26 差し飲み
テイルとの距離が急接近してしまい、ミドリのケアが大変になっている。
飲み会は大嫌いだったが、ミドリと2人だけで飲むなら悪くない。
陳腐な手だが、ミドリには有効だろう。
「今夜はミドリと食堂で食後に酒を飲むので、テイルは先に寝てていいぞ。」
「わかった~。」
何も考えない上にグータラ出来れば幸せというテイルは扱いやすくていい。
テイルは全く酒が飲めないしな。
全員での飲み会など、俺の辞書にはない。異世界まできてブラック企業の冗談は御免だ。
ミドリがキラキラと目を輝かせている。
ビエーレより強そうなのは…ウシュク?たぶんこれだな。
「ミドリは、ウシュクがいいかな?」
ミドリが全力で頷いている。
「俺にはウシュクを1杯。ミドリにはウシュクを4…いや5杯頼む。」
「5杯も♪♪」
「ミドリはいつも頑張ってるからな。遠慮はいらん、好きに飲め。」
「ぐん、ぐん、ぐん…ファーーーーーーーーー」
ペロっ…
「お、旨いな。元の世界のウイスキーの銘品みたいだぞ。」
「ウシュクを造れるのはドワーフだけです。
蒸留装置はドワーフの一子相伝でそれぞれの酒倉で厳重に管理されています。」
「道理で。相当熟成させてあるな。すごくまろやかだ。」
「12年以上寝かせないと売りません。こなれていないウシュクを売るのは恥です。」
「さすが、ドワーフ。そういうとこは好きだぞ。」
………
……
…
「ご主人様も結構飲まれるのですね。意外でした。」
「酔うのは嫌いだが、旨い酒を味わうのは好きだぞ。
元の世界でウシュクに似た、ウイスキーやブランデー、ラム、テキーラを飲んでいた。」
「いろいろ有るのですね、いいな~。酒場とかは行かないのですか?」
んぐっ…ふう。
「酒場は嫌いだな。酔っ払いが嫌いなんだ。酒は静かに味わいたいのでな。
酔っぱらって大声でわめいている奴らと同席など絶対嫌だね。
静かなショットバーで一人でジャズとか聴きながら飲むのは好きだったぞ。」
「ショットバー?」
「お一人様か2人程度までで行く店だ。カウンター席だけの小さな店が普通だな。
偏屈な親父が秘蔵の酒を出してくれたりもする。」
ミドリが目をキラキラさせて話に乗ってくる。
酒の志向(嗜好)は俺と似ているようだ。
「しかし、わが『残り福』も随分余裕ができてきたなあ。」
「テイルちゃん速いから、核集めも私の倍あつめます。」
「ほんと、ミドリとテイルのおかげだよ。」
「ん?どうした?」
「でもテイルちゃんはペロペロもゴロゴロもできるのに、私は全然…」
ミドリもスリスリしていいんだぞ。いや、スリスリしなさい。
「ミドリはぷにぷにの膝枕でぎゅっとしてくれるじゃないか。」
「でも服が固くてゴワゴワだから…」
じゃ服無しで…と云いかけて辞める。
「ドワーフの婚約って、なにか作法とかあるのか?」
「婚約どうするかは聞かされるまでに勘当されたので…」
「婚約自体が無い可能性もあるのかな。」
「いったいどうすれば…」
既成事実先行という、単純で確実な方法があるだろうが。なぜ気が付かない…
いっそ儀式を捏造してやるか?婚約のためだ…とか。
くっ『奴隷環』さえなければ。
「まあ、いつまで悩んでいてもしょうがない。ボチボチ探っていこう。」
「そうですね。ずっと一緒だからそのうち見つかるかも。」
「すぐに見つけたいけどな。」
「すぐは無理な気が…」
「代わりに、頭以外もギュッとしていいからな。」
「それなら大丈夫です。」
シメシメ。とっさの思い付きだが、うまく流れで潜り込ませた。
30男のスキルは爆上げ間違いなしだ。




