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169 聖ハスモーン多神教?

「ま、平たく言うとだ、聖ハスモーン唯一神教は本当は多神教だったって落ちだな。」


「え?唯一神なのに多神教?ですか、ご主人様。」


「少なくとも総大司教の教義ではそうだ。唯一の意味は、各個々人でどの神を信仰するか決めたらその神一筋に信仰しろって意味だったんだ。だから神は何種類も居るということだ。」


「でも、現実にそこまで理解している人って…」


「少ないらしい。というか、枢機卿がわざと一神教のような遣り口で信者を脅して従わせているというのが実態のようだ。」


「なるほどねー、それで総大司教は表に出るのを禁じられて幽閉状態ってことですか。」


「ヴァーミトラの想像通り。だが、完全に遮断されているわけでもなく、信者の中で枢機卿のやり方に疑問を持つものが増えて煩くなってきた場合には総大司教に投げて黙らせているようだな。なので、総大司教の直接の息のかかった信者で枢機卿と切れている者も1000人程度居て、そのつながりで総大司教派もその数倍は居るらしい。」


「それでも、数千人からいいとこ一万人ですね。御主人様。」


「そうだな。あ、そうそう、ミドリ。聖ハスモーン教は禁酒などしていないそうだぞ。大地の恵みを禁じるなどありえないそうだ。ミドリも聖ハスモーン教でやっていけそうだぞ。」


「…だからと言って総大司教と酒盛りしてよいとも思えませんが。」


「聖ハスモーン教の正しい教えを広めるお手伝いぐらいはしないとな。おお、そうだ、こんどコルストンに頼んで総大司教宛に大量の酒を寄進しよう。あの爺さんなら上手く使うだろう。」


「寄進ねえ…まあ、なにもしないよりはいいんでしょうけど、わざわざするほどの効果あります?伊織さん。」


「ヴァーミトラ さん、軍に一番必要な補給物資はなんだと思います?」


「うーん、食料かなあ。」


「その次は?」


「弓矢とかの消耗品かな?」


まあ、そう思うのが普通だろうが実際は[飲む・打つ・買う]なんだよな。太平洋戦争の日本軍でもそれなりに余裕のある序盤は[飲む・打つ・買う]をちゃんと補給していた。米軍なんかアイスクリーム製造機までかなりの部隊に届けていたほどだ。戦争映画でラッキーストライクが良く出てくるのも、現実を踏まえているんだよな。最近は女性の軍人も増えてきているが、そこらはどうやってやり繰りしているんだろうな。現場の補給官は結構苦しい板挟みではないのかな?


「ぶっぶーーーー。2番めは酒やタバコなんだなー。こういうのがないと必ず下っ端が悪さして現地人といざこざ起こすので戦闘以前の段階でまともな組織行動ができなくなる。おおっぴらに酒が流通していない帝国で大量の酒が総大司教のところに有るとなれば、軍の補給官僚が黙っている訳がない。必ず強奪にきますね。」


「あー、そのやり取りで総大司教が懐の大きさを見せつけて恩を売る。結果、総大司教の息の掛った者がばい菌のように増殖していくと…伊織さんらしい、いやらしい攻め口ですね。こんな手で足元崩されているムロータ将軍に同情しますわ。」


ムロータ将軍は気が付かないだろうけど、あいつはどうかな。あの年齢でゲーム脳だし大丈夫とは思うけど。ゲームの兵士は酒よこせーとか言わないマシーンのような兵士だからな。


「まあ、気が付かないでいてほしいねー。タダでさえ元々死兵化しやすい環境なんだから。総大司教には是非とも頑張ってもらいたいものだ。」


「御主人様。すると帝国兵士を死兵化しやすくするため、歴代枢機卿が教義を捻じ曲げてきたのですか。」


「ミドリ、それは考えすぎだろう。死兵化はついでで、政治的な一本化が目的のはずだ。総大司教も国を維持するために必要な措置だ…と云われて黙らされているようだし。枢機卿はあくまで政治家であって、軍事は素人だからな。」


神権政治の限界だよな。もとになる宗教の教義が立派であれば有るほど現実の政治との乖離が大きくなってしまう。宗教が母体の政党とかも、すぐに信者と溝が出来てしまうんだよな。ローマ法王のように頻繁に政治に口出ししていると熱心な信者に愛想つかされるのに。解っていないのか、はたまた自分の福祉さえ充足できれば良いとか思っているのか。そのうち信長時代の比叡山のようになるかもな。


「ちょっとちょっと、伊織さんのいう通りだとすると、枢機卿とか、枢機卿の手足の教団幹部とかは全く信仰と無縁の連中ってことになるのでは?」


「ヴァーミトラさん、そんなの当然じゃないですか。政治家がまともに信仰してどうするんですか。神頼みする政治家なんかにだれも期待するわけないでしょうに。総大司教も言ってましたよ、『奴らは信心の欠片もないので、ココに来る事もない。』…って。」


「ひっどーい。枢機卿が教団のお偉いさんだと信じて従っている大多数の信徒はいい面の皮ですねー。」


「それは仕方ないかな。よく云うでしょ、『信じる者は騙される』…って。自分で考える事を放棄して神に丸投げした時点で騙されても良いと決めているわけだし。よく盲目的信仰とか云うけど、盲目的でない信仰なんか存在しないんだしさ。」


ま、とにかく、枢機卿側と総大司教側の溝を押し広げて枢機卿側だけ叩くなら、殲滅戦をせずに済む。これなら普通の軍隊相手と実質同じだからな。まずはやれやれってとこか。

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