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148 水切り魚雷?

3人でヘルマンド川へ行き、呼石でマーマナを呼ぶ。


「ああ、ベレヌイは呼石でマーマナが呼べるのは知らなかったよな。音は水中のほうが早くしっかり伝わるので、この石の音をマーマナが聞き分けることで俺達が呼んでいるのが解るんだよ。」


「そうなのですか。水の中にも音が…伊織様と居ると知らないことだらけです。」


「ケルテイクは耳が良いから、連絡手段に利用できるかもしれないな。ちなみに、固体のほうがもっと早くしっかり伝わるようだ。」


「固体…地面とかですか。」


「そうだな、地面は現実的だな。予め音の鳴らし方などで決め事をしておけば、結構離れていても連絡出来ると思う。」


糸電話とかも有るけど今はまだ良いだろう。あまり技術加速させ過ぎるのも副作用がありそうだし。

音の話をしているうちにもマーマナがやって来る。水中だとほんとに速いな、セイレーンは。


「お待たせー。」


「よく来てくれた。今日は新しく造った武器をセイレーンが使えば凄いことになりそうなので、来てもらったんだ。」


「へー、伊織が造ったのなら、使ってみたいな。で何すればいいかな?」


「うん。えーっと、あのボロボロで打ち捨てられた舟、あれを川の真ん中あたりの遠くに置いてきてくれるかな。」


「あれだね、解ったー」


マーマナが結構離れた所に廃船を固定してくる。ちょっと遠すぎるかもだが、まあ、セイレーンだしな。行けるだろう。


「有難う、マーマナ。でセイレーンの投げ槍を1本だしてくれるかな。」


「うん。…マーマナのはまだ子供だから小さいけど、はい、コレ。」


小さいって…、結構な長さがある。質量もそこそこだ。運動エネルギーは十分だろうけど、これを投げられるパワーは流石セイレーンだな…簡易ナパーム弾を樹液で防水して…先端付近にしっかり固定して…安定翼代わりのボロ布は不要だな…よしコレでいいだろう。


「マーマナ。これを水面すれすれに投げてみて。あの舟に当てるように。舟のちょっと手前狙う感じでいいよ。飛びすぎて直接当たってもいいけど。出来るだけ舟の下の方に当てたいんだ。」


「水面にあたってもいいの??ふーん。じゃあやってみるね。」


文字通り矢のような一閃で投げ槍が舟へ飛んでゆく。手前で水切りの要領でバウンドして舟の喫水線付近に刺さるや爆裂、舟の舷側にしっかりと火災が発生する。


「え!! すごい、何これ??…伊織。」


「御主人様。あんな場所に火がついたら…消火作業も出来ないですね…」


「ああ。下から火の手が上がるのですぐに炎上するな。」


「なんか、すごい煙も出てますよ、伊織様。」


「水がかぶった場所が不完全燃焼して、有毒ガスも出ているのだろうな…」


槍だから飛行が安定しているな。これならもっと火薬と軽質油を増やせるな…


「…少し改良してみた。もう一度投げてみてくれるかな。」


マーマナがまた同じように投げる。ほぼ同じ場所に着弾、さきほどの倍以上の爆発とともに舷側の大部分に火の手が上がる。


「…凄い…」


「ご主人様。これでは大きな舟だったとしても…」


「ああ。大型船なら水上の部分がもっと大きいからなおさら派手に燃え上がる事になる…よな。」


やはり効果絶大だな。上甲板に被害が出る爆弾と違って喫水線に被害が出る武器は効果が大きい。ろくに消火もできないので巨船だろうがなんだろうが、1発か2発で廃船同様になってしまう。


「伊織、有難う、これがあればどんな舟が来ても全部燃やせるねー。」


「マーマナ達は敵が接岸する前のここぞという場面で登場してもらうつもりなんだ。それまでは爆撃で数を減らしていく。遠くから投げられると言っても敵の反撃もあるからね。セイレーン達をあまり危険にさらしたくない。」


水際防御でいくつもりだったけど、よく考えてみたら水際防御ってよほどの大昔しか成功してなかったよな。水際防御はやるとして、さらに縦深陣地も用意したほうがいいか…そうなると敵兵が上陸した直後、補給物資がまだ陸揚げされる前の船をセイレーンに虱潰しに焼いてもらって長期戦が不可能にする…そんな感じかな。

相当大きな規模の船団だろうから、水際で殲滅というのは、無理があったな。危なかった。主戦場正面がカザーフの森になるので縦深陣地での防衛戦ならケルート人の応援があるのは大きい。森も無傷という訳には行かないが、海沿いの僅かな部分だからダナイデ様も許してくれるだろう。


「ご主人様?」


「あ、すまん。またトリップしていたようだ。水上だけでできれば敵船を殲滅するつもりだったが、認識がまだ甘かったのに気がついた。」


「こんなに凄い武器があってもダメなんですか?伊織様。」


「ああ。相手の立場になって考えればな。のろのろ船団が行くのだ、当然迎撃されて2/3や半分まで撃ち減らされるのは相手も考えているのに気がついた。そもそも敵側に人命尊重の意思が無いから単純に損害見越した物量をぶつけてくれば良いだけだった。」


「そんな無茶苦茶な事をしてくるのですか?伊織様。」


「それが出来るのが、相手の強みだな。いくら死んでも殉教の一言で終わる。」


信長さんが一向一揆相手に根切りせねばならなかった訳だ。妥協のしようがないんだな。参ったな、今度ばかりは俺も甘い事言ってられないのか。しかし万単位10万単位での殲滅は流石に吐きそうだ。おまけに焼き討ちとくれば、もう、阿鼻叫喚の地獄絵図だろう。それでは遺恨が必ず残ってしまうので不味い。


「…まだ数ヶ月ある。さらに、もうひと工夫してみよう。」

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