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173 開戦前夜

黒の海に突き出た半島の要塞の上に立って穏やかな海を眺める。この半年近くはひたすら準備に専念してきた。元の世界でもココまで働いたことはなかったように思う。皆も良く付き合ってくれた。武器弾薬食料は十分に備蓄できたと思う。防衛施設もそれなりに満足の行く出来栄えだ。魔物も組織化し、援軍のケルート人たちも小隊や中隊まで編成できている。帝国軍にも娯楽が行き渡り、エフタール王国近衛兵の半数が訓練名目で魔物領と帝国国境付近にでて駐留して王国スレスレに迂回しての分進合撃の可能性を潰している。ニザーミ様も定期的に学校に来て庶民と交わり学んでいる。良い君主になりそうだ。ま、ミテオの仲良しだしな。ぐれる可能性は殆ど無いな。


「漸く全て整ったな…」


「主さま~~、これでゆっくりできるのかなーー」


「帝国が攻めてくるまではな。」


「ご主人様。何故ココまで頑張られたのですか?あまりご主人様らしくないような。」


「ミドリの云う通り、明日できる事は今日するな…の主義の俺だから、普通はここまで肩入れしないししたくもないが、今回ばかりは相手が悪いからな。おまけに敵の切り札の一つは恐らく核兵器だ。どんな核かは不明だが…。それに魔物達は素直で可愛いからな。元々俺は人間よりも動物の方が相性が良かったから魔物の味方をするのは普通の事だろ。」


「それでよく、元の世界で普通に仕事出来てましたですね。」


「元の世界での仕事は分野ごとに細分化されていて仕事自体はあまり人間相手にならなかったからな。組織の上に行きたい連中だけは組織内の人脈造りで汗水たらしていたが、俺はそんなものに興味はなかったしな。わずかな給料のUPと空虚な肩書で加重な責任を喜んで引き受けるという、変態趣味は無いからな。」


「なんですかそれは。そんなもの誰が欲しがるのでしょうか。」


「俺の居た時代ぐらいになって、かなりの多くの勤め人がそこに気が付いて昇進を望まなくなっていたな。ほんと阿呆な経営者が氾濫していて笑えるよなあ。戦国時代の敗戦国の感状ですら一種の約束手形で後日の勝利で土地や禄で報いねばならなかったと云うのに、紙入れ一片の表彰状や中身のない肩書だけで人間をこき使えると考えて居るとか、頭おかしいよな。」


「皆さん、相手にしなくなっていたのですね、安心しました。」


「ま、こっちの世界ではそういう奴は居ないから心配は要らないけどな。そういう訳で今回は頑張って仕事した。魔物の嫁も居るし、上陸地点の奥はダナイデのカザーフの森だ、荒らしに来るのを見過ごす訳にはいかない。」


「そうですね。ここを乗り切れば王国と魔物、ケルート人はうまくやっていけるような気がします。」


「今回上手く乗り切れれば、たぶん、帝国もマシな方向に向かうだろう。」


旦那イオリさまがお仲間とせっせと堕落に導いていますしね。」


「まあ、堕落できるのは余裕がある証拠だ。王国でも、あの雑なエロ小説を読みたいという理由で識字率が上がっているし。チンチロリンやら双六で複数のサイコロを同時に使うようになって、掛け算も普及しだしている。悪い商人も詐欺がしにくくなって結構潰れたな。本当の学習なんて、そんなものだろ。」


インターネットなんてエロ絡みで普及したと言っても良いぐらいだし。


「しかし、凄い陣地ですね。沿岸から沖合にかけては水中に無数の乱杭。水際にはタップリ水を吸い込んだ逆茂木が地中深くからしっかり植えこまれていて上陸を妨害。その後ろには3層の空堀。空堀の底には樋が引いてあっていつでも流し込んだ原油に火がつけられる状態。空堀と空堀の間にはケルート人の足罠。空堀の後ろには前後互い違いに配置されたトーチカ。その後ろには森の木の高さスレスレの大きさの要塞。要塞の前の木は切りこみが入れてあり、真下まで敵兵が来たら木を倒して至近距離でも撃てる準備も出来ている。要塞の入り口には枡形が組まれていて3方向から撃ちすくめられる構造だし、突破されて侵入されても、内側にも枡形が造られている。さらに要塞が落ちても森の奥に第二防衛ラインの広場と空堀、規模は小さいけど食糧庫をかねた要塞とトーチカ群。」


「正直第二防衛ラインまで下がりたくはないけどな。核兵器対策の都合上、あまり内側に引き込みたくない。核兵器破棄にはどうしても海か深い池に放り込む必要があるからな。」


「ワイバーンの数はすくないですが、魔物の空襲の中で、この要塞に突っ込んで来ることなんて出来るのでしょうか。」


「出来ると思うからやって来る訳だしな。過信は禁物だ。根本的に頭数ではこちらが少ないしな。単純な野戦になると勝ち目は薄い。まあ、死傷者が急増するので野戦はする気ないが。」


「グリフォンのマンディー達はやはり最初は塩湖方面ですか。旦那イオリさま。」


「うん。数が少ない飛行できる魔物は分割しては効果が激減する。恐らく先にやってくるだろう塩湖方面の目途が立つまでは向こうに回すしかない。」


「セイレーンが塩湖に行けないのが残念ですね。ご主人様。」


「黒の海と塩湖は繋がっていないので、セイレーンもメガロドンも行き来出来ないのは仕方ない。まあ、帝国側の対空兵器を知ることが出来るので悪いことばかりでもないよ。」


あとはどれだけの補給能力を帝国が用意してくるかだな。最前線を支えられても補給を絶てないと結局は負ける。大型船1000隻とか造られたら流石にきつい。

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