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181 スリング

誤字のご指摘、いつもありがとうございます。

相手がある事で仕方ないとはいえ、遅延戦術に準備した備えが予想より早く対処されている。乱杭、逆茂木は良いとして、まさかこんなに早く堀底の原油だまりに火を入れさせられるとは。原油だまりは一回しか使えない。3層の堀であと2回は残っているが、二日目で使わせられたのは予定外だ。


「敵もなかなか手強いな。仮設橋をあとどれぐらい準備してきているのかで今後の展開が変わってくるな。」


「今日一日は燃えているので、明日からがどうなるかですね。ご主人様。」


そうこうするうちに、グリフォンのマンディー達が第2防衛戦の補給庫で焼夷炸裂弾を補給して戻ってきた。近距離なので爆撃のリロードが早い。中には器用に片足に2本ずつ、倍の数を掴んでいる固体も居る。


「やる気満々だな…」


「接近せずに高空から落とすだけで良いのです。一方的に打ち据えられるなら、ミドリでもやる気になります。」


なるほど。いじめっ子は世にはばかる…か。


「ダナイデ。無反動砲はあの高度なら届かないだろうがもうすぐ昼が近い。太陽の光が強い時間になるのでマグレでも光が収束すると危険だ。もう少し高度をあげるように連絡を頼む。」


ダナイデが頷く。俺の考えを読んですでに連絡していたようだ。マンディー達が慌てて高度を上げていく。今頃はセイレーン達も暗礁や小島に備蓄した反跳弾を補給しつつ敵の補給船を焼いているはずだ。


「概算で良いので仕留めた敵の補給船の数を、定期的に戦線で戦っているケルート人達につたえてくれるかな。ジワジワ防衛施設が排除されていくのをただ見ながらただひたすら防衛戦を続けるのは精神的に疲れるからな。」


俺たちはまだしも戦果を知ることができるだけマシだけど、Uボート戦やっていたドイツ軍とかキツかっただろうな。ろくな戦果確認もできずにひたすらUボートの戦果を信じて耐え続けるとか。あの時、もしも日本海軍全体がドイツ海軍同様の通商破壊戦に専念したらどうなっていたんだろう。ドイツ海軍の数倍の規模だからもしかしたら、連合国の海運業が壊滅して双方ボロボロの状態で終戦とかもあっただろうか。


「ご主人様。例のブルドーザーですか、また出てきました。」


「やはり出てきたか。まだ残っていたのか、修理して作り直したか…」


「作り直す?」


「ああ。戦場ではよくあることだ。壊れた機材から使える部分だけ取り出して組み立て直す。アレだけの数だったから、部品取りだけでも10や20は作れるだろうな。火矢と爆撃をブルドーザーに集中するように連絡を。」


第1層の空堀はあれで埋められそうだな。2層3層は補給船がとどいて新しいブルドーザー待ちになるだろうが。しかし要塞戦は地味だ。第一次大戦ではこんな事を延々と4年もやっていたんだな。で生まれたのが潜水艦に戦車に毒ガス…あれ、全部ドイツ製じゃないか。毒ガスは完全に失敗作だったが。味方にも被害が出るような物は兵器とは言えん。科学者達は其れぐらい気が付かなかったのか?


「ガラディー、味方の被害は大丈夫か?」


「ん?ほとんどけが人も出ていないぞ。あれだけ頑丈なトーチカに籠もって銃眼から見るのも射る瞬間だけだし。まれに銃眼からとびこんだ弾が跳弾になって打ち身でかるいアザになる程度で問題ない。」


「そうか、それなら良かった。こちらは人数で負けているからな。一人脱落するだけでも結構応える。」


「交代要員もまだまだ余裕だし心配しなくてもいいのではないか。しかしなんだな、こういう戦いを経験すると、前のように平気で身を晒して打ち合っていたのが阿呆の極みだったな。あの頃はあれで当然とおもっていたんだが…」


トーチカと要塞の連絡用の塹壕もちゃんと機能しているようだ。塹壕の角度が悪いと敵弾が飛び込むので無駄に蛇行させていたのが良かったのだろう。真っ直ぐで良いと云うケルート人を説得するのは骨が折れたが。


「空堀の近くまで敵が来たので、要塞から投石をはじめるぞ、伊織。」


「ああ、頼む。ただ勝負所はまだ先だから、疲れない程度にな。」


要塞外壁には事前に用意したスリング装備のケルート人の女性や子供も多く居る。最初は参戦を断ったのだが、負ければ自分たちもタダでは済まない、これは自分たちの戦い同然だ…というのでスリングを練習させて安全な外壁の上から撃つことにした。スリングの最大射程付近に合わせて空堀が掘ってあるのでとにかく目一杯振り回して飛ばせば良い感じに着弾する。原始的だが効果的な攻撃だ。とくに、火がついて脆くなったブルドーザーや仮設橋を細かく砕いて再使用不能に出来るのが良い。盾車もそろそろ強度の限界にきているものも有るようで、時々崩れ落ちている。


「どうだ伊織。女子供でもなかなかヤルだろう。ケルテイクは。」


「ああ、さすがだな。」


まあ、参戦許可したのは空堀突破されて要塞外壁にとりつかれるまでだが。その頃にはトーチカも放棄しているので外壁は成人男性が防衛に当たる事になっている。女性や子供は外壁から浴びせる糞尿や油を沸かしたり運ぶことになる。この迎撃はあまりやりたくなないけどな。これを説明したときは、ダナイデですらさすがに顔をしかめていた。ガラディーは大笑いしていたが。

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