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178 消耗戦

「いやまあ、前の時同様決めの一撃をお願いしているんだが、そのためにはココでハッキリ優勢にならないと駄目なんだ。」


「エフソス様は難しい方ですものね。御主人様。」


「それはちょっと違うな。戦い方、個性の差かな。エフソス様は基本奇襲専業だから大勢力同士の削り合いには不向きなんだよ。効果的な奇襲の場面を作りさえすれば、協力してくれる。というか、そういう場面がめったに無いので渇望されているんだろうな。」


「そうなのですか。でもエフソス様を脅迫?って…」


「脅迫は人聞きが悪いなぁ。同好の士に趣味の時間の提供のご相談なんだが。」


「主さまーー、水路でていく船が居るよーー」


荷降ろしを済ませた船が出始めたのか、ちらほら水路を戻る船が見えている。補給物資をピストン輸送されては困るのでセイレーンに迎撃依頼をだす。


「水路の出口で待ち構えて出てくる船を順番に攻撃、きっちり沈むまで船全体を燃やすように伝えてくれ。船の全周を炎上させたら沈むのを見届けなくて良い。」


どうせ酸欠で乗組員は操船できない。全滅でかわいそうだが致し方ない。まあ、危なくなれば海に飛び込んで逃げるだろうし。侵入時と違って帰りに戦闘艦はついていないからな。丸腰の輸送艦ならなんの危険もない…


「…旦那イオリさま。なんだが哀れですね。燃やされたり沈められるために使われた木材が。」


あ?ああ、そっちね。ダナイデにとっては身内の木材だものな。そりゃそうか。


「今はな。だがそのうち何か手を打ってくる。ほら、早速動きだしたな。」


接岸していた戦闘艦から10隻程度が水路出口に向かっている。おそらく水路出口の安全確保のための哨戒活動を始めるのだろう。


「戦闘艦が出ていった。セイレーンに連絡して、水路出口での攻撃は終了させてくれ。まぐれでも戦闘艦から打ち出される弾や投石器の石が当たると大怪我だから。セイレーンはこの戦いの鍵を握っているのでこんなところで怪我させるわけにはいかない。」


「わかりました。でも旦那イオリさま、過保護では?」


なっ…ほとんど当たるとは思えないのがバレている。くそ、頭の片隅で考えたことも筒抜けか。ああ、そですよ、マーマナに怪我させるわけに行かないから撤退ですよ。


「と、とにかくだ、水路出口で無理して戦う必要はない。どうせ黒の海に出ていったらそれぞれの船足の全速で戻っていく。当然バラバラの独航船になっているので安全に狩れる。それぞれの船にセイレーンが2~3体ずつ張り付いて丁寧に沈めていけば十分だ。」


しかし、魚雷に代わるものをと考えたんだが、セイレーンの戦い方がまるで第二次大戦のUボートみたいだな。Uボートも初期は敵の港湾出口で襲撃していたんだが護衛が付き始めて航路上の独航船狩りに変わっていった。これに手を焼いた連合国は護送船団方式に変わっていったんだが、さあどうだ?帝国に護送船団方式を実行できるだけの体力があるか?


「御主人様。沿岸付近の乱杭はあらかた切られてしまったようです。」


「うん。仕方ないな。相手も一番邪魔なものから排除にかかるしな。これで接岸面が増えて荷降ろしも早くなるか。逆茂木の方はまだまだ健在だな。」


「はい。逆茂木といっても実態は大木ですし、燃えたところでなかなか灰にはなりません。生木ですし。」


大量に…とは行かなかったが、万遍なく鉄条網まがいの金属製の針金細工も混ぜてある。戦車でもあれば無理やり突破出来るだろうが、そう簡単では無いだろう。しかし、最初に上陸されたあたりの逆茂木はすでに結構燃えている。なんだかんだで敵も頑張るな。


「おい、伊織。また変な荷車が出てきたぞ。あれは盾?か。荷車の正面に斜めに大きな盾が付けられているな。荷車の前面も盾で覆われている。おい、そのまま逆茂木に突っ込んでいくぞ!!」


おいおい、戦車というか、ブルドーザーの簡易版かよ。燃えて脆くなった逆茂木だと突破されるかも。一発で突破できなくても、なんども勢いを付けてぶつけられると駄目か。


「御主人様の言われた通り、相手も工夫してきているのですね…」


ミドリはまだ落ち着いている。まあ、まだ後ろには3層の空堀がある。それで余裕があるのだろうが…


旦那イオリさま?」


「ん、いや、正直ブルドーザーまで用意してきているのは予想外だったな。あれでは鉄条網は意味がない。瓦礫ごと排除されてしまうだろう。ちょっと残念だ。」


「ブルドーザーと言うのですか。あれは。」


「ああ。俺の居た世界では工事現場に必ずあるものだな。手っ取り早く整地するのには最適だ。だが、それほど数は無いようだから、逆茂木での時間稼ぎはそこそこできる。好き勝手作業させてやる義理はないから火矢の目標をブルドーザーに変更して嫌がらせを。」


ケルート人達に指示が伝えられて一斉にブルドーザーに火矢が集中する。気を利かせたケルート人が居たのか、独自の判断で焼夷弾つきの火矢を射た者も居たようで、一台、また一台とブルドーザーが大炎上して放棄されていく。


「だいだい全部炎上したようですね。ブルドーザー。」


「うん。だが、狭い通路だが逆茂木列の一箇所が開削されてしまったな。」


「でも出てきませんね…」


「あんな狭い通路からでてきても、ピンポイントで集中射されたら全滅だからな。敵もいままでの戦いで学習しているようだ。」


しかし、素人、初陣の兵がほとんどなのによくも統制できているものだ。やはりムロータ将軍の現場指揮能力は侮れないな。致命的に運がないけれど。彼は。



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