37 接触
………
……
…
さぁて…ヘルマンド川、いよいよだな。
「テイル…。まずは周囲に他の人族が来てない事を確認してくれ。」
肝心なところで邪魔されたら終わりだからな…
「…んー…大丈夫。だーれもいないよー。強い魔物も居ないみたい。」
「セイレーンは見つけられそうか?」
「んー…あっちかな~。」
…お、当たりだな。居た居た…
「よし、わざと風上から回り込んで堂々と近づくぞ。ミドリは風上に回り込んだら待機だ。」
「はい、ご主人様。」
セイレーンが居るのでナーガも逃げて居ないようだな…
ナーガが居ると面倒だと思ったが杞憂だったようだ…
「よし、ここからが本番だ。耳栓してゆっくり行くぞ。」
大きな草の陰にそれらしいのが居る。岩の上で座っているようだ。
やはり水に入れないので困っているのか。
「よし、ここからならマトモに見える。セイレーンが俺たちを見つけるまで待つ…」
テイルに聞こえるわけがないが、手振りで制して止まらせる。
まだ気がつかないか。敵意がないと不思議と気が付かないんだよな…
犬呼ぶときの要領で念をおくりこむとしよう。
元の世界では、散歩中、信号待ちで待っているワンコに念送り込んで振り向かせたものだ。
…
…
…
お、振り向いた。やっと気が付いたか…まずはボンヤリ見つめて…
セイレーンの肩の力が少し抜けるまで待って…
ちょっと、手を下から前にだしつつ、しゃがんで…
(上から出すと、攻撃行動と勘違いするんだよな…ワンコでも…)
よし、…こいつら何がしたいんだ?…という顔になったな…
ゆーーーーっくり、1歩…また1歩…穏やかに声かけながら…
あと5m
ここで止まって話しかける…
∞∞∞∞~~∞∞∞∞~~∞∞∞∞~~∞∞∞∞~~
なにか音だしているようだな。これが頭狂わせる声って奴なんだろう…
???
音が効かない上、俺たちが襲うでも逃げるでもないので、困惑しているな。
いまなら話かけられそうだ…耳栓外してっと…
「えー、せ、セイレーンさん?」
「今日は、穏やかな小春日和ですね…」
???
「お話したいんだけど、いいかな…」
「☆ ★ ○ ● ◎」
「言ってること、わかるかなー」
「な★ ○ ● ◎」
「俺たちは敵じゃないよ…」
「なα★ ○ Σ◎◎◎ 」
お、もう少しでいけそう…
「それ、痛そうだね…」
「な★ ★ に★ た。」
「私を殺すの…」
「殺さないよ。助けたいんだ。」
やったぞ。セイレーン語?学習!!
「…敵ではなさそうだけど…。人間は信用できない。」
「俺も人間信用してないよ。」
「?? 変な人間…」
「俺が信用しているのは、今は、仲間の2人だけかな。」
「その女と。ふたり?…あの遠くの女?」
「そう。もうすぐ二人とも俺の嫁になるんだ。いいだろ。」
「前に見た…」
「あの時、セイレーンさんも襲ってこなかった。」
「あなた達は何もしなかった。」
「矢、痛そう…」
「痛い…。でも、抜くと血がでて死んじゃう。」
「傷塞がないと水に帰れないよね。」
「…」
…
…
「俺なら、助けられると思う。」
「!!助け…る??……本気なの??」
「たぶん、…今なら助かる…」
…
…
…
「……………たすけて………」
「じゃあ、ちょっと触ったりするけど我慢してな。」
「…わかった。」
「矢抜く時痛いけどゴメンな。で、すぐにコレ塗るから。」
「…わかった。やって…」
テイルを呼び耳栓はずさせる。
「テイルが矢抜いてくれるか。俺では一気に抜けないかもしれん。
抜いたらすぐに俺が樹液ぬって塞ぐ。」
「わかった~。お話できるように成ったんだ~~いいな~~~」
「よし、せーのー…」
ズポッ…うわ、深い傷だ、こりゃ痛いわ…
「よっと…ペタペタペタ…このまま暫く固まるまで抑えるから。」
「…うん…わかった…う…うう…」
すげー。俺、セイレーンに触ってるやん…
やっぱ、美人だなー。でもまだ幼い感じもあるなあ。
マスターが言ってたように幼体なんだろうな。
ワンコでも子犬のほうが手懐けやすいから、幼体で助かったかも。
「どう?痛いか?」
「痛いけど、前より楽になった。…血も…もう出てない。」
透き通るような声がたまらん。
丸見えのおっぱい…プリプリ…
半分魚に見えたけど、間近にじっくり見たら足の部分だけ魚なんだ。
おヘソもあるし…その下の、…ナニもちゃんとある…卵生じゃなく、胎生なんだ。
「主さま…」
…
…
「主さまぁ~~」
「ん?どうした、テイル…」
「もう樹液固まってるはずだよ~~」
う…テイルはこういうとこがなぁ…しょうがない。
「どうかな。手離してみるよ。」
…
…
「塞がってるみたいだね。」
「…止まってる。」
「泳げそう?」
セイレーンが川に潜ってグルグル泳いでいる…
暫くして頭だけ出した。
「大丈夫、泳いでも血でてない。」
「良かったな。俺はイオリ。木村伊織だ。」
「私は、マーマナ。」
「俺達は当分、ここに時々来る。また会えるか?」
「また来る。イオリ…覚えた。攻撃もしない。」
「近所に誰もいないときに、また会おうな。」
「……」
………
……
…
行っちゃったか。
「行っちゃったね~~」
「ああ。」
「ご主人様…」
「ミドリか…。あのセイレーンはマーマナという名前だそうだ。」
「マーマナちゃん♪」
「もっと話してみたかったな。」
なんかやり終えてすっかり抜け殻みたいな感じだ。
賢者タイム…
「ご主人様、帰りましょうか。」
ああ、今日はおとなしく帰ろう…
お姉さんもおとなしく見守ってくれていたしな…




