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126 伊織の嫁

「この乗り物はダナイデ様が造られたのですか?」


「そうだよ、ベレヌイ。森の中ならダナイデにはだれもかなわないな。」


本気出せば、森の外でも誰も敵わないかもだが…しかし、どうもダナイデは積極的に動物社会に影響を与えるのを避けている感じがするな。たぶん動物が生まれる前からの世界の状態を知って居るはずだ。よほど致命的な問題が起きない限り、動物社会には手を出さないように自制しているのだろう。或る意味、動物なんて植物に寄生しているようなものだからな。単純化して言えば、植物が光合成して蓄えた太陽のエネルギーを順繰りに食いつぶしていくシステムが動物だし。


「みなさん凄いです。伊織様の凄さは戦でよく解っているつもりでしたが、ミドリさんも伊織さんと難しい作戦のお話されてましたし、テイルさんは他の誰にも出来ない個人の能力があるし、わたしは何が出来るのでしょうか。」


「あまりそう直截に成果を求める必要はないし、求めないほうがいい。『無用の用』とか言ってな。大昔の暇人の荘子が言ってたそうだが、何の役にも立たないように思えることが実は重要なことだった…てな事は結構ある。さしあたってベレヌイには、そうだなあ…俺の癒やしになってくれれば十分だ。もともとミドリもテイルも、ソコから始まっている。もうすぐ会うマーマナは今もずっと全員の癒やし枠だぞ。」


「えーっ。マーマナさんって、セイレーンですよね。ご自分の戦闘力も人間なんかよりずっと高いのに、癒やし枠ですか?」


「俺はマーマナの戦闘力を実戦で使わせたいとは思ってないなあ。ミドリはどうだ?」


「マーマナちゃんが阿修羅のように戦うところは出来れば見たくないです。」


「マーマナちゃんはー、主さまに抱っこされてるときが一番いい匂いだから、それでいいのーー。」


旦那イオリさまは、マーマナさんだけでなくダナイデやグリフォンのマンディーの戦力も直接使う作戦を避けられていますわ。ニケのエフソスの場合は本人が望む戦場を提供しただけですし。今回の戦でも、ご自分が一番弱いのに自ら弓を射てますし(笑)ミドリちゃんが射れば旦那イオリさまの倍ぐらい威力がでそうですのにね(笑)。」


「そうなのですか。外の世界とほとんど関わりのなかったケルテイクに伊織様がいきなりやって来ても衝突しなかったのが不思議でしたが、なんとなく解った気がします。」


「主さまはー、人間の女の人以外なら、初対面でもいい匂いだせるのーー。人間の女の人にはじめて会うときは、変な匂い出しちゃってるのーー。」


「…そうなんですか、テイルさん。そう言えばベレヌイが最初に伝令に行ったときも、なんとなく避けられていたような気が…」


うう。本能で察知して匂いで確信が得られるテイルには、全てお見通しか…


「ご主人様のトラウマを払拭できるのは、今の所ベレヌイさんだけです。おまかせしましたのでお願いします。」


う、うむ。ミドリよ、善きに計らうが良い。奥向は任せる…


「見えてきたー。アレが黒の海の別荘だよー、ベレヌイちゃん。」


「うわー、こっちも大きい家ですねー。海の上に張り出しているんだ。」


「マーマナが上がってこれるように造ってもらったので、海の上に張り出しているんだ。ここには風呂もある。マーマナがエビを獲ってくれているので食べると良い。美味いぞー。」



「マーマナ、ただいまー。」


「伊織、お帰りー、エビは池に入れてあるよー。珊瑚と真珠も集めといた。あと海藻も集めといたよ。」


「おお、さすがマーマナだ。気が利くなー。こっちも一応大成功だったよ。ケルテイクが思っていた以上にずっと強くてな。倍以上の敵だったけど跳ね返してきた。」


「良かった。伊織が自分の弓造ってたから心配してた。」


「それでな、この子、ケルテイクのベレヌイ。新しく仲間になった。」


「わぁ、7番目のお嫁さんだね。やっと人族のお嫁さんが来てくれたね。」


うわ、マーマナまでが気にしていたのか。やっとこれで普通の人扱いになるんだな…っと、それより肝心の事忘れないうちに伝えておかないと。


「でな、マーマナ。行って気がついたんだが、ケルテイクの領域の東南の砂漠に硝石がゴロゴロあるようだ。少し持って帰ってきているが、この硝石があると未来技術の火薬が簡単に造れてしまう。今後帝国軍は火薬を使かった武器を用意してくる可能性が高くなった。もし水に棲む魔物達が帝国軍と交戦する場合は深入りしすぎないように警戒してほしい。火薬を使った武器は強力な魔法攻撃同等の威力があるから。しかも、作り置き出来るので魔法と違って連発でくるからな。」


「火薬?」


「黒い粉だが、着火すると爆発するんだ。いままでは黒の海が障害になって帝国軍は真北に進出できなかったけど、これからは舟で渡ってくる可能性がある。いま、ちょっと考えても爆雷なら簡単に作れる。水中で適当に大爆発させる兵器だけど水に衝撃波が伝わるので水中の生物にはかなりのダメージがあると思う。迂闊に帝国軍の舟には近寄らないほうが良い。」


「そうなんだ…未来の武器…長老様に連絡しておくね。」


「ああ、頼む。よし、今日はマーマナが海藻集めてくれているので、久しぶりにローションマッサージをしようか。ミドリとテイル以外は初めてだな。気持ちいいんだぞー。(主に俺が…)」



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