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145 アルキメデスの熱光線

ミドリのお陰で一神教の神の異常さがハッキリしてきた。そもそもが全知全能にして唯一絶対の神とやらが居たとして、なんで古代ユダヤ人はバビロン捕囚だの出エジプトだのの試練を受けねばならんのだ。神様とやらがちょちょっと保護してやればよいだけじゃないか。キリストもわざわざ死んだふりして見せる必要もない。他に邪魔する神が居ないはずなんだから、極端な話、全世界の人間を最初から一神教の信者で生まれるようにすりゃいいだけだ。


「また一つ、帝国行きの楽しみが出来たな。」


「ご主人様。帝国は事実上敵地なのですから、無茶はしないでくださいね。」


「なに、ガチガチの信者の信仰に試練を与えてより深い信仰ができるように手助けするだけだ。」


「それは神が事ある毎に課すのでご主人様が試練を追加で課す必要はありません。」


「異教徒を入信させられるチャンスを与えようというのだ、彼らも泣いて喜ぶ事態だろうに。」


「虐められて喜ぶ者など居ません。ご主人様は虐めるのが楽しいだけです。」


「ちぇっ…」


「なにが 『ちぇっ…』 ですか。王国の代表団として行くのですよ。ご主人様がイタズラする度にアーミル将軍は寿命が縮む思いをされています。今度はドーストン侯爵の寿命も縮めるつもりですか。」


「…はあ。じゃあ、先っぽのちょっとだけなら…」


「あ、あの…」


「ん?どうしたベレヌイ。」


「はい。あの伊織様が自重されていても、どうせ向こうから仕掛けてくるのではないでしょうか。ミドリさま。」


「そ。それは…」


「そうだ、そーだよなー、向こうから仕掛けてきたら受けて立つしか仕方がないよなーー」


「はい。ですので伊織様には向こうが仕掛けてくるまではご自重戴くということで、どうでしょう、ミドリさま。」


あれ? これ、俺が上手く丸め込まれたのか?うぬ、侮れぬな、ベレヌイ。


「分かりました。ではご主人様、そういう事でお願いします。」


まあいい。どうせ帝国へ行けばなにも無いはずがない。それを楽しみに行くとしよう。



ベレヌイ、ミテオと増えて今夜は誰の番かと思ったが、当たり前にミテオがくっついて来て、アッサリ眠ってしまった。あれ?今夜は俺は放置されるの??と思っていたら、


ゴン…ゴン…


ん?、どこかで聞き覚えのある…


ゴン…ゴン………ゴ~ン


ああ、これは グリフォンのマンディーだな。皆も起き出して外に出始めている。


「マンディー、久しぶりだね。」


「うむ。伊織殿も変わりないか。今夜はちょっと気になった事が有って伝えに来た。」


「何か見つけましたか?」


「うむ。いつものように黒の海の北側に沿って巡回していたのだが、対岸でやたらキラキラ光るものが見えた。あまり南岸には近づくなとダナイデから連絡があったので南岸へは近づいていないが、その代わりに黒の海の真ん中あたりで出来るだけ高い場所から観察したのだ。」


なるほど。まあ真ん中の高空であれば、迎撃は難しいだろうな。


「遠くて確実ではないが、多数の船を造っているのは、伊織殿の予想通りだ。だがその船の上に多数のキラキラ光る物があるようだ。何かはわからないが。」


それほど離れていても光って見えるもの…それが多数か。まさか ”アルキメデスの熱光線” か。理屈上は可能でも多数の鏡で反射した日光の焦点を目標に収束させるのは、実際には無理っぽいのだが。動く目標に収束させる事は難しくても、対岸の上陸地点を高温にして熱するぐらいはできそうだな。上陸地点に地雷を設置しても焼かれて処理されてしまうのか。森にも火をつけるぐらいはできるかもしれない。射程も長いので面倒だな。


「なるほどな。マンディー有難う。またなにか異変があれば教えてほしい。」


「うむ。伊織どのには解るのか、あれが何か。」


「ああ。たぶん、でかい鏡だな。日光の強い時間帯を見計らって、多数の鏡で日光を反射させて、一箇所に光を集めると、その光が集まったポイントが凄い高温になって燃え上がるのだ。”アルキメデスの熱光線”と云われる、伝説の武器?だ。現実には一箇所に集めるのが難しくて机上の空論とも云われていたのだが、物好きが実際に実験してみたところ、的が燃えやすいものであれば、ちゃんと炎上させることが出来る事が証明された。」


「だが、水の上では熱を集めたところですぐに…」


「紙の船だが水面上の船はちゃんと燃えている。規模を大きくすれば木造船や森の木でも炎上させられるだろう。当然、飛行中でもある程度は収束させられるだろうから、上空でも南岸にはちかよらないほうが良い。」


「そうなのか。了解した。」


狂信者の死兵に、火薬、アルキメデスの熱光線ときたか。アルキメデスの熱光線の訓練をしているなら、日光の弱い冬場はやはり動かないな。船も建造中が確定した。あとは帝国に潜り込んでどれだけ探り出せるかだな。



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