44 聞き耳
石造りの頑丈な螺旋階段を上がり、客間に案内される。
アーミル将軍は質実剛健タイプのようで、華美な装飾はほとんど無い。
「将軍、この度はお招きに預かり恐れ入ります。」
「伊織殿、今日は非公式ゆえ、硬いことは抜きで行きましょう。
早速食べながら、ざっくばらんに雑談ということで…」
同席しているフアルコンノートの面々はその言葉で早速料理に手を出している。
いつもの事なのだろう。
ミドリもテイルも食べだしている。いいぞ、食え、食え、どんどん食っとけ。
「しかし、伊織殿。荷車には驚きましたぞ。噂どおりの破天荒ですなあ。」
「馬に乗れないもので。いつも荷車で移動してます。」
「建築中のご自宅も独特ですなあ。あの見張り台のような段など初めて見ました。」
「ああ、あれはそこのテイルの日光浴専用に造ってもらっています。」
テイルを見るとファルコンノート唯一の獣人相手に、なにやら話が盛り上がっているようだ。
…珍しいな。…自然と皆がテイルたちの話に聞き耳を立てている。
「テイルと同じ、獣人さんがいるんだ~~」
「私はテュロス。ヨロシクね、テイルさん。」
テュロスはテイルよりもパワータイプのようでガッシリした体格だな。
他のメンバーが皆エルフなので、唯一の前衛タイプのようだ。
「テイルさん、イオリさんってどんな人なの?」
「主さまは、すごく優しいの~~。同じものを食べて、同じものを着てるの~~。
それでねー、3人で一緒にお風呂に入って~、3人で一緒に寝るの~~。」
「そ、そーなんだー……は、は、は…」
ミドリ以外、皆俺の顔とテイルを見比べている。
フン、いまさらそれぐらいで動じることなど無いわ。32歳、離婚済を舐めるなよ。
「それでね、主さまとは時々、毛繕いの仕合っこもしてるんだよ~~ 。
ブラシっていう道具造ってくれてて、脇腹も尻尾も全身の毛繕いしてくれるの~~。」
「テ、テイルさん、それって…全身って…」
テュロスが真っ赤な顔で絶句している。
ヴァーミトラもアフロディーテもアーミル将軍も、顔ひきつらせて聞き入っている。
ミドリは…我関せずで黙々と酒を飲んでいるな、流石だ。
「そうそう、テイルねー、主さまのお嫁さんになるんだよ~~。
テイルが2番目のお嫁さんでー、隣のミドリちゃんが1番目のお嫁さんになるの~~」
横のミドリが大きく頷いている。ちょっとドヤ顔に見える。
「へー、じゃあ二人とも、奴隷から解放してもらえるんだねー。良かったじゃん。」
「嫌だ~、テュロスちゃん。何言ってるの~~
テイルもミドリちゃんも奴隷辞めたりしないよ~~
ずっと、ずーーーーっと、主さまの奴隷がいいの~~。お嫁さん奴隷になるんだよ~~」
ミドリとテイル以外の皆の表情に、もはや血の気がない。料理に手も付けず固まっている。
傾き足りないかと思ったが杞憂だったな。
テイルの効果は絶大だー。
でかしたテイル、おかげで完全に主導権が取れたぞ。




