物だったよ。」


全く、ミドリの膝枕でくつろげるこの世界のほうが、よほどマトモなのかもな。

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