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137 偵察依頼

得はあれど損のない立場のアーミル将軍が何故かビビってしまっている。人が良すぎるのも立場的にどうよ?とは思う。普通なら、


”帝国への渡りは付けるけど死んじゃっても自己責任で宜しくーー”


とか、都合が良いときだけ自己責任大好きな、どこぞの政治家のような回答だろうに。

まあ、ドーストン侯やマッケン将軍が反対するはずもなく、これで帝国への乗り込みはほぼ確約されたも同然だ。

後の仕事はアーミル将軍にまかせて、将軍邸を後にする。ここからは普通に荷車リヤカーで身内だけのお気楽行動だ。


「ご主人様、予定通り帝国に乗り込めそうで良かったですね。」


「うん。まあ、とりあえずは成功だな。それとマッケン将軍とは敵対することが無さそうなのが確認できた。味方として動く事も無いけどな。」


「友好的中立なら十分ではありませんか、ご主人様。」


「全くだ。成り行き次第では敵側の主戦力の目もあったからな。あの爺さんは敵に回すとヤバそうだった。」


旦那イオリさまにはそう見えたのですね。ダナイデにはアーミル将軍とさほどの違いは感じられませんでしたが。」


「叩き上げ特有の雰囲気がね。お行儀よく本や先生から学習して得た知識ではなくて、何度も自分の身を切って体で覚えた者特有の雰囲気が有った。ああいうタイプは不利になっても簡単には土俵を割りません。勝ち切るまでが大変なタイプですよ。多少の奇襲効果などでは動揺しそうもなかった。」


「あのお爺さんのほうが、アーミル将軍より濃い匂いだしてたよーー。」


「そうだろうな。ま、帝国が片付けばアーミル将軍のような人のほうが時代に合う人材になる。一長一短だな。」


「あの、伊織さま。すると今度は帝国で公演して回ることになるのですか?」


「ベレヌイ、どの程度公演できるかまでは解らない。ドーストン侯やマッケン将軍にも話を通すと言っていたので帝国王宮だけってことにはならないだろう。それでは帝国の実態がつかみにくい。数回の一般公演ぐらいは確約を取るだろう。そのなかに上手く軍事拠点のある町を入れてくれると助かるんだが。できれば黒の海沿いの町で。」


「ご主人様、さすがにそこまでは難しいのでは。ドーストン侯やマッケン将軍にしても、次の戦場が海上という予想は頭にないでしょうし。」


「だよなあ。王宮が1つ目。エフタール王国との国境付近の大きめの町で2つ目。あと1つか2つってとこだろうな。こうなると黒の海の制海権を魔物が抑えているのも良し悪しだな。沿岸には大きな町は期待できないので、沿岸の現状を直に見れる可能性は低いな。」


「海軍を急造していても事実上、秘密建造に近い状態になるのですね、ご主人様。」


「そうだなあ、仕方ないのでセイレーンの長老とメガロドンの長老に斥候をお願いするか。夜中にこっそり、遠くからでいいので帝国側沿岸部を観察してもらうように。」


旦那イオリ様。戦わずにただ観察するだけであれば、殆ど危険はないので問題ないですね。セイレーンもメガロドンも自分達の為でも有るので、2つ返事で受けてくれますわ。」


「ご主人様、建造途中の動けない船を海上から攻撃して破壊してしまったほうが、手っ取り早いのではないのでしょうか。」


「ミドリ。そうやりたくなるのが人情なんだが、却下だ。前の世界でも俺が居た国でミッドウエー海戦ってのがあってな。その前段階で敵陣の状態を強行偵察するK作戦ってのを実行した。偵察自体は成功したんだが、そのついでにちょこっと攻撃しちゃったんだよ。それが敵側を警戒させてしまって本作戦直前に行う予定だった第二次K作戦は敵側の警戒が厳重で全く近寄れなく成ってしまったんだ。二兎を追うものは一兎も得ずってことだな。偵察するなら徹底して偵察に限定するべきで、偵察されている事自体知られないようにしていれば、何度でも偵察できる。そのほうが重要ってことだ。」


「なるほど、たしかにそうですね。攻撃するとその後の偵察や攻撃はずっと困難になりそうです。」


「うん。それと海軍を攻撃する場合は港湾にいる船よりも外洋にでている時に沈めるほうが効率がいい。港湾に居るときは空船で資材も兵員も積んでないからダメージは船だけだし、それも修理できる状態だ。だが外洋なら人員も資材も満載状態で沈んだ船は修理できない。一撃で屠るなら外洋航行中のほうがいいんだよ。」


「ご主人様。帝国軍の兵士は泳げるのでしょうか。帝国は6割以上が砂漠地帯です。急造した兵士の殆どは訓練しないと泳げないはずですが。」


ミドリも気がついたか。元寇同様に敗戦で戦死した過半が溺死ってことに…たぶん成るよな、このままだと。


「そこは相手の指揮官次第だな。海軍なら最低でも泳げるようにするのは当たり前だから。まあ、泳げたところで寒い時期に開戦してくれば、大差ない結果になるけどな。」


そうだ、これから冬に向かう時期だった。半年で造船したとしてまだ初春がいいところか。泳げたところで30分も保つかどうかだな。それならいっそ水泳訓練は省略して強攻してくるか…。


旦那イオリさま、とりあえず偵察の件はセイレーンとメガロドンに連絡しておきますね。」


「うん、くれぐれも近寄りすぎないように。港湾近くにはきっと何かの仕掛けが造ってあるはずなので。」


仕掛けか。俺ならどうやって港湾を守るかな。火薬使った爆雷は本作戦まで秘匿したいからもっと原始的な方法だ。たとえば…網か。巨大な定置網を仕掛けておいて陸地に引き上げて生け捕る。十分にありそうだ…


「なるほど、旦那イオリさま、網ですね。その恐れもお伝えしておきます。具体的な危険を示唆しておけば、無茶はしないでしょうから。」


ミドリが??な顔をしている。いきなり網の話だからな。まあ、後で説明してやろう。

こういう時は心を読み取ってしまうダナイデ様は話が早くて助かる。




誤字のご指摘、ありがとうございました。

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