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177 膠着

誤字のご連絡ありがとうございました。

数隻が接岸して兵が吐き出され始める。一部は沿岸の乱杭の排除にかかっているようだ。ほぼ全ての火矢が接岸した船に集中している。目の前に敵兵がいるので兵を狙いたくなる場面だが、作戦通りちゃんと船を撃っている。序盤はとにかく敵の物資を焼くように伝えてあるので作戦通りとは言え、よく統制されているな、ケルテイク…


「ちゃんと船を撃っているな。真面目だな、ケルテイクは。」


「ケルテイクは決めた約束は違えないのだ。」


なるほど。太平洋戦争でも都会でスレてコスく利益掠める事を覚えている都市部の師団よりも、地方の師団のほうが精強だと聞く。社会の利便性が向上しても人間自体は劣化することも多いか…


「ご主人様、敵兵がトーチカに向けて何か始めているようですね。あれはテイルが以前に見た筒のようです。細いですね。」


「そうそう、あれだよーー。一杯積み込んでいたのーー。」


本当に物干し竿のようなタダの筒に見える。竿竹売りの売り子のように、肩に担いで中央付近を握っている。竿の後ろ側には小さな板?があるようだ。それが横一列に並んでいく…


旦那イオリさま。何をしようとしているのでしょう?」


「うーん。どうも銃器のような感じだが、俺も初めてみるなぁ。」


片膝ついて30人ほどが並んだ時点でやおらトーチカに向けて発砲した。と同時に後方の板が吹き飛ぶ。トーチカの壁がわずかに削れて土煙が上がる。


「そういうことか…」


「伊織、わかったのか?」


「ガラディー、あれは一種の無反動砲だな。筒の中央に火薬をいれてその前後に金属の弾が入れてあるのだろう。中央の火薬が爆発すると筒の前後に弾が飛び出す仕掛けだ。同じ力で前後両方に弾が飛び出すから軽く肩にのせて狙って持つだけだが手元がぶれない。後ろに飛び出した弾は板で止めているので撃つ度に板が壊れている訳だ。なかなか考えたな。」


「そんな物を造ってきたのか。」


「ご主人様。敵は一発撃つ度に新しい筒に取り換えていますね。」


「少ないが、時々敵兵にも矢が飛んでいるからな。撃たれながら火薬や弾を入れなおすのは難しいだろう。船で安全に再装填するのだろうな。」


「伊織、トーチカが随分撃たれているが大丈夫か?」


「遠距離の銃弾程度ではどうということはない。まあ、運悪く、銃眼に弾が飛び込むと仕方ないが…」


銃で助かったな。奴は固定観念があったのだろう、まず戦争には銃が必要と。同じ構造でもっと大口径のバズーカのような物に造られていたら危なかった。たぶんシューティングゲームなどの戦術ゲームオタクなんだろう。戦史オタクでなくて助かった。ソ連軍のファンとかだったらやばかった。


「それなら当分大丈夫か?」


「いや、そうも行かないだろう。敵兵がトーチカににじり寄る行動をし始めたら、攻撃を接近する敵兵に切り替えてくれ。まあ、まずは逆茂木の排除から始まる。逆茂木より手前に敵兵が出てきたら、それが敵兵攻撃の合図だな。」


当然手投げ弾程度は造らせているだろう。銃が効かないと判れば接近して銃眼に手投げ弾を放り込みに来るか銃眼を撃てる近さまで接近してくる。無反動砲だし素人でも結構正確に撃ってくるだろうな。


「あと、矢を射る瞬間以外は銃眼から長時間外を見ないように伝えてくれ。」


「ご主人様。なにか箱?が乗ったような荷車が出てきましたが、あれは?」


「あれは防御用の遮蔽物だろうな。いつまでも丸見えでは兵が保たないから準備してきたのだろう。まあ、上からの攻撃には無力だが、とりあえずアレの後ろで真上に盾でも掲げていれば一応は防げるかもな。」


寝る兵は船にもどって交代制かな。しかしやはり敵前上陸は大変だな。よく我慢して兵が従っているものだ。


「逆茂木の煙が大きくなっています。ご主人様。」


「ああ。船が停止しているので光の焦点が合って来ている。まあ、燃えたら燃えたで敵兵も触れない。燃え尽きるまでには夜になっているだろう。」


「そうも行かないようだぞ、伊織。燃えて脆くなった逆茂木に手投げ弾を投げ始めている。」


爆破に気が付いたか。だが砕いたところで燃えているうちは通れないからな。数人だけで出てきたらそれこそハチの巣だし。


「まあ、あの遮蔽荷車が通れるようになって出てくるまでは逆茂木で時間稼ぎができるさ。」


「それもそうか…」


旦那イオリさま。火薬があると普通の人でも皆、魔法使いのような戦力になってしまうのですね。」


「ああ。そのため火薬ができてからの戦いは沢山死ぬようになってしまったんだ。」


「みんな燃えてしまいます。」


「そうだな。最終的にはほとんど燃えて石や土の残骸だけになりがちだな。」


「だが、戦とはそういうものだろう、伊織。」


「ガラディーは戦士だな。その通りかもな。それより、ダナイデ。エフソス様との交渉はどんな具合だ?」


「やはり、あまり乗り気ではないようですね。単純な暗殺ですし。」


「そうだろうなぁ。」


「でも例の条件と、この戦い以後の予想を伝えたら結構慌てていたので、ココの戦いで我々の勝利がみえてくればたぶん…」


「なんとかなりそうか。」


「ふふ。でもエフソスを脅迫できるのって、後にも先にも旦那イオリさまだけでしょうね。」


「ご主人様、いったい何を?」

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