42 『虹の架け橋』再び
水桶積んだ荷車でゴロゴロ建築現場まで帰って来るとなにやら揉めている。
「ちょっとー、あんた達が居ると、お風呂に入れないじゃないの。」
「そうよ、早く他所に行ってちょうだい。」
「覗きで訴えるわよ!」
あー、『虹の架け橋』の残り物3人組か。
「おい、行き遅れ3人組、親方の仕事の邪魔するんじゃねえぞー。」
「なっ!。なにが行き遅れよ。ふざけんな。」
「セクハラよ、セクハラ。恥ずかしくないの!」
こいつら、まだココの現実わかってねえんだな。
「ずえーんぜーん。恥ずかしいのはお前らだろ。
この世界じゃ10代で嫁にいくのが、あ た り ま え なんだよ。
23歳なんて、この世界じゃ押しも押されもしねえ、立派な行き遅れよ。」
ミドリとテイルが全力で頷いている。
後ろの職人がビックリしている。
転移者は子供時代の食糧事情が良いため実際より若く見えるので、23歳は驚きだろう。
「しかしお前ら、まだこっちの仲間出来てないのか。人望ねーなー。」
「それはっ…」
「は、白金貨1枚もする奴隷なんて買えるわけないじゃないのっ!」
プッ…自分の立場も解らず、ずっと高望みしてたのか。笑うわ…
「お前ら、婚活行き遅れの40代おばさんと同じ間違いしてやんの、解ってねえー(笑)
いいかー、ココの奴隷制度は買い手を売り手が値踏みしての変動相場制だ。
買い手の実力人望で価格が変わるんだよ。
白金貨1枚の値が付いたってことは、お前ら 一昨日 来いと言われたんだよ。」
こんどは職人たちが うんうん と頷いている。
「ここは元の世界のような、
『表向きの字面だけ男女平等、中身は男性差別の女性甘やかし』
は通用しねえ。奴隷が良い主を選別する実力社会だ。
女だから黙っていても男がサポートして当たり前…なーんて、ねーんだよ。」
「…じゃあ、なによ。あんたの、その奴隷二人の価格はいくらだったのよ。」
「この二人かぁー。」
ちらっとミドリとテイルを見る。
二人とも頷いている。
「この二人は銀貨35枚と30枚だ。」
(すっげー、たった銀貨35枚と30枚かー。俺達でも手が届きそうだ。)
(イオリさん、 奴隷商 にそんなに評価高かったのか…)
(親方が、久々に仕事引き受ける訳だぜ…)
「なっ…なんでそんなに安売りしてんのよ、あんた達馬鹿じゃないの!」
「うんにゃ、この二人の判断は大正解だぜ。なー、ミドリ。」
「はい、いつも贅沢許して戴いています。
髪の毛もこんなに綺麗に…服だってこんな上等の。お酒も飲み放題。」
いや、飲み放題までは…まあいい。
「テイルはどうだ?」
「主さまは、テイルと毛繕いのし合いっこ、してくれるの~~」
(おい、獣人が毛繕いって、…それ…)
(ああ、普通はねえ事だが全く無い訳じゃねえ。つまり、アレだ。間違いねえ。)
「わかったか。いい加減、ココの常識に馴染め。
いつまでも小汚ねえ転移者丸出しの服着てるんじゃねえよ。」
「…お、お風呂は…」
「サービス期間は終了ー。あの時混浴しときゃ入れたのになー。残念でしたー。」
「お、覚えときなさい、絶対成り上がって見返してやるからっ!」
おーおー、死なない程度に頑張れや…はースッキリしたー。
「あ、親方、仕事の邪魔しちゃって、すみません。」
「イオリさん、転移者に見えねえよ。丸っきり地の人間だぜ。」
「俺はこっちの世界のほうが、性にあってるみたいだから。」
「嬉しいこと、言ってくれるねえ。」
「話変わるが、親方、池はもう使えるかな?」
「おう、外回りは出来てるぜ。あとは内装だけだ。」
「じゃあ、早速水張りにかかるわ。イスカンダル・クーク湖の水取ってきたから。」
ミドリとテイルに桶の水を流させる。
まだまだ全然足りないが、ちゃんと漏れることなく溜まっている。
「おー、親方、良い感じになってるねー。あと5回も運べば立派な池になるよ。」
「わざわざクーク湖から持ってこなくちゃ駄目なのかい?」
「ああ、あそこの魚を放流するつもりだからな。同じ水でないとダメなんだ。」
「ああ、忘れてた。イオリさん、手紙預かってるぜ。
ドーストン侯爵のアーミル将軍からだ。将軍本人が来たから腰抜かしたぜ。」
あー、とうとう来ちゃったのか。
わざわざ本人が足運んで万が一にも断れないように、先手打ってきたわけだ。
「仕方ない、中央突破するぞ。」
「?ご主人様…??」
「ちゅうおうとっぱ?って、どうするの~~」
…
…
「すまん。独り言だ。あの3人と会うと、どーもなー……。」
ふと見ると、ミドリが池の縁に腰掛けて膝ポンポンしている。
ミドリは良い子だ。




