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184 衝(しょう)車(しゃ)

案の定、通路開削がおわってしばらくすると、敵の第一次突撃が始まった。トーチカが囲まれると脱出できず玉砕になってしまうので、突撃と同時にトーチカを放棄、兵は塹壕を伝って砦に帰還している。敵の先鋒がトーチカラインを超えて砦との中間点付近に達したところでバタバタと倒れだす。


「お、今回も釣れたぞ、伊織。」


「だな。ムロータ将軍は懲りているはずだが、さらに上の命令だろうな。多少兵を損ねても罠の場所を探らせる…」


「ひでえ指揮官だな。」


「ああ。だが案外そういう無駄に兵を死なせる人間が猛将とかいわれていたりもしてな…だがせっかくのお供え物だ。遠慮なく刈り取ってくれ。」


「もちろんだ。すでに目標を変更してある。」


足罠を確認後、敵兵は倒れた味方を放棄してアッサリと引いていく。最初から捨て駒扱いのようだ。まあ、トーチカも放棄させられたし、敵としてはコレで採算が合っているのだろう。


「ガラディー。倒れた敵兵をあらかた戦闘不能まで痛めつけたら射撃中止して帰ってもらえ。重傷の負傷兵を多く抱えていると士気も下がる。負傷兵が生きていれば殲滅するよりも敵の備蓄物資を減らせるしな。」


「またそれをやるのか。たしかにそれが理屈に合うのだろうが、止めを刺したい連中も多いから、どこかで目一杯戦わせてやってくれよ。相手だけ目一杯の状態はイラつくからな。」


「心配せずとも、敵兵が砦の外壁にとりつきだせば、目一杯やってもらうことになる。今は余裕で遊んでいればいい。」


「余裕なあ。そうだ、せめて毒の使用を許可したい。毒なら問題なかろう?」


「そうだな…確実に戦闘不能に追い込むためにも毒はいいかもな…いいだろう。毒を許可しよう。」


現場の兵士は殺し合いだからな。あまり殺すなと言っているとストレスが溜まって士気がさがるか…


「ご主人さま。またなにか変なのがでてきましたが、あれは?」


4輪荷車の上に大きな丸太が乗せられている。丸太の先がキリのように尖らせてある。


「あれは…しょうしゃ…か。」


しょうしゃ?伊織、説明しろ。」


「ああ、すまん。実物見るのは俺も初めてで、ちょっと感動していた。俺の居た世界では5000年以上前に使われていたという攻城兵器の一つだ。見ての通り車の上に大きな丸太を載せてある。勢いを付けて城門にぶつけて破壊する。本当は遠くに斜面を作ってその上から転がり落ちる勢いでぶつけるのだが、ココでは斜面が作れないからな。たぶん、人力で押してぶつけるつもりだろう。」


「4輪では足罠が効かないぞ。どうする。」


「根気よく焼くしかないだろうな。どうせ迫ってくるからしっかり狙って燃やしてくれ。城門にぶつかって止まったら上から原油もかける。せいぜい2~3回の再使用で廃車になるはずだ。」


しかししょうしゃか。床弩ではなかったな。案外奴は弓系の知識が無いのかもしれん…


「来るぞ、撃って撃って撃ちまくれ。女は原油だ。真下で止まっているしょうしゃにぶっかけろ!」


「おう、これからが本気だぜ!」


ケルート人が全力射撃を開始する。真下のしょうしゃが目標なので、慣れ親しんだ短弓に火矢をつがえて高密度の弾幕を張っていく。


「すごい…ご主人様。短弓でもこれだけの密度だととても近寄れません…」


「ああ。だがしょうしゃはどうやら、あの綱で回収するようだ。」


しょうしゃの後ろには綱が付けてあり遠くから引き戻している。さすがに城壁際まで押してくるバカは居ない。それでもしょうしゃ上面は原油に引火して盛大に燃えている。あれでは再利用はできないかも。


「伊織。しょうしゃは焼き尽くせそうだが城門が保たないようだぞ。」


「まあそうだな。ま、城門といっても見た目だけだが。」

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