35 遭遇
…あれなら魞漁ができそうだな。
棒はいくらでもあるし、竹でもいい。あとは網か。べつに網でなくてもいいんだ。
魚が逃げられないように袋状に仕掛けておくだけだから…
「テイルちゃん、交代してくれるかなー。」
「うん、いいよー、どうしたのー」
「ご主人様考え事だから、行ってあげないと…」
ミドリが膝枕のために荷車に乗ってくる。
考えるのを辞めてしばし感触を味わう…ミドリは良い子だ…
「ついでだ、あの竹林まで戻って、細い竹を調達しておこう。
笹があれば笹でもいいぞ。
長さは…
そうだな、ちょっと短いが荷車で運べる3m程度でいいか。
本数が結構必要だ。傘マーク状に打ち込むから最低50~100本は欲しいな。」
「ご主人様、考えが纏まったのですか。」
「ああ大方はっ…いや。まだ半分ぐらい…だ。」
あぶねー。永久に考え中にしとこう。
お姉さんもその方が楽しめている…はず。
「あとは、綱でいいか。雑貨屋で綱を買って雑な網でいいから作るぞ。
銛で突けるぐらいだ、大きい魚だらけだろうし。」
「おさかな取るの~??」
「ああ、旨く行けば、テイルならザクザク手掴みで取り放題だ。
あ…ミドリ、魔法じゃないぞ。論理的必然だからな。」
「…必然…」
そうそう、ミドリも一緒に考えよう。
そのままギュッとしたままで…
………
……
…
大きな分かれ道まで戻ってきた。向こう行くとヘルマンド川だな…
「ご主人さま~~怪我してる人達があっちから来てるよ~~」
あれは…ヴァーミトラじゃないか。
「おーい、ヴァーミトラさーん。」
「あー」
…
…
…
「はは、カッコ悪いとこ、見られちゃった。」
いや、いや、いや。
荷車に寝転がって乗って、奴隷に膝枕させて、もう一人の奴隷に荷車引かせて…
俺のほうが大概情けない姿なんだが。
ヴァーミトラはともかく、他のフアルコンノートの連中、微妙な表情でチラチラ見てるし…
「ヴァーミトラさん、どうしたんです?その怪我。」
「いやあ、『残り福』さんが今度はナーガ狙ってるって聞いて、ちょっと見学と思って…」
「ヘルマンド川に行ってたんだ…」
「はは、まあそんなとこ。でセイレーンが居たので急遽戦ったんだよね…」
「それで怪我したんですか?」
「いや。セイレーンは撃退したよ。
胴の真ん中ちょっと下の方、魚と人の境目のとこ、セイレーンの急所に矢打ち込んだから。
逃げられたけど、もう水に潜れないから保って数日じゃないかな…」
へえー。境目が急所なんだ。矢が刺さったままか。痛そう…
そういえば、松永久秀に襲われた13代将軍足利義輝は槍刺さったまま奮戦して数人切り倒したって云うな。
刺さった槍抜くと、一気に出血して失血死するから刺さったまま切りまくったとか。
「でも、矢打ち込んだ直後にグリフォンに襲われた…」
なぬっグリフォン…だと。
鷹とライオンの合成獣のあのグリフォンかっ。居るんだ…
「ご主人様、グリフォンはA級上位の強力な魔物の上、飛ぶので非常に恐ろしい相手です。」
「そうそう。お嬢ちゃん、よく知ってるね。」
「ミドリはうちのナビゲーターなんです。」
「んで、そこのアフロディーテ…うちの魔法使いね…が咄嗟に闇魔法で隠蔽してくれて逃げてきた。」
フアルコンノートのメンバーって、全員エルフ?…いや獣人が一人いるな。
皆すごい美形揃いだ。ヴァーミトラはたしか2代目リーダーだったよな。
元のリーダーが美形の女ばっか4人侍らせてたのか。
元リーダーの転移者がどんな奴か、透けて見えるぜ…
「いやぁ、危なかったよ。
自分もイオリみたいに安全第一のつもりだったんだが、リーダー失格かな(笑)」
「いえ、リーダーはいつも良くやってくれてます。前のリーダーなんか…」
「そうそう、こんなの仕方ないよ…」
「たまには危険なこともでてきます。前のリーダーの頃はもっと酷い大怪我ばっかでした。」
人望あるんだな。
A級って云うからイケイケかと思ったけど、そうでもないんだな。
「イオリも気を付けてね。じゃあまたね。」
「はい、ありがとう・・・」
………
……
…
「お姉さん、どう思う?」
《 みんなとっても綺麗な子達だったわね… 》
「いや、そうじゃなくて…」
《 セイレーンとグリフォンね。 》
「うん。とくにセイレーン…」
《 今日は辞めといたら?注意されてるのに、直ぐに行くのは馬鹿みたいだし。 》
「……」
《 大丈夫よ~。B級でしょ。数日は生きてるって。 》
………
……
…
それからずっと無言で考え込んでいたので、ミドリがずっと黙って抱えてくれた。
ミドリが仲間で良かった。




