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165 公演(トレゾント)

トレゾントの中央広場でサフランの時と同じく演奏を開始する。黒の海を隔てているとは言え、魔物領との最前線のためか女子供が少ない。住みやすい気候なのに。いや、住みやすい気候だからこそ、一般人は極力住まわせない方針なのかもしれないが。あと今回もまた奴が居るのでは?と危惧していたが、奴は帝都へ直帰したようだ。皆ホッとした表情で落ち着いて演奏している。


しかし、むさ苦しい男がほとんどなのに、皆よく黙って聞いているものだ。よほど娯楽が乏しいのか。軍事都市の性格が強いのでここにはエフタール王国の商人の影響が上手く届いていないのだろう。


パチ…パチ…パチ…


演奏が終わっても反応は薄い。おっさんばかりではなあ。皆もいつものように子供が居ないので形だけの演奏で早々に終了する。


「ココはダメだな。演奏より酒の差し入れが必要だ。ベレヌイも気にするな。演奏はちゃんと出来ていた。」


「そうですね、ご主人様。これほど手応えのない観客は初めてです。」


旦那イオリさま、もしかすると、目つきの悪いあの方が女性や子供を遠ざけてしまったのでしょうか。」


「なるほどダナイデ、それはありそうな事だな。気が付いてなかった。」


サフランの演奏を見て、女子供を遠ざけるだけで盛り上がらず文化浸食が出来ない事を見抜いたか。そういうタイプでは無いように思うのだが、無くもないのかな。


「まあ、帝都では流石にその手は使えないだろうから、気にせず行こう。」


帝都では2泊の予定だし戒厳令でも敷かない限りは物理的に無理なはずだ。


「それより、ミドリ、ここから魔物領の陸地は近いのかな?」


「ご主人様、よくわかりますね。黒の海の北岸中央に突き出した半島があって、ここから案外近いです。晴れている日には良く見えるはずです。」


「やっぱりそうか。するとその半島付近が予定戦場になる感じだな。」


「普通はそうなると思います。以前のお話の要塞を造る第一候補の場所ですね。」


しかし、このトレゾント。こんな人口構成ではとてもじゃないが、港までちょっとブラブラとか無理だな。今夜は成すことなく単純に寝るしかないか。


「それでは明日も速いので、皆よく寝ておくようにな。すまんが今日はダナイデに頼めるかな。」


「そうですね旦那イオリさま。かなりストレスが溜まっているようですわ。そろそろリフレッシュが必要ですね。」


ダナイデに透析?を依頼して部屋に籠る。指名したのはお姉さんとの相談をダナイデにも聞いておいてもらうのが第一の理由なんだが、当然、透析もして貰う。敵地ってなんとなく疲れるものなんだな。野球やサッカーでホームゲームが有利というのがやっと実感できた。


ーで、お姉さん、この状況どう思う?ー


《 どうせなら、皆呼んで纏めて乱〇したほうがよかったんじゃないの?ベレヌイちゃんもミテオちゃんも凹んでいたし。 》


ーそうだなあ。乱〇はともかく。二人には最優先で時間とるようにしなきゃな…それはそれとしてさあ、どう思うのよ。ー


《 あの感じは持ってるね、核兵器。何発かは見当がつかないけど。 》


ーだよねーやっぱ。ー


《 でも、いくら臨界量以上の核物質手に入れても起爆はちゃんとできるものなの? 》


ーそこはたぶん、適当じゃないかなぁ。上手く爆発すれば儲けものって感じで。ー


《 ああ、そっか。原爆として爆発できなくても剥き出しの放射性物質ばら撒かれたら大被害なのね。 》


ーそう。俗に云う、『汚い核』ってやつね。ー


『汚い核』に使えるから日本が大量保有しているプルトニウムにごちゃごちゃ文句が出るんだよな。其れを正直にあげつらうと日本が事実上核武装済と同等になってしまう。その事実はマスコミが大好きな周辺諸国に不都合なので皆黙っている…と。


《 それに『汚い核』として使わなくても臨界量以上の核物質を敵地に放置してメルトダウンさせてもいいのよね。 》


ーあー、そういう手もありますね。ー


《 受けようが有るのかな? 》


ー開戦しちゃうと、ほぼ受け無しかな。なので開戦前に仕込んどこうとは思ってますけどね。ー


《 総大司教使ってなにか企んでいるんだろうけど、空ぶった場合は悲惨ね。 》


ーそうなんですよ。しかも開戦するまで空振りかヒットしたかが不明だし。ー


《 やっちゃえば? 》


ーは?ー


《 暗殺 》


ーな、なんっですとぉ~ ー


《 だって仕方無いじゃないの。ほかに手が無いわ。 》


ーしかし、それこそ成功可能性が低いし、リスクが大きすぎて……うーん……却下ですね、やっぱ。ー


《 じゃあどう受けるのよ。 》


ー純粋に暗殺は無理だけど、開戦時に前線にきていたらピンポイントで屠るのは有りかなあ。ー


《 お、ヘタレの伊織がやっと覚醒したのかな。お姉さんちょっと嬉しい。 》


ー誤解です。ただし、奴に限ってはやっちゃってもいいんです。この世界で逝っても転移前の世界に戻れると言ってたから。奴だけ。ー


《 ああ、そういえば創造神とそういう契約で来たとか言ってたわね。 》


ーそしてこのミッションに最適の戦力も居るし。ー


《 えっと、それ無理じゃないの?あの方だろうけど単純な踏みつぶし作業なんて興味ないと思うけど。 》


ーそこなんですけどね、問題は。でもほかの誰かにと言っても…セイコ・サオリ捨て駒にも出来ないし。ー


《 そうね。セイコ・サオリ使うと別ルートに入って余計ピンチになりそう。 》


ーはい。ですので、この線でなんとか対抗できるように頑張ってみます。ー


《 ハンデ戦で大変だろうけど、期待してるわ。 》



暗殺かー。そう言えば、ミドリも言ってたな。皆普通に思いつくものなんだな、暗殺。しかしリスクがなぁ。けいみたいな未来しか見えないんだけど。



誤字など、いつもありがとうございます。

明日は家族サービスでお休みになります。

よろしくお願いいたします。

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